【F1】
- 鑑賞日 2025/06/27
- 公開年 2025
- 監督 ジョセフ・コシンスキー
- 脚本 アーレン・クリューガー
- キャスト ブラッド・ピット、ハビエル・バルデム、ケリー・マクドナルド
- あらすじ かつて世界にその名をとどろかせた伝説的なカリスマF1(R)ドライバーのソニーは、最下位に沈むF1(R)チーム「エイペックス」の代表であり、かつてのチームメイトでもあるルーベンの誘いを受け、現役復帰を果たす。常識破りなソニーの振る舞いに、チームメイトである新人ドライバーのジョシュアやチームメンバーは困惑し、たびたび衝突を繰り返すが、次第にソニーの圧倒的な才能と実力に導かれていく。ソニーはチームとともに過酷な試練を乗り越え、並み居る強敵を相手に命懸けで頂点を目指していく。
- ジャンル アメリカ映画 アクション ドラマ
- 鑑賞媒体 映画館 IMAX
- お気に入り △(×、△、〇、◎の四段階)
感想
IMAXの巨大なスクリーンから響き渡る猛烈なエンジン音。そして、車載カメラがグリングリンと動く臨場感溢れる映像。映画『F1』を観てきましたが、その技術的なクオリティには圧倒されました。
ブラッカイマー・フィルムの壁
ただ、正直なところを言えば、僕はやはりジェリー・ブラッカイマー・フィルムとの相性があまり良くないのだと思い知らされた一作でもありました。彼が脚本にどこまで関わっているかはわかりませんが…
F1という、コンマ一秒に命を懸ける極限の世界。そこにある重厚なドラマを期待していたのですが、どうしても付きまとうメロドラマ的な軽薄さが、僕には少し引っかかってしまったのです。
専門的な「凄み」と、中途半端なドラマの距離感
観る前は、F1を全く知らない層がその凄さを体感できるような映画かと思っていたのですが、どちらかといえば「F1が好きな人が熱狂する」タイプの作品だったように感じます。僕はどちらかといえば前者だったので、少し期待していた方向性とは違ったのかもしれません。
そんな中でも、プロフェッショナルな「豆知識」の部分はすごく面白かったです。実際にサーキットをジョギングして路面の状況を細かく確かめたり、レース後には氷風呂に入らなければならないほど身体が熱を持ってしまったり。
漫画『capeta』のように、超高速の中でハンドルにかかる凄まじい重圧や、コンマ数秒で行われる複雑なコンピューター操作など、レーサーがいかに超人的であるかをもっと深く掘り下げて欲しかったのですが、今作のドラマ部分はより幅広い層に向けた「王道」な作りになっていました。
シリアスな切実感という点では、個人的には『グランツーリスモ』の方が好みだったかな、というのが率直な感想です。
孤高のレーサー像と、不必要な「ラブシーン」への疑問
特に気になってしまったのが、人間描写のバランスです。
例えば、男性社会の中で必死に頑張っている女性エンジニアが、あっさりと主人公とベッドインしてしまう展開。これがこの作品の方向性を決定づけている気がします。プロに徹するストイックさよりも、エンターテインメントとしての分かりやすさを優先した結果なのでしょうが、僕としては「そこはわざわざベッドインさせなくても……」と思ってしまいました。
僕の中でのF1レーサーは、棋士と同じように、命を削りながらギリギリの場所で生きている孤高の存在なんです。もし女性を抱く描写を入れるなら、いっそ『F』の赤木軍馬のような狂人ぶりを見せるか、あるいはその関係が彼の依存症を救うといった、物語上の有機的な意味が欲しかった。
何の意味もないラブシーンは、女性エンジニアとしてのプライドや、レーサーとしての孤高感をボヤけさせてしまうようで、少しゲンナリしてしまったのが本音です。
チーム戦としての発見と、老獪なテクニックの魅力
一方で、初心者の僕に、新たな発見もありました。F1ってバチバチの個人戦かと思っていたら、実は「チームで一人を勝たせる」というチーム戦の側面が強いのですね。これはとても勉強になりました。
また、主人公の走り方が「若さゆえの勢い」ではなく、老獪なテクニックとルール違反すれすれの戦略で順位を上げていくスタイルなのは面白いアンバランス感でした。ここはあえて気持ち良いだけのレースにせず、リアル寄りの泥臭い戦略を見せてくれたので、個人的には好きなポイントです。
スピードジャンキーの行く末に見る「死の匂い」
物語の終盤、あれほどの栄光を掴んだ主人公が、すぐにまた次の草レースに向かう姿が描かれます。
彼はもはや、スピードに取り憑かれた「ジャンキー」であり、その行く末には死の匂いしかしない。ライトに描かれているので見過ごされがちですが、実はここが一番深いテーマになり得た部分ではないかと思うのです。彼らがどれほどの覚悟で命を懸けているのか、その狂気をもっと深掘りしてくれたら、僕にとっての傑作になったのかもしれません。
技術的な面では唯一無二の迫力があるだけに、ドラマの「軽さ」がどうしても惜しまれる、そんな鑑賞後感でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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