【映画レビュー】「HELP/復讐島」/サム・ライミが贈る、最高に悪趣味で愛おしいサバイバル・コメディ!

映画

【HELP/復讐島】

  • 鑑賞日 2026/01/30
  • 公開年 2026
  • 監督 サム・ライミ
  • 脚本 マーク・スウィフト、ダミアン・シャノン
  • キャスト レイチェル・マクアダムス、ディラン・オブライエン
  • あらすじ コンサル会社で働くリンダは、数字に強く優秀だが、パワハラ気質の新社長ブラッドリーから理不尽な扱いを受けていた。ある日、出張中の飛行機が墜落し、二人は無人島に漂着する。生存者は、大嫌いなクソ上司と自分の二人だけ。しかし、サバイバルスキルを持つリンダに対し、無能なブラッドリー。極限状態の孤島で、上司と部下の力関係が逆転し、リンダの積年の恨みが爆発するサバイバル・スリラー。
  • ジャンル アメリカ映画 ホラー コメディ
  • 鑑賞媒体 映画館
  • お気に入り ◎(×、△、〇、◎の四段階)

感想

サム・ライミ、おお、サム・ライミ、サム・ライミ!なぜあなたはこんなにも私のツボを押し続けてくれるのでしょうか。

もう楽しくて楽しくて、劇場で笑いを堪えるのに必死でした。こんなにゲロが大量に出る下品な映画を嬉々として観るなんて、お里が知れちゃう(汗)でもとにかく最高でした!

「パワハラ上司と無人島で二人きりになる」というワンアイデアをサム・ライミ監督の元に持って行った時点で、もう勝ち確ですよ。

冒頭から炸裂する「ライミ・センス」

冒頭の飛行機墜落シーンで壁が破壊され、気圧差でクソ副社長が外に投げ出されるのですが、「ざまぁ!死んだ!」と思ったら、ネクタイが引っかかって窓の外で「ビタァン!ビタァン!」とぶつかり続けている訳(笑)

「リンダァァ!どうにかしろぉぉ!」と窓ガラスにぶつかりながら叫んでいる副社長を横目に、リンダはそっと窓のシェードを下ろすのでした。終始このようなライミ節のブラックジョークが展開します、最高!

主人公・リンダというキャラクターの悲哀と魅力

リンダは非常に優秀で、前社長からの信頼も厚く昇進を約束されていました。しかし、ボンクラ息子が跡を継いだ瞬間、「ただ魅力的ではない(自分好みではない)」という身勝手な理由だけで、その昇進を取り消されてしまいます。

確かに、リンダはツナサンドのツナを口に付けっぱなしだったり、空気を読まずに距離感がおかしかったりはするので、社長の気持ちも分からないではありませんが、実績を出している人間に対してあの待遇はあまりに酷すぎます。

しかも、これが分かりやすく怒鳴るようなパワハラではないのがリアルで質が悪い。訴えられないように、いかにも理路整然ともっともな言い方でリンダの尊厳を踏みにじるのです。この辺りのシークエンスでしっかりと「ボンクラ息子には同情できない」という布石が打たれているので、このあとの展開を安心して観ていられます。もしこの段階で「この男、そんなに悪くないんじゃね?」と思っている倫理観の方はご注意ください。無人島でとんでもない目に遭いますよ。

「逃げ出した先」で覚醒する最強アマゾネス

リンダは実はサバイバルバラエティー番組の大ファンで、アウトドアのスペシャリストでもありました。生殺与奪を会社に握られていた生活から、生き死にのすべてを自分の裁量で決められる無人島サバイバルに移行した時、彼女は全身から充実感と生きる喜びにみなぎります。

「適材適所、自分の居場所は別の所にあるかもしれないよ」というライミ監督の優しいメッセージ……なーんて生温いことをこの監督が言うわけもなく、漫画『ベルセルク』のガッツの名言よろしく、「逃げ出した先にあるのは、やっぱり戦場だけだ」という展開が待っています。

そこからは二転三転、四転五転と、ジェットコースターのように楽しませてくれます。二人の会話がしっかりと長尺でとられているので、「あれ?この二人くっついちゃう?」「やっぱりダメか!」「でもいい感じ?」と、ミルクボーイの漫才のように先が読めず、終始ワクワクしっぱなしでした。

あれだけオドオドしていたリンダも、無人島では水を得た魚のように、猪を血塗れになって殺したり、ボンクラ息子の「ボンクラ息子」を切り取ろうとしたりと、最強のアマゾネスへと進化していくのです。

自己肯定感と「笑顔」の変化

会社にいた頃の彼女は、人との距離感が分からず、必死に会話に入ろうとして(自宅には「話し方のハウツー本」のようなものがありましたね)、結果として卑屈で歪んだ笑顔になってしまっていました。

それがいざ無人島で自力で人生を切り開いていくと、自信に溢れた魅力的な笑顔に変わっていくのです。人間にとって「自己肯定感を育てる場所」がいかに大事かということですね。

しかしあるタイミングで元の世界と触れる出来事が起きるのですが、その一瞬でリンダの笑顔がまた卑屈に歪んでしまう。この顔の演技の変化は見事でした。また、彼女がなぜそうなってしまったのかというバックボーンもしっかり語られるのが素晴らしく、コメディを忘れて胸に迫るものがありました。ボンクラ息子には息子なりの苦労がある点も良かったです。

こうした人物設定がしっかりなされているので、単なるホラーコメディを超えた一歩深い作りになっています。

リンダの選んだ結末

二人が最終的にどうなっていくのか、リンダの成長には何が必要なのか、彼女の居場所は本当に無人島なのか……。最後まで目が離せない大変な良作でした。僕のあまり好きではない「ジャンプスケア(びっくり演出)」も何箇所かありましたが、今作は驚いた後に笑ってしまうので、不快感は少なかったです。

ライミ監督の過去作「スペル」もホラーコメディで大好きな作品です。今作も含め、こういった作品を今後も沢山作って欲しいです。あ~、楽しかった!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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