【宙わたる教室】
- 鑑賞日 2025/01/10
- 公開年 2024
- 監督 未公表
- 脚本 澤井香織
- キャスト 窪田正孝、小林虎之介、伊東蒼
- あらすじ 実話に着想を得て生まれた小説が原作。様々な事情を抱えながら夜間定時制高校に通う生徒たちが、理科教師(窪田正孝)の呼びかけで科学部を立ち上げる。彼らが「火星のクレーター」を教室で再現しようと奮闘する中で、それぞれの人生や困難と向き合っていくヒューマンドラマ。
- ジャンル 日本ドラマ ドラマ ヒューマン
- 鑑賞媒体 アマゾンプライムビデオ
- お気に入り ◎
感想
定時制高校科学部を舞台に、繰り広げられる群像劇。
とても真摯で良心的に作られたドラマでした。
お昼の学校モノは熱血教師がガツガツ問題を解決していくイメージですが、今作は夜の学校にふさわしく、シンとした雰囲気で粛々と物語が進んでいきます。
お昼の教室と違って、夜の教室は10代だけではありません。
年齢も職業も国籍もバラバラ。なので教師の藤竹先生は、こうしろああしろと指示せず、方向を決めたりもせず、静かに皆に寄り添い、見守ります。
それは生徒であると同時に、未成年者とは違う、すでに社会経験を経た一人の人間として敬意を抱いているからではないでしょうか。
あくまで学習の場を作り、小さなきっかけを与える。
引っ張るのではなく、自分の力で発露するのをソッと後押しする。
恐らくは定時制高校に求められるのは、そういう学習なのでしょう。
同時にこの作品のすごい所は、科学部の全ての実験がしっかりロジックを兼ね備え、答えを出している所。「教室で火星のクレーターを再現する」という荒唐無稽な実験を、それを絵空事ではなくしっかり立証し、絵で見せ、それがクライマックスの大団円に繋がる。そのカタルシスたるや素晴らしいものでした。
よくあるじゃないですか、トレンディドラマなんかの登場人物で、よくわからない商社で何かそれっぽい仕事をしてて、なんか結果出してて年収高くてタワマン住んでて、みたいな。
僕はああいう描写にも背骨が欲しくて、パソコン忙しそうにタイピングしてるけどその会議何について話してんの?とか、良く海外出張行くけど業種は何?とか気になっちゃうんですよね。
マスオさんや波平さんの仕事内容めっちゃ知りたいですもん(笑)
今作はその辺の深堀りもしっかりしてて、登場人物の背景もみな丁寧に描かれているので、とても感情移入できます。作品が終わった後も彼らの人生のつづきが見てみたい、と思えたら制作陣の完全勝利です。
また脚本の揺り動かし方とか繋げ方が本当に見事で、思わず「座布団10枚!」と言いたくなります。
リストカットを止められない自身の傷跡を、火星探査機オポチュニティのキャタピラの轍(わだち)の写真と重ね合わせる女の子。
遠い火星で一人ぼっちで、周りにだれもいなくて圧倒的な孤独で、彼女はそれを自分と同じだと思う訳ですが、藤竹先生は静かに優しく伝えます。
「僕には 少しでも前に進もうって懸命に生きた証しに思えるんですよ。」
後から調べてわかったことですが、オポチュニティは当初三か月しか持たないバッテリーを携えてましたが、途中音信不通などの困難も乗り越え、なんと延べ14年間も活動を続けていたみたいです。最後に電波が途絶えた時には関係者全員が号泣したとのこと。
藤竹先生は彼女の傷跡に、オポチュニティの困難に立ち向かう姿を伝えたかったのでしょう。
それは必死に生きてる証なのだと、困難に立ち向かっている轍なのだと、遠い火星で一人ぼっちに思えるかもしれないけど、君を支えてくれる人は必ずいるんだと。
その場面を観た時の僕の全身のゾクゾクゾクー!とした鳥肌と涙、涙、涙…
そしてこの作品の素晴らしい箇所がもう一点。
それは、「全ての登場人物は助けられない。」です。
藤竹先生はスーパーマンじゃありません。現実世界でも同様のように、出来ることは限られます。
理想論を振りかざして、困ってる人は全員助ける、という偽善に作品性の舵を向けなかったのもリアリティがあってとても良いな、と感じました。
はみ出し者の不良青年が、科学連合大会を終えた後に呟いた、とても印象深いセリフがあります。「目の前にいる大人も学生も、俺達の話を本気で聞いてくれてる。 肩書きも見た目も関係ねぇ、俺達を認めてくれたんだって…」
いかに相手と同じ目線で、対等に認め合うことが大事か。
そんな大切なことを教えてくれたドラマでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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