【映画レビュー】「火喰鳥を、喰う」70%の理解度で楽しむ、超常現象×SFの怪奇譚。

映画

【火喰鳥を、喰う】

  • 鑑賞日 2025/10/05
  • 公開年 2025
  • 監督 本木克英
  • 脚本 林民夫
  • キャスト 水上恒司, 山下美月, 宮舘涼太, 森田望智,
  • あらすじ 信州の村に暮らす夫婦のもとに、太平洋戦争末期に戦死したとされる祖父の兄の遺品である日記が届く。その日記には「火喰鳥、喰いたい」という生への執着が記されていた。日記を読んだ日から、夫婦の周囲では不可解な出来事が頻発するようになり、彼らは怪異に立ち向かう。
  • ジャンル 日本映画 ミステリー サスペンス ドラマ ホラー
  • 鑑賞媒体 映画館
  • お気に入り ◎

感想

ただジャンプスケアで怖がらせるだけのホラーは好きじゃありません。 僕が好むのは、そこに一定の法則性や論理を持つ怪奇譚です。

映画「火喰鳥を、喰う」はまさに、超常現象×サイエンスフィクションのハイブリッド。 物語の骨子に一定の説得力があり、絶妙に面白かったです!! あと、映画『九龍ジェネリックロマンス』でファンになりましたが、水上さんがやっぱりイイ♪

100%科学でも、100%オカルトでもない

この映画は100%サイエンスでもないし、かといって100%超常現象でもありません。 その良い具合のミックス加減で説得力を持たせてくるのが憎い。

その昔、『リング』の小説版を読んだ時に、ホラーだと思っていた物語がSF舞台にガラッと切り替わった時の衝撃! あれに少し似ておりますね。

特に、戦時中を題材にしたホラー特有の緊張感。 歴史的事実から来る「不謹慎にしてはいけない」という厳格な重さが自動的に付随するので、観る側の背筋も伸びます。そこに土着信仰要素が入ってくるのだから……たまりませんね。

70%の理解度で

今作、恐らくすべてを理解しようとする方にはとてつもなく不評な映画かもしれません。

物語は非常に複雑で、時系列が錯綜し、現実と異次元が交差し、内面と外面が入り混じり、科学と非科学が混濁する。 正直、整合性を求めだすと脳がパニックになり、映画どころではなくなります。

なので、この系統の映画に対する僕のスタンスは「70%くらい理解出来たら良し」。 あとは世界観の雰囲気や神秘性、「ヒクイドリヲクウ・ビミナリ」といった語感の良さを楽しむモードに切り替えます。

夫婦で『シン・エヴァンゲリオン』を観た時に、妻から「ねぇ、エヴァイマジナリーって何? モヤモヤするんだけど」と聞かれて、 「さぁ……なんとなくはわかるけどハッキリ言語化は無理かも。でもめっちゃ感動したー!! サイコー!!」 みたいな(笑)。

今作も、大まかな道筋や動機は理解できましたが、人様に説明できるほどの解像度ではありません。でも「よくわからんかったなー」で切り捨てるには、あまりにも惜しい作品です。というのも……

科学が「不思議」に追いつきそうな時代

作中では、人の執着が概念となり、形をもって世界に影響を与え出します。

これだけ書くと荒唐無稽なホラーですが、現代は宇宙の解明も進み、見えない線が可視化されたり、AIによって「命」という入れ物そのものが変わってきたり、五次元・六次元という概念が認識され始めた時代です。 執着という無意識も、実際にSNSなどで力をもって物理の攻撃力と化しています。

もはや、今まで「不思議」とされたものが、理屈を持って知識として僕らに降りてきている。 そんな現代だからこそ、このサイエンスとホラーのバランスが「ありそう」と思える。

ここを「ありそう」と楽しめるか、「ある訳ないやろ!」と蹴るかで、この映画の評価は大きく分かれそうです。 ある程度の説得力を持つものは楽しんで、理解の及ばないものは拒絶せずに一旦そのままにしておく。という塩梅が、これからの「とんでもない変化が訪れる世界」を楽しむバランスの様な気がします。

そんな今までと、これからの怪奇を考えさせてくれる良作でした。

ちょびっと惜しかった点

個人的に惜しいなと思ったのは、レーティング(年齢制限)です。 もっとグロテスクな描写や、執着の度合いのエグさ(深さ)を上げたら、とんでもない名作になっていたかもしれません。 ただ、俳優さんのファン層(未成年など)をターゲットにする上では、このマイルドさが必須だったのかなぁとも思います。

「ヒクイドリを食う」ことが実際に何を意味するのか、その答え合わせにゾクゾクしつつ、小説も是非是非読んでみようと思います!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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