【映画レビュー】「ファミリア」/志の高さに感謝しつつも、重すぎるテーマがエンタメの枠に揺れた一作

映画

【ファミリア】

  • 鑑賞日 2025/06/13
  • 公開年 2023
  • 監督 成島出
  • 脚本 成島出
  • キャスト 役所広司、吉沢亮、松重豊、MIYAVI、サガエ・ルカス
  • あらすじ 陶器職人の誠治は、亡き妻の面影を胸に孤独な日々を送っていた。そんな彼の家に、息子が連れてきたブラジル人の青年が居候することになり、彼らとの交流を通じて、新たな「家族」の絆を築いていく物語です。
  • ジャンル 日本映画 ドラマ ヒューマン
  • 鑑賞媒体 Amazonプライムビデオ
  • お気に入り △(×、△、〇、◎の四段階)

感想

この難しい題材を映画化してくれたことには、正直に感謝したい気持ちでいっぱいです。

分断や排斥主義が声高に叫ばれる今の時代において、この視点を持つ作品が世に出ることは、問題提起の入り口としてすごく重要なことだと思います。ただ、テーマがとてつもなく重いだけに、全体のリアリティラインが上がったり下がったりと定まらず、どうしても「綺麗ごと」に見えてしまう瞬間が多かったのが、残念に感じられました。

テキストで語られる感情

予算の問題なのか、あるいはレーティングの関係なのかは分かりませんが、登場人物たちが背負っている悲劇の多くがテキスト(セリフ)で語られるに留まっている印象でした。そのため、彼らの抱く深い悲しみや憎しみが地続きの感情としてこちらに伝わりきらず、結果として役者さんの凄まじい熱演に全てを委ねてしまっている(全ツッパしている)ような印象を受けました。

妻を轢き殺されたギャングのボス、テロ組織に息子を殺された父親……。三つ巴の悲しみと怒りが錯綜する、本来なら壮絶な作りのはずなのですが、その出来事の重さに対してスクリーンから出される「解」が役者さんの慟哭だけ、というのは少しキツいものがありました。

解決されない根本、散漫になった焦点

最終的に、あの安直で短絡的とも言えるオチにしてしまったのも残念なポイントです。根深い移民問題というのは、あんなに単純なことで解決するはずもありません。

彼ら個人のミニマムな問題はそれなりに解決したのかもしれませんが、社会としての根本的な問題は1ミリも解決していない。これでは、せっかくの重いテーマを借りただけの「バイオレンス映画」に見えてしまう懸念がありました。

観る前は、役所広司さんが長い時間をかけて、地元のブラジル人たちとの交流を通じてお互いを分かり合っていくヒューマンドラマだと思っていたのですが、まさかの「地元半グレとの抗争もの」だったことにも驚きました。もちろん、それも深刻な社会問題の一つではあるのでしょうが、物語の焦点が色々なところに散漫になってしまった感じが否めません。

役者陣の豪華さや予算の規模を見ても、この移民問題は歴史に残るような心揺さぶる名作になりそうな素地があっただけに、なんだか駆け足な詰め込み状態になってしまったのが勿体なかったですね。

出会う「一人」が国を変える

ただ、そんな中でも「出会う人によってその国の印象が変わってしまう」という心理描写は、実に見事だったと思います。

もし悪い人間の被害に遭ったとしたら、悪いのはその個人であるはずなのに、僕たちはどうしてもその地域全体、あるいは国全体のイメージを悪く塗り替えてしまいがちです。作中のブラジル人の彼も、それまで出会ってきた日本人は彼を搾取しようとする人ばかりでした。

そんな彼が、初めて自分を一人の人間として対等に接してくれた役所さんに父親のような信頼を寄せていく。心が荒みそうな時、貧すれば鈍する時に、彼にとっての役所さんのような存在に出会えることがいかに救いになるか。その一点においては、非常に深く共感できるものがありました。

大きな社会問題の解決には至らずとも、隣にいる「一人」を大切に想うことが、いつか世界の色を変えていく…という理想を伝えたかったのかなと思った一作でした。


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