【映画レビュー】「ラーゲリより愛を込めて」/過去の歴史ではなく「今」に続く物語。

映画

【ラーゲリより愛を込めて】

  • 鑑賞日 2025/12/02
  • 公開年 2022
  • 監督 瀬々敬久
  • 脚本 林民夫
  • キャスト 二宮和也, 北川景子, 松坂桃李, 中島健人, 桐谷健太, 安田顕
  • あらすじ 第二次世界大戦後、シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に不当に抑留された日本人捕虜・山本幡男の壮絶な半生を描く。希望を捨てずに仲間を励まし続けた山本は、帰国が許されない絶望的な状況下で、家族への愛と強い信念を胸に生き抜く。
  • ジャンル 日本映画 戦争 ドラマ 
  • 鑑賞媒体 アマゾンプライムビデオ
  • お気に入り 〇(×、△、〇、◎の四段階)

感想

先日、舞鶴の「引揚記念館」を訪れたばかりだったのですが、もしあの場所に行っていなければ、そもそもこの映画を観なかったかもしれません。たとえ観たとしても、脚本の構成や演技のスタイルといった「映画の手法」というフィルターを通して、どこか冷めた視点で鑑賞していたのではないかと思います。実際予告段階での演技の大げさな感じ、お涙頂戴に見えるテイストといった要素から、尻込みはしておりました。

しかし、実際の背景を知り、資料を目にした後での鑑賞は、全く異なる体験になりました。つくづく、教養というのは大事なのだな、と痛感いたしました。

事実の重みが変える映画体験

画面の中で二宮和也さんが演じる姿は、単なる役者ではなく、紛れもなく「山本さん」その人で、それは記念館で観た数々の資料や当時の切実な記録が、映画のシーン一つひとつと脳内で激しく結びつき、心が揺さぶられたのです。

一人の日本人として、この作品を適当に鑑賞したり、見逃さなくて本当によかったと心から感じています。

「事実は小説より奇なり」を地で行く超展開

物語のクライマックスは、もしこれが創作であれば「あまりにドラマティックすぎる」と感じてしまうほど見事な流れです。主人公の壮絶な生き様と、彼が守り抜いた信念が、長い時を経て妻や子供たちへと帰着していく構成には、言葉を失うほどの感動がありました。「またまた、出来すぎでしょー」と思ってしまうようなドラマが、戦争という悲劇の上では往々にして起きてしまうのですね。

特に、引き揚げの船を追う犬の「クロ」のエピソード。もし事前に事実だと知らなければ「そんな馬鹿な」と疑ってしまったかもしれませんが、これも本当にあった出来事なのだと思うと、涙が止まりませんでした。動物は駄目…可哀想すぎる…。

娯楽映画としてのバランスとその意義

収容所(ラーゲリ)の過酷さやエグさといった描写は、実際の歴史に比べればかなりマイルドに抑えられている印象です。 意地悪な言い方をすれば「トラウマにならないレベルで爽やかに涙を流して家路に就ける」作りになっていますが、僕はこの塩梅こそが、幅広い層にこの物語を届けることができた大きな要因なのだろうと考えています。

凄惨さを強調しすぎず、多くの人が最後まで見届けられる形にしたことで、語り継がれるべき記憶がより広く伝わったのだと思います。もちろんこの段階で終わらずに、今作を間口に実際の地獄がどうであったのかを勉強していかなければいけません。

「昔の話」ではなく「今」の話として観る価値

子供の頃、こうした戦争映画は「日本で昔起きた悲しいお話」という、どこか遠い国の出来事のような認識でした。しかし今は違い、現実に世界で起きている情勢と地続きの、「いつ僕たちの身に起きてもおかしくない不条理」として見える悲しい世の中になりました。

昨日まで当たり前にあった日常が、急に失われる。その可能性は、今の時代を生きる僕たちにとっても決して他人事ではありません。

ラストの結婚式のシーン。そこには「昔の戦争の話」で終わらせず、今を生きる人々に繋げたいという祈りのような意味が込められているように感じました。だからこそ、山本さんの「よぉく覚えておくんだよ」というセリフが、今の僕の心にとても、とても深く沁み渡りました。

昔ながらの演技指導や、ちょっと大仰な泣き叫びシーンなど、苦手なテイストの映画ではありましたが、観て良かった作品でした。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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