【アニメレビュー】「ロボット・ドリームズ」台詞なしの「トリプルA」。SNS時代の「繋がり」と「別れ」を問う。

アニメ

【ロボット・ドリームズ】

  • 鑑賞日 2025/1/19
  • 公開年 2025
  • 監督 パブロ・ベルヘル
  • 脚本 パブロ・ベルヘル
  • キャスト 声優の出演はありません
  • あらすじ 1980年代のニューヨーク。孤独な犬のドッグは、自作のロボットと友情を育んでいく。しかし、海水浴に出かけた夏のある日、ロボットが錆びて動かなくなってしまい、二人は離れ離れになってしまう。ドッグとロボットが再び出会える日を夢見ながら、それぞれの場所で日々を過ごす。
  • ジャンル フランス・スペインアニメ ヒューマン ドラマ ファンタジー
  • 鑑賞媒体 映画館 
  • お気に入り ◎

感想

出会いと別れ、そしてイニシエーション(通過儀礼)。 それらをなんと「全編台詞なし」で見事に描き切る!それも、ちゃんとアニメーションでしか描けない表現で!心臓を鷲掴みにされる超良質な作品でした。

台詞を捨てた「トリプルA」の偉業

全編セリフ無し。 これはアニメーションにおける理想形態であり、同時に作り手にとっては過酷な茨の道でもあります。しかし今作は、音楽と絵と動きだけで世界中に感情を伝えるという、最高難易度の「トリプルA」を見事に決めています。恐ろしい手腕です。

特に、絵面と音楽の音ハメがまぁー素晴らしい! Earth, Wind & Fireの名曲『September』。 あの「ドゥ・ユー・リメンバッ♪(Do you remember?)」の入りだけで、総毛立つような鳥肌が止まりません!

ただ一つだけ、僕の教養がないせいで、随所にかかる素晴らしい楽曲たちの英歌詞の意味がわからないのが悔しい…(泣)。 野暮なのは承知ですが、歌のところに字幕が欲しかったところ。まぁそうするとセリフ無し、の醍醐味が台無しなのですが…鑑賞後にしっかりと意味合いを調べました。

色彩が殴ってくる

カラフルでシンプルな色彩が、二人の悲哀を際立たせています。 シンプルだからこその対比。真ッ黄色の砂浜が、真っ白の雪で埋もれていく絶望感。

折しも2025年は、最新鋭のCGを駆使した『野生の島のロズ』も公開されました。 「リアル描写のグラデーションバチバチなCG」と、「シンプルでポップな手書き風アニメ」。 その両極端な色彩感覚の傑作を同じ年に見られたなんて、なんと幸せな一年だったことでしょうか。両作とも音楽がとてつもなく良いのも共通項ですね。

どこで映像を止めても絵になる素晴らしい背景

物語の舞台は、人種渦巻くニューヨーク。 すべてが動物に擬人化されているので、性別も年齢も趣向も僻も全くわかりません。主役二人の関係が「友人」としての愛なのか、「恋人」としての愛なのか、解釈はこちら側に委ねられています。

ですが、その説明不足を超緻密な背景美術が補ってくれます。ドッグの整理整頓された部屋、こだわりの強そうなポスターにフィギュア。 「悪い奴じゃなさそうだけど、ちょっととっつきづらそうだな……」感。どれだけ彼は孤独を抱えているのだろう、その想いを「僕は寂しいんだよ!」と言ったセリフではなく、どこを止めても絵になる素晴らしい背景によって成り立たせていました。

セリフを排除するということは、それ以外の工程に心血を注ぐということ。この細かく絵画のような背景には惚れ惚れしました。

「付け替え可能」な僕たち

ロボットは、ドッグのかけがえのない友人かと思いきや、物語が進むにつれて色々なパーツを外され、別の部品に交換されていく。 それは否が応でも「自分は付け替え可能な存在なのだ」と思い知らされるのと同義です。

SNS時代の今、ビデオ通話で地球の裏側とも繋がれ、人間関係は「狭く深く」から「広く浅く」へ加速しました。 幼少期アルゼンチンの親戚と別れる時はそりゃあもう今生の別れの様な気がしましたが、今や「はーい、元気?」とSNSで簡単なものです。

気軽に繋がれるからこそ、気軽に別れることができる。ブロック一つで関係を断てる。 僕たちは知らず知らずのうちに、友人を「付け替え可能なパーツ」のように扱っていないか。そんな皮肉な問いを突きつけられた気がしました。

その「別れ」はハッピーエンドか?

共依存という呪縛から、痛みを経て解き放たれる。 そんな全人類不変のテーマを、こんなに爽やかに、POPに、疾走感をもって伝えてくれるなんて驚きです。

あの結末、二人はちゃんと次のステップへ行けたのか?、それとも、元の場所にまた戻っていないか?、そして仮に戻っていたとして、それが「悪い事」と言えるのか?

そしてアメリカ人にとって9月がどうゆう意味を持つのか。
「あの9月を覚えているかい?」

かなり深く考えさせられるラストです。

人生は出会いと別れの連続。 唯一無二だと思っていた関係が薄れることもあれば、疎遠だった人と濃い絆が生まれることもある。 しかし、たとえ別れが来ても、その人との思い出がなくなることはない。この映画はそんな前向きなテーマを伝えてくれました。

これこそが、未曽有のネット社会・AI社会を生きていく僕らの、人間関係の指針となるのではないでしょうか。 とにかくラストのシークエンスは圧巻。涙が止まりませんでした。超オススメの一作です!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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