【映画レビュー】「ババンバンバンバンパイア」/身内笑いに頼らない「品格あるおバカ」の極致!

映画

【ババンバンバンバンパイア】

  • 鑑賞日 2025/09/18
  • 公開年 2025
  • 監督 浜崎慎治
  • 脚本 松田裕子
  • キャスト 吉沢亮, 板垣李光人, 原菜乃華, 関口メンディー, 満島真之介
  • あらすじ 銭湯で住み込みで働く450歳のバンパイア、森蘭丸。彼は、至高の味わいである「18歳童貞の血」を求め、銭湯の一人息子である15歳の李仁の成長と純潔を日々そばで見守っていた。しかし、李仁が初恋をしてしまい、童貞喪失の危機に瀕する。蘭丸は、決死の「童貞喪失阻止作戦」を決行するが、様々な勘違いが巻き起こり、事態は思わぬ方向へ進んでいく。
  • ジャンル 日本映画 コメディ
  • 鑑賞媒体 アマゾンプライムビデオ
  • お気に入り 〇(×、△、〇、◎の四段階)

感想

特筆すべき深さや記憶に残る映画ではないですが、カメラアングルやカット割りは決して侮れません。この手の日本製コメディとしては珍しく、不快な部分が一切なく、最後まで心地よく鑑賞できました。

それにしても、主演の吉沢亮さん。つい先日観た『国宝』と同一人物とは思えない変貌ぶり(笑)。この質感の良さ、手触りの良さとでも言うのかな。この作品の笑いの感覚は、とても好きです。

下卑さを感じさせない、監督の見事な手腕

「童貞の生き血を吸う」という、文字面にすれば明らかに下品な設定。しかし今作は、そんな下卑さを微塵も感じさせず、むしろ爽やかに魅せており、監督の卓越した手腕を感じました。

自分なりに何故かと分析した所、某有名監督のコメディ作品と比較した際、今作には「身内笑いが一切ない」というのが大きな違いかもしれません。
バラエティ番組などでもよく見かける、仲の良い芸人グループや特定の事務所内での「仲間内だけで盛り上がる笑い」は、最初は微笑ましくても、次第に鬱陶しさを感じてしまうもの。それは新規の観客を排除し、「この関係性、当然わかってるよね」という傲慢さにも見えてしまうからです。

今作にはその嫌味がなく、あくまで脚本の上で計算し尽くされた笑いであり、俳優のアドリブに頼り切るのではなく、すべてが監督のコントロール下にあります。その統制された美しさが、質の高い笑いを生んでいるのだと感じました。

「吉沢ブランド」の絶妙なバランス感覚

『国宝』という大作で極限まで高まった「吉沢亮」というブランドを、こうした振り切ったコメディで中和し、バランスをとっているのは素晴らしい戦略です。

あまりにも高潔なイメージが定着しすぎると、その後の配役や役者人生に制限が生まれてしまいますからね。個人的には、アイリスオーヤマやマイナビのCMで見せる、あの親しみやすい吉沢さんが大好きです。『国宝』で初見ファンになった方々が、このギャップを観てどう感じたのか、ぜひ感想を伺ってみたいところ(笑)

また、今作の公開順に関しても、さまざまな事情があったかと思いますが、結果的に『国宝』の後に公開されたのは、まさに僥倖!もし先に今作を観てから『国宝』に挑んでいたら、どちらも「血」を題材としているだけに、かなりのノイズになっていたはずです。

「原作を消費しない」という誠実な姿勢

くだらないギャグなのに、なぜか好感を覚える。数多ある失敗した漫画実写化の不快感との違いはなんでしょうか。

この好感の正体は、ギャグ漫画だからといって「原作を安易に消費していない」という姿勢が伝わってくるからではないでしょうか。予算をかけた妥協のない画角、見応えのあるアクションシーン。この漫画原作を真剣に観客へ伝えようという、制作陣の真摯な熱量が伝わってきました。

漫画原作を単なるビジネスチャンスとしか捉えず、低品質な実写化が生まれ続けている現状において、この「誠実さ」は物凄く大事なことです。こうした愛のある実写化作品が、今後も増えていって欲しいですね。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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