【オール・ユー・ニード・イズ・キル】
- 鑑賞日 2026/01/15
- 公開年 2026
- 監督 秋本賢一郎
- 脚本 木戸雄一郎
- キャスト 見上愛(リタ)、花江夏樹(ケイジ)、花澤香菜、ヒコロヒー、もう中学生
- あらすじ ハリウッド実写映画化もされた桜坂洋のSFライトノベル「All You Need Is Kill」をアニメーション映画化。原作は、謎の敵の襲来を受ける地球を舞台に、繰り返す「死」の中で成長していくケイジを主人公に描く物語だったが、本作ではケイジがタイムループの中で出会う女性戦士リタを主人公にした、新たな視点で描く。
- ジャンル 日本アニメ アクション SF
- 鑑賞媒体 映画館
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感想
世界的に有名なIPであり、実写ハリウッド版も制作された『All You Need Is Kill』。 今回、あのスタジオ4°Cがアニメ化するということで大きな期待を持って鑑賞しましたが、正直なところ、僕個人の感性には少し噛み合わない部分が残る結果となりました。
一つの意見として、どこが惜しいと感じたのかを整理してみたいと思います。
背景美術の力に対して、画角への不満
まず特筆すべきは、やはりスタジオ4°Cの作画クオリティです。 背景美術の密度や、キャラクターの滑らかな動き、色彩感覚が素晴らしい。これだけの技術を詰め込めるスタジオはそうそうないと思います。
キャラクターデザインについても、僕個人の感性には合わないながらも、近年の世界市場を意識した挑戦的な方向性は理解できます。絵柄の流行り廃りも時代と共に目まぐるしく変わるわけですし。ただ、そのエッジの効いた絵柄に対して、画面の構図や画角が少しオーソドックスに感じられました。この独自のビジュアルだからこそ、もっとバチバチにセンスの溢れる、ハッとするような画角でアクションを堪能したかった……というのが本音です。とにかく動きに鳥肌が立たなかったのです。
冒頭の夜空をズワァァァと赤い電熱線のようなものが走って、180度パンするところはすんごくカッコよかったです!
「語り」と「見せ方」のバランス
一番気になったのは、ドラマ部分の演出です。 本作は「ループ」と「トラウマ」という、辛くて苦しいものから、抜け出せないし繰り返す、という非常に相性の良いテーマを扱っています。だからこそ、その心の機微をアニメーションならではの「間」や「演出」で感じたかったのですが、今作は多くの感情や背景を「台詞による説明」に頼っている印象を受けました。
「腕が勝手に動く!」とか「笑ってればいじめられなくて済むんだ」など、わざわざ口頭で伝えなくても絵を見れば十分伝わるのですが、その観客に最も訴えかけなければいけないキャラクターの葛藤や変化が、トラウマの発露や昇華が、長演説によってすべて言語化されてしまう。 これは、観客に分かりやすく伝えようとする丁寧さの表れかもしれませんが、演出で深みを味わいたい僕みたいなタイプには、「あぁ、観客が信用されてないんだな」と残念に思ってしまいました。
今作は絵柄も含め、アート寄りの作り方をしている様なテイストなのに、そこは大衆向けなんだ、というアンバランスさ。
とはいえ、事細かく説明しないと伝わらないという昨今の時流を考えると、この方向性も仕方ないのだろうなあ、とも思います。
エンタメとしての取捨選択
ハリウッド版が物語を大胆に取捨選択し、徹底して「明快なエンタメ」に振り切っていたのと比較すると、今作はウェットな人間ドラマとアクションのどちらも欲張った結果、少し焦点がぼやけてしまった印象があります。
脚本家の方が設定した世界観、小道具、各々のトラウマ、全体の展開やクライマックスのバトルなど、プロットのひとつひとつは非常に魅力的なのですが、それらが一本の太い線として繋がっていく疾走感やカタルシスが、毎度あと一歩のところで途切れてしまう。アクションもドラマも「ここから気持ち良くなりそう!」という場面でブツ!ブツン!と都度切られてしまう消化不良感がありました。
総評:リメイクの難しさ
「死を繰り返して強くなる」というワンアイディアは今やゲーム界隈でも当たり前の設定ですし、この原作初見の方以外はどうしても冒頭退屈になってしまう。それをあえて再び映像化するからには、「絶対にこの原作をハリウッド版より面白くする自信がある!」という圧倒的な何かを期待してしまったのです。
純粋なアニメーション技術の結晶として見れば、一見の価値がある作品であることは間違いありません。ただ、個人的には「もっとこのスタジオなら、僕らの想像を超える世界を見せてくれたはずだ」という、愛ある注文を付けたくなってしまう一作でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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