【白蛇:浮生】
- 鑑賞日 2026/02/01
- 公開年 2026
- 監督 チェン・ジエンシー(陳健喜)、リー・ジアカイ(李佳鍇)
- 脚本 王微(ワン・ウェイ)※製作総指揮兼任
- キャスト 吹き替え版 佐久間大介、三森すずこ、佐倉綾音、杉田智和、悠木碧
- あらすじ 中国の四大民間伝説「白蛇伝」を題材にした3DCGアニメーションシリーズの第2作。 前作までの戦いを経て、人間の青年・阿宣(シュエン)の生まれ変わりである仙(セン)を探し出した白蛇の妖怪・白(ハク)。二人はついに結ばれ、夫婦として穏やかな日々を過ごし始める。しかし、街では宝青坊の主による新たな企みが動き出し、妖怪退治を生業とする法海(ホウカイ)も二人に迫っていた。「端午の節句」の日、仙が白にすすめた雄黄酒が、平穏な日常を一変させる引き金となってしまう。
- ジャンル 中国アニメ ロマンス ファンタジー 伝記
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り 〇(×、△、〇、◎の四段階)
感想
連作とは知らずに、一作目を観ずに二作目を観てしまい、これは痛恨の大大大ミス!すぐに一作目を補完しようと思います。
物語自体は二作目ということもあってか、おとなしい「繋ぎ」のような印象で、綺麗にソツなくまとまっていました。一作目を観て各キャラクターに感情移入ができていたら、きっと受け取り方も全然違ったのでしょう。本当にもったいないことをしました。
世界市場を射程に捉えた「リッチな映像」
フェイスモーションや動きは完全にディズニーのそれで、かなり独自性を排していて驚きました。アメリカ資本のワーナーが初めて中国制作とタッグを組んでいるそうで、とにかく絵柄がリッチです。このコミカルな動きとオリエンタルな世界観の融合は、西洋諸国にも広く受け入れられそうだし、特に重要なのはスタッフロールが中国名ばかりで、資本はワーナーですが制作は完全原産国になっておりました。(大分口は出すのでしょうが)
漫画コンテンツの権利だけ買って、とんちんかんな作品を作り続けられた歴史を見れば、昨今の「イクサガミ」や「将軍」のように、出資だけして制作はその国の人達に任せる、という流れはとても理想的に見えました。実際ヒットしてますしね。
僕が若い頃の中国映画といえば、映像は綺麗だけれど、ワイヤーアクションの多用や武侠もの独特の価値観や必要な前提知識など、日本人から見ると少し感情移入しづらいものが多かったイメージがあります。良い意味で、世界に媚びることはなく中国独自の美意識で作り続けていた印象です。 しかし近年の中国劇場アニメは、自国の文化を尊重しつつ、見事に現代の価値観へとアップデートされています。どの作品も素直に感動できるのは、その方向性の賜物でしょう。
建国が古い、歴史という「金脈」
国としての歴史が新しい米国ディズニーは世界中の童話を集めて制作していますが、中国は自国の歴史や逸話という膨大なコンテンツの宝庫を持っています。昨今は孫悟空を題材にしたゲーム(『黒神話:悟空』)も大ヒットしましたし、出力の仕方を世界水準で覚えたこれからは、今後相当な強みを発揮しそうです。
世界がその国独自の文化や歴史に興味を持ち始めている今、建国から歴史の長い国はまさに「金脈」だらけと言えるでしょう。 そんな中、『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』のように、比較的低予算でありながら世界に輸出できている日本の漫画の底力は、やはり凄まじいものがあります。良くも悪くも作者個人の才能に依存する不安定な面もありますので、外資の出資+日本の歴史というものと、漫画産業との両輪でコンテンツ業界を支えていけたら理想的ですね。『沈黙の艦隊』の実写化などは、出資と制作と仕上がりのクオリティがかなり理想に近い感じがします。
キャラクターの魅力:トリックスター「宝青坊の主」の存在感
正直、主人公のハクやヒーロー枠のセンは聖人君子といいますか、ソツのないキャラクターなので、個人的には少し魅力を感じにくい部分もありました。 しかし、トリックスター役の「宝青坊の主(ほうせいぼうのあるじ)」が出てくるパートは、声優である悠木碧さんの演技も含めて最高に面白い!このキャラの魅力が作品全体を引っ張っている印象です。
作品舞台は古代中国なのだけど、民衆の価値観や全体の善悪観念などは、現代の、特に西洋諸国(キリスト教圏)に合わせて制作されている感じなので、本当に準ディズニーを見ている既視感ですが、彼女のパートだけは、昔観たキョンシー映画のような奇妙奇天烈感があってワクワクします。
ヨーロッパの見世物小屋や移動サーカスのような、異世界に迷い込む奇々怪々な舞台。特にお供の従者二人のデザインは、シルク・ドゥ・ソレイユの演目『アレグリア』に出てくる太っちょと子供の水先案内人キャラのような奇怪な魅力があり、たまりません。後頭部の狐が話す時に首がねじれる演出など、この作品独自のセンスが光っており、大変楽しめました。このキャラを観るために次回も映画館へ行くと思います。
世界市場を視野に入れたアップデートも大事ですが、是非この様な中国独自の魅力を表現したパートも引き続き制作して欲しいです。
「動き」のアメリカ、「一枚絵」の中国
全体、重力を感じさせないぴょんぴょん跳ねるディズニー的な動きで進行しますが、所々でハッとするような「一枚絵」を見せてくれます。
水墨画を切り抜いたような、中国の壮大な風景が育んだ美的センス。真後ろからの遠景ドーン!や、流れる川の真横からの構図など、劇場の大画面に非常に映える作りでした。 米国が動きや感情表現で物語をドリブンするとしたら、中国はその瞬間のワンショットで「バチーン」と魅せてくる。切り取って額に飾りたいシーンがいくつもありました。
文化の違いと「中国アニメ」の打率
エンドロールで「このあと続きがあるよ」と丁寧に記載されているのも、お国柄を感じられて面白かったです(本国ではそう書かないと、みんな席を立ってしまうのかもしれませんね(笑))。
また、日本語吹き替えのリップシンクや言い回しも、強引な倒置法や違和感のある接続詞が少なく、西洋作品に比べて違和感が少なかった気がします。中国語の文法や母音が日本語と親和性が高いのでしょうか。
『白蛇伝』という古典ベースのため、尖った独自性や深いテーマは控えめでしたが、総じて綺麗で道徳観に溢れた、子供にも安心して見せられる良作でした。 「ナタ」や「ロシャオヘイセンキ」の様に最近の中国アニメは異常に打率が高いので、今後も要チェックですね。
何より「宝青坊の主」だけでも、一見の価値ありです!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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