【映画レビュー】「28年後… 白骨の神殿」地獄で少年は、また一つ大人になる。

映画

【28年後… 白骨の神殿】

  • 鑑賞日 2026/01/20
  • 公開年 2026
  • 監督 ニア・ダコスタ
  • 脚本 アレックス・ガーランド
  • キャスト アルフィー・ウィリアムズ、ジャック・オコンネル、レイフ・ファインズ、エリン・ケリーマン
  • あらすじ 人間を凶暴化させるウイルスが蔓延した世界を描く「28年後…」3部作の第2章。前作でカルト集団「ジミーズ」に救われた少年スパイクだったが、彼を待っていたのは救済ではなく、さらなる絶望だった。一方、医師のケルソンは、死者を弔うために人骨を積み上げた「白骨の神殿」を守り続けていた。極限状態の英国を舞台に、生存者たちの狂気と運命が交錯する。
  • ジャンル アメリカ・イギリス映画 ホラー サスペンス スリラー
  • 鑑賞媒体 映画館
  • お気に入り ◎

感想

めちゃくちゃ面白かったです! 前作からわずか7か月という最高の短期インターバルで公開されたシリーズ第2弾。 前作の「ゾンビ」という外的な恐怖を描くパニックホラーから、今作は「人間の残虐性」という内面をえぐり出す、教科書の様な美しい流れ。極めて濃密なスリラーへと変貌を遂げていました。

朽ちゆく人工物と、飲み込む自然の対比美

まず、監督が変わったにもかかわらず、前作から一貫した「バチバチの構図の美しさ」!白骨神殿の対称構造や、ツタの絡まる鉄塔の遠近感など、画角フェチにはたまりません。それと緑に飲み込まれていく人工物の退廃美!その対比がいちいち絵になっていて、スクリーンに釘付けです。これぞアポカリプスものの醍醐味ですよね。

前作の広大なフィールドから、今作はあえて白骨神殿という箱庭的な閉鎖空間へと舞台を移していますが、これが大正解。ゾンビパニックもの一辺倒は飽きが早い。 世界観を広げすぎず、ミニマムな場所での人間模様に焦点を絞ったことで、キャラクターの解像度が格段に上がっていました。

メンターからの卒業、そして勇者パーティの誕生

物語の軸となるのは、スパイク少年のさらなる成長です。 前作で「父の庇護」と「母の愛」から卒業した彼が、今作で向き合うのは「メンター(導き手)」からの自立。 真に自分の足で立たなければならないという展開は、まさに普遍の物語。

そんな彼の元に集まるのは、RPGゲームさながらのアタッカーにタンク、次回ではヒーラーと遠距離DPSの様なキャラも参入しそうで、ワクワクが止まりません。彼らに感情移入すればするほど、「誰が欠けてしまうのか」「誰がゾンビ化するのか」という恐怖が、ただのホラー以上の重みを持って迫ってきます。

そのアタッカーである、ケリーの存在がまぁ~カッコよい!今はアネゴー(泣)と言う感じで頼り切っているスパイク少年ですが、彼がいずれたくましくなり、今度は彼女を守っていくようになるのかな、なんて王道少年漫画的なアツさもたまらないですね。次回のテーマは少年から青年への通過儀礼でしょうか。

狂気の「The Number of the Beast」と、救いの「Ordinary World」

音楽の使い方もとてつもなく素晴らしい!アイアン・メイデンの「The Number of the Beast」が流れるシークエンスで、狂気に踊る彼の悲哀が混ざり合う様は、笑いと切なさが同居する複雑な感情を呼び起こしました。劇場で笑いが漏れないように必死になるのと同時に、こみ上げる刹那の感情という、稀な体験ができたのです。「お前たちが信じている神なんて所詮こんなまがい物だ」という宗教戦争への皮肉とも取れる、非常にシニカルでウィットに富んだ名シーンでした。ここだけ何度も見たい「シーックス!シーックス!シーックス‼」、最高‼

その対極として静かに流れるのは、HYDEさんもよくカバーしているDuran Duranの「Ordinary World」。絶望的な世界の中で、かつての「普通の日常」を思わせるその歌声が、物凄く胸に響きます。ここは野暮を承知で僕みたいなおバカさんのために、歌部分も字幕が欲しい所です。

「ネイティブ・ゾンビ世代」という新機軸

単発ゾンビ物では描けない今作の明らかな差別化として、パンデミックから28年が経過し、「前の世界を知る者」と「知らない者(ネイティブ世代)」が混在している点です。ジミーズの存在は、現代における戦前・戦後世代や、コロナ前後世代、氷河期世代などの断絶に対する強烈な風刺に見えました。それをもって「歴史を忘れるな、同じことを繰り返す」という言葉をネイティブ世代に伝える人物の言葉もとても印象深い。この辺の着想から次回どの様な展開にするのかとても興味深いです。

また、ゾンビ化を身体的欠損だけでなく精神病の側面から捉え直す視点も斬新で、僕は初めて観たかも。その観点が、ただのパニックものからもう一歩深い物語へ踏み込ませてくれます。「悪魔なんていない、人間がいるだけ」という言葉の深みが、その視点のおかげで滅茶苦茶沁みてきたのです。

総評:三部作の完結に向けた完璧な「繋ぎ」

次回に向けて楽しみな種をまきすぎー!(笑)正直パンデミックから28年も経ったアポカリプスものですから、終始人間が逃げ回る世界で、根本解決するお話ではないだろうと高を括っておりましたが、今作で「あ、ちゃんと物語を畳む気概があるな?」と、俄然最終作が楽しみになって参りました。

スパイク少年の大いなる「行きて帰りし物語」がどういう帰着を迎えるのか、座して次回を待たせて頂きます!

※ゴア表現はかなり厳しめなので、苦手な方はご注意を!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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