ぱたや式 L’Arc-en-Ciel四片の詩画集:「星空」

L'Arc〜en〜Ciel

目覚めない君が、瓦礫で見上げた降りそそぐ星空

窓辺に貼ってある 君の街
そこはどれくらい 遠くに在るの?

ねぇ 穏やかな笑顔の君が居る
写真の中 駆け出して行きたいな

ねぇ 降りそそぐ 夜空が綺麗だよ
いつの日か 君にも見せたいから

目覚めたら 変わっていると良いな
争いの 終わった世界へと


イラストの解説/曲の感想

厳かなアルペジオから始めるこの曲は、とても思い入れのある曲です。

そのテーマの重さから安易にイラスト化してはいけないな、と思ってはおりましたが、でも、だからこそ自分の中の映像を出力しておきたい衝動をどうしても抑えられず、四枚のイラストを描きました。

静かなギターのイントロはタイトルにある「星空」に相応しく、プラネタリウムに居るような、宇宙の下にいる事がとても似合う旋律です。ただ、始まる歌詞は「揺らめく陽炎は 夢の跡」。陽炎とあるので、昼間の描写なのでしょうか。ですが「闇を恐れて 眠り行く街」と続き、更には「星を見る僕は此処で生まれた」とあります。

夜には間違いないようで、陽炎を生むような灼熱の熱源があるという事なのでしょうか。そんな場所で「僕は生まれた」とあります。答えは、続くショッキングな歌詞にありました。

「Nobody knows(誰も知らない)」「Nobody cares(誰も気にしない)」「I have lost everything to bombs(爆発で僕は全てを失った)」

そこで気付きます。そうか、陽炎・瓦礫・眠り行く街、これらは戦火を意味するんだ、と。
そんな悲しいプロローグ。そこから、今回イラストを描いた二番目の歌詞に移ります。

「窓辺に貼ってある君の街 そこはどれくらい 遠くに在るの?」

少し穏やかな様相です。先ほどの瓦礫の戦禍からは別の場所のお話でしょうか。この君は、さきほどの君と同じなのでしょうか。君の街は過去なのか現在なのか、詳細はわかりませんが遠くにあるみたいです。ただ、その意味する遠くは、物理的な距離の事なのか、こことは違う平和な場所で、決してたどり着けないという意味の、遠く、なのか。「在る」という漢字を使っている事が、ここではないどこか、存在しない場所を指している様に思えます。続く歌詞はその様相を打ち砕く、またも残酷な内容です。

「They just took everything I had(それらは僕の全てを奪っていった。)」

僕は全てを失い、全てを奪われた。そして、

「ねぇ 穏やかな笑顔の君が居る 写真の中駆け出して行きたいな」

窓辺に貼ってあったのは写真だったようで、そこに映っている君はとても穏やかな笑顔。イラストではワンちゃんが描かれています。牧歌的な田舎町で、少年は親の農作業のお手伝いをしていたのでしょうか。大好きなワンちゃんとハニカミながら撮られたその写真は、思わず駆け出して行きたい位幸せな光景です。瓦礫で生まれた僕は、穏やかな写真の中の君に憧憬を重ねたのではないでしょうか。

そこから曲はCメロを経て大サビに突入します。エコーの効いたとても透明感のある声でteっちゃんが「Don’t say good bye(さよならは言わないで)」と繰り返します。君の言葉なのか、僕の言葉なのか、わかりませんが悲痛でありながら天使の様な美しい響きです。

その後のギター、ベース、ドラムとhydeさんの歌声が一体になった大サビは本当に見事です!ぶわあぁぁっと目の前で夜空が広がる感じ。空一杯に星が瞬くイメージ。曲の広がりと音の重層感と声の高まりが一つになって、まさに「ねぇ 降りそそぐ夜空が綺麗だよ」の歌詞がそのまま具現化されております。

「いつの日にか 君にも見せたいから」

この世のものとも思えないそんな美しい夜空を見せたいのだけど、イラストの彼は目を瞑っています。横には先ほどの写真。映っている少年と、目を瞑っている彼は、同じ子供として僕は描きました。解釈として、瓦礫で生まれた僕、と、写真の中の穏やかな君、は同一人物とし、戦禍の僕は、かつての平和だった写真の中に駆け出して行きたかったのだ、少年兵になる前の、あの頃の自分に戻れたら、と。そして訪れる最後の歌詞は、

「目覚めたら変わっていると良いな 争いの終わった世界へと」

なんという凄まじい描写力、想像力、比喩力!歌という限られた文字数の中での最大限の表現!もう目覚めない君への、切なる願い。変わるさ、変えるから、ではなく、変わっていると良いな。それは争いが終わる事なんて不可能に近いのを解っているからこその諦めに近い祈り。だとしても、この子が再び新たな生で目覚めた時は、そんな世界で在って欲しいというhydeさんの想い。極限まで盛り上がった曲調と共に歌われるこのワンフレーズには、涙が止まりまてん。

曲はそのままhydeさんの「世界へ…‼」と絞り出されるシャウトと共にフェードアウトしていきます。静かな部屋でイヤホンで全集中で聞きますと、たった5分37秒の曲なのに、3時間強の映画を観たような虚脱感です。

反戦歌ではあるものの、直接的な表現や思想を押し付ける訳ではなく、卓越した比喩表現で心に訴えかけてくる。解釈を聴き手に委ね、それぞれが自分の頭で考えるような構造になっております。冒頭の「星を見る僕は此処で生まれた」なども、文字通り戦禍で生き延びた赤子が瓦礫で生まれたとも取れますし、すでに命を失い目を覚まさないけど、あくまで魂として「星を見る僕は此処で生まれた」とする見方もできる。

少しでもそういった落語的な楽しみもできればと、4枚ではありますがイラストでも少々物語を盛り込んでみました。最後のイラストと共に歌われる「いつの日か君にも見せたいから」「目覚めたら変わっていると良いな」は誰の願いであり、祈りなのか。

・もう目を覚まさない少年兵視点の願い。

・大きくなったワンちゃん視点からの少年への願い。(戦場まで付いてきたのでしょうか(泣))

・hydeさんや僕ら、神視点というかメタ視点からの願い。

個人的には二番目のワンちゃん視点でもう一度全編聴き直すと切なさに胸が抉られます。この様に聴き手の解釈で沢山の物語を描けるのがhydeさんの歌詞の本当にすごい所です。人によってはこれが親であったり兄弟であったり恋人であったり、敵兵からの目線としても面白いかもしれません。

僕は大体悲劇を見る時に、大人がどうこうなる物語ではそんなに心は動かないのですが、子供と動物を題材にされると驚くほどに狼狽えます。それは自分である程度意思表示し、道を選択できる大人と違って、子供と動物は否が応でも周りに翻弄されてしまうからなのだと思います。なので、このイラストでも子供と動物を描きました。僕の中で戦争の一番の被害者はこの生命だと思うからです。

とても重い歌です。この想いを込めてhydeさんが作られたのは2005年。あれから20年、戦争は減る様子もなく酷くなって行くばかり。なんともいかんともしがたい、聴く度に深く考えさせられます。


長文最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m
また次回の詩画集もお楽しみ下さい!


興味が湧きましたら是非是非聞いてみて下さい!
YoutubeMusic「星空

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