【小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版】
- 鑑賞日 2026/01/10
- 公開年 2026
- 監督 深澤慎也
- キャスト 菊池哲男(山岳写真家)ほか、八ヶ岳の小屋番の皆さん
- あらすじ 「コヤガタケ」と呼ばれるほど多くの山小屋が存在する八ヶ岳。山岳写真家の菊池哲男と共にその稜線を巡り、厳しい自然の中で登山者を支える「小屋番」たちの日常と、彼らがその生き方を選んだ理由に迫るドキュメンタリー。TBSドキュメンタリー映画祭2025で上映された作品に、新たな映像やインタビューを加えて再編集した劇場版。
- ジャンル 日本映画 ドキュメンタリー
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り ◎
感想
綺麗な山の映像でも観て癒やされよう~♪ そんな軽い気持ちで映画館へ向かったのですが、まさかのいの一番の感想は「悔しい…!」でした。
この素晴らしい景色を観る体力もなく、だらしない身体に、サバイバル能力も低く、下界の欲望にまみれていて、小屋番の皆さんの意識の高さの足元にも及ばない自分。 帰りの駅で、階段ではなく迷わずエスカレーターに乗ってしまう、自分に甘い自分。
そんな情けない己が存分に露呈する内容で、見終わった後にまず湧いてきた感情は、癒やしなどではなく「悔しさ、憧れ、嫉妬、情けなさ」でした。 いやはや、山の大切さを描いたドキュメンタリーに、まさかこんな見当違いな感想を持ってしまうとは……(笑)。
昨年の「挫折」と重なる
なぜここまで強く反応してしまったのか。実は去年登った山で、予想以上に身体が衰えており、ショックを受けたばかりなのです。 そこまで難易度の高い山ではなく、頑張れば子供も登頂できるレベルで、それなのに、息が上がって辛くてたまらない。 かつては富士山や屋久島など、しんどくても心が折れるようなことはなく、「大体の山は頑張れば登れるだろう」「あれも行きたい、これも行きたい」と希望を持っていただけに、自分の劣化に愕然としました。もちろん、日々の運動不足という完全なる自業自得なのでございます(泣)。
そんな挫折感ホヤホヤの中で、とてつもなく過酷な環境で働く小屋番の姿を見せつけられたものですから、冒頭の感情が生まれたのでしょう。
じゃあ登れるように鍛えればいいじゃん、という話ですが、そこでストイックになれないから尚更自己嫌悪。 だって、しんどいんですもん……山登り……。
居場所は、他人の物差しで測れない
劇中に登場する小屋番の方の一人で、彼は仕事や人間関係で上手くいかず、昔から好きだった山で仕事をするようになったと言います。猛吹雪の中で、30キロもの荷物を背負って歩く「歩荷(ぼっか)」を日々こなされてました。
傍から見たら、「いやいや、下界の仕事よりそっちの方が百倍しんどくない!?」と思いそうなものですが、ご本人はとても生き生きとされていました。
今の場所が息苦しいと思った時、もっと自由に息が出来る場所を探しても良い。 自分の居場所というものは、周りの意見や常識とは関係のない所にあるのだと、つくづく学ばせて頂きました。
現代社会の「便利」と「本能」のジレンマ
僕は幼少期、アルゼンチンの自然の中で住んだことがあるので、本能的には理解しているつもりです。 スマホを捨て、無駄な消費を辞め、なるべく自分で食べるものは用意して、俗世を切り離した方が、心の平穏は得られるのだと。
心のどこかで、今の社会の異常な消費にはいつか限界が来るとわかっている。 でも、便利を手放せない。とてもじゃないけど街なしでは生きていけない。
「楽したいよ、電気欲しいよ、外食したいよ、ゲームもしたい。寒いのは嫌だ、暑いのも嫌だ、サウナも好き、映画館も行きたい、お酒も飲みたい…あぁ、ままならぬ‼」
そんなジレンマを抱えながら今作を観ると、そこを越えて過酷で不便な山の中に身を投じている人たちに対し、物凄い憧れと劣等感を感じてしまうのです。自分もああなれたらいいのだけど、なれないのだと。
山がくれる充電と警告
今まで山小屋に泊まったのは、富士山と雲取山の二回だけですが、這う這うの体で辿り着いた山小屋で飲む温かい味噌汁の味は、一生忘れません。 そして山小屋でご飯を囲むとき、そこまで辿り着いた者同士の連帯感。「お互いよく頑張ったね」と目線で称え合うあの空気が大好きです。
山に入ると、何か失われたものが充電されていく、削られたものが補われていく。本当にそう感じます。
ただ、劇中で小屋番の方が鳴らしていた警告は、厳に自分に言い聞かせたい。 その方曰く「今はデジタルで地図を見れて、自分の実力を過信して遭難してしまう事が多い」 との事で…
下山時に体力ゲージがギリギリだったことが何回かある自分にとって、それは山としてオーバースペックだったという証拠。鹿害や遭難救助のパートも大変勉強になりましたし、この教訓は必ず忘れないようにしたいです。
山男は絶対に敵に回すな
昔からよく言われることですが、改めてこんな過酷な自然と毎日対峙している人を、絶対に敵に回してはいけません(笑)その圧倒的な忍耐力と突破力には絶対に敵いません。対して小屋番で働く女性方の朗らかなこと、朗らかなこと。山はよく女性に例えられますが、まさにその大きな包容力そのもので、かつ、芯が一本ビシッと通っており、しっかり大地に足を踏みしめている頼もしさがありました。
総評:そこにシビれる! あこがれるゥ!
まるで鑑賞前の自分からは想像もつかない感想となりました。
いつか八ヶ岳の小屋番の方々に会えるよう、そして山小屋に到達できる人達についていけるよう、少しずつ鍛えていければと、そんなマインド変化を与えてくれただけで、めちゃくちゃ観て良かった映画です。あの荘厳な景色は、本当にいつか観てみたい…。
そんな小屋番にシビれる! あこがれるゥ!
とりあえず、まずは飯能の低山からリハビリです(笑)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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