【ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行】
- 鑑賞日 2025/12/24
- 公開年 2025
- 監督 コゴナダ
- 脚本 セス・リース
- キャスト マーゴット・ロビー コリン・ファレル ケビン・クライン フィービー・ウォーラー=ブリッジ
- あらすじ 友人の結婚式で出会ったデヴィッドとサラは、レンタカーのカーナビに導かれ、人生をやり直せる不思議なドアに辿り着く。高校時代の淡い初恋や、母親との別れなど、それぞれの人生のターニングポイントを再体験することで、自分自身や大切な人たちと向き合っていく姿を描く。
- ジャンル アメリカ映画 ドラマ ファンタジー
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り ◎
感想
予告を観た時は、爽やかな男女が不思議なドアをくぐってそれぞれの過去に戻り、時には学園祭でラ・ラ・ランドよろしく歌ったり踊ったりしてて、キラキラ大人の恋愛映画いいね!フレッシュに感動しちゃおっと♪なんて高を括っていたのですが…
完全に「予告詐欺」でした。(良い意味で)
蓋を開けてみれば単なるラブロマンスではなく、非常にアーティスティックで、他者を理解することがいかに難しいか、いかにステレオタイプで判断しているか、を考えさせられるふかーい映画でした。
とにかくまず驚いたのは音楽!なんと久石譲×洋画という組み合わせ!
これがもう、新鮮でありながら抜群の相性でして、幼少期からのDNAに深く刻み込まれているあの独特の旋律が流れた瞬間、映画の空気感、スクリーンから漂う品格のようなものがガラッと変わり、「あ、これはただの映画じゃないぞ」と、一瞬で引き込まれました。
その音楽に合わせて登場する見事なタイトルバック。はい、「タイトルバックのタイミングが完璧シリーズ」にまた一作追加‼
そこまで難解さはなく、物語も時系列に進むので、ある程度登場人物たちの機微は理解しやすいです。それでも所々に説明しない妙、が点在しているのが憎い作りです。
丁寧に車をバックから止める男性、豪快に前から止める女性。あるいは毎日ジャンクフードを食べる側、久しぶりに食べる側。土砂降りの野外の結婚式なのにも関わらず、心から幸せそうに微笑む花嫁、それを孤独に見つめる主人公とヒロイン。このシーンの歓喜と孤独の対比、それを真横から映す構図は本当に美しかったです。全編所々にこういった一枚絵としての強度が散りばめらているので、静かな物語ですがずっと退屈しません。
些細な所作や習慣から、二人の育ってきた環境や家庭の事情をさりげなく語ってくる。こういう「画で見せる」映画、たまらなく好きです。
ド派手なアクションこそ映画館で観る価値がある、という論もその通りだと思いますが、こういった会話劇の映画を家で観ると、ふ、とスマフォを覗いてしまったり、猫とじゃれあったりと、見逃してしまう演出が沢山出てしまいます。一見退屈に見える動きの少ない映画こそ、映画館でしっかり集中して観る価値があるのだと個人的には思います。
物語のテーマも冒頭で述べたようなキラキラした恋愛劇ではなく、この年齢で観ると色々と刺さる考えさせられるものでした。
人の悩みやトラウマと言うものは、どこまで行っても絶対的なものでは無く相対的なものです。持たざる者でも幸せな人もいれば、全てを持っている人でも不幸な人もいます。好きな人にフラれただけで一生の傷を負う人もいれば、戦時下でも希望をもって生きる人もいる。
傍から見たら「そんな大した悩みじゃないでしょ」「恵まれているのに贅沢言いすぎ」と一蹴してしまいがちなことでも、本人にとっては(特に子供の時は)生き死にに関わる重大な足かせだったりする。今作はそういった言語化しにくい、視覚でとても伝えにくい人間の心の作動を、見事に映像化しておりました。
安易に「わかるわかる」と言えば「簡単に私をわかったなんて言わないで」、「気にしすぎだよ」と言えば「あなたは本当の私をわかっていない」と、いつまで経っても分かり合えない。心がどんどん離れて行ってしまう。そして何より、他者からの承認欲求だけを求めていてはいつまでも人生は好転しない、とこの映画は伝えてくれます。
ヒロインの母親の言葉がとても印象に残っています。「幸せを求め続けてもキリがないわ。だから今の自分に満足するの。満足してそこから日々の幸せを探していくのよ」
彼女自身は傍から見たらとても幸せそうに見えません。でも彼女自身がそう思っているのなら、幸せなのです。価値基準は他人ではなく自分で決めるもの。あぁ、なんて素敵な言葉だろうか、と心から感動しました。「そんな能天気に感動できるのは、日本が平和だからだ、今のあなたが恵まれているからだ」という風にも言われるでしょうけども、まさにそういった他者と自我の境界線の付き合い方を教えてくれる作品です。
主人公二人には過去の傷があり、トラウマがあって、今が上手に生きていけてません。ドアをくぐってそれらとどう向き合っていくのか。その二人を観て「応援したくなるのか」「その程度で悩みすぎ」と切り捨てるのか、前者にはこの映画が傑作になるでしょうし、後者には終始退屈な映画でしょう。僕は前者でした。
ここまで書くと真面目くさった重い映画に思われるかもしれませんが、二人の会話劇はユーモアに溢れていて最高です。掛け合いのテンポが良く、ずっとニヨニヨしっぱなしでした(笑)
美しい映像と音楽に浸りたい方、他者との付き合い方にちょっと疲れている方、この時空旅行は大変オススメです!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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