【フロントライン】
- 鑑賞日 2025/12/03
- 公開年 2025
- 監督 関根光才
- 脚本 増本淳
- キャスト 小栗旬, 松坂桃李, 池松壮亮, 森七菜, 桜井ユキ, 美村里江, 吹越満, 光石研, 滝藤賢一, 窪塚洋介
- あらすじ 2020年2月、横浜港に入港した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」で日本初の新型コロナウイルス集団感染が発生した。治療法が不明な未知のウイルスに対し、災害医療専門の医療ボランティア組織「DMAT」が急きょ出動。彼らが、自らの命を危険にさらしながらも、乗客乗員3711名全員を下船させるまで闘い続けた最前線(フロントライン)の闘いを描く。
- ジャンル 日本映画 ドラマ
- 鑑賞媒体 アマゾンプライムビデオ
- お気に入り ◎
感想
当時、そのあとに世界があんな未曽有のパンデミックになるとは夢にも思わず、ただ漫然とテレビのニュースを見ていました。 横浜港に停泊する、巨大な白い船を。
映画『フロントライン』。 日本で最初の集団感染が発生した「ダイヤモンド・プリンセス号」での実話を基にした本作。あの日、情報も装備もマニュアルもない中で、未知のウイルスと最前線(フロントライン)で戦った医療従事者とそのご家族の苦労は、いかばかりだったか。
今でこそマスクやワクチンについて各々色々な思想があって良いとは思いますが、上記の一点において、彼らに尊敬の念を抱かない世の中であってはならない。僕は「喉元過ぎれば熱さを忘れる」大バカ者だからこそ、こういった映画であの時を鮮明に思い出させてくれるのは、とても意義のあることだと思いました。
「安易にガナらない」という誠意
とにかく、全体的に抑えた演出と演技が好感触でした。 興行収入を狙うなら、もっと予告で派手な演出をして、危機感を煽ることもできたはずです。しかし制作陣は、誠意を持ってこの淡々としたテイストを選んだ。
「みんな死んじまうぞー!」 「現場は死に物狂いなんだあぁぁぁ!!」
みたいに、登場人物が感情的にガナる演出は本当に好きじゃありません。
災害医療のプロであるDMATの活動記録(日本災害医学会の報告など)を読んでも、彼らは『CSCATTT』という災害対応メソッドに基づき、指揮系統を立て、淡々とトリアージと搬送を行っていたことがわかります。映画で描かれた『叫ばないプロたち』の姿は、決して美化ではなく、訓練された医療チームのリアルそのものでした。 未知の恐怖を前にしても、冷静に、為すべきを遂行していくプロフェッショナルたち。その姿こそが、本当に格好良い。
勧善懲悪にしなかった英断
物語のカタルシスを上げるための、安易な対立構造を描いていない点も大変良かったです。
もちろん、「どうすれば命を救えるか」という医療従事者 VS「どうすれば視聴率を稼げるか」というマスコミの対立は描かざるを得ません。 しかし、そこには過剰な脚色による「悪役」はいませんでした。ただ、それぞれの「正義」と「無知」があっただけ。
当時僕がテレビを通して観ていたダイヤモンド・プリンセス号の情報と、映画で描かれていた内部の状況には大きな乖離がありました。外からは「培養器(ペトリ皿)」と揶揄、「隔離が失敗している」とバッシングされ、しかし内部では、ゾーニングすらままならない構造の中で、数千人の命を守るために医療者やクルーが必死の攻防を繰り広げていた。
その乖離を、恐らくは、制作陣は最も伝えたかったのでしょう。
「マスコミ=僕達」という共犯関係
そしてそのマスコミは、当時の僕達と同義。
あの時起きたバッシング、医療従事者への差別。 「バイ菌扱い」された看護師さんや、学校への登校を拒否されたお子さんたちがいたという事実。 映画を通してその痛みを突きつけられ、本当に申し訳ないし、反省するばかりです。今後同様のケースが起きた時に、二度と同じ轍は踏まない。そう思わせてくれる意義のある作品でした。その覚悟を持って制作された方々に、深い敬意を感じます。
全ての「現場」の方々へ
医療従事者の方々以外にも、過酷な船内に留まった船のクルー、現場の役人たち、患者を運んだ運転手さん、食事を提供した飲食店の方々、衛生を保った理髪店の皆様……。
あの未曽有のパンデミックに立ち向かってくれた、全てのエッセンシャルワーカーの方々のおかげで、自分は今生きています。 喉元過ぎて熱さを忘れかけた今だからこそ、改めてあの当時を振り返れる今作を観れたのは本当に僥倖でした。
全国民が実際に体験した事だけに、言語化が難しいテーマです。 肌感覚で感じたあの異常な数年間を、テキストだけで表現しようとすると、どうしても全てが軽くなってしまうようで気が引ける。 だからこそ、映像で見せてくれる映画という媒体は、ダイレクトに心に響くのだと痛感しました。
真摯で誠意のある、とても良い映画でした。観れてよかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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