【アニメレビュー】「星つなぎのエリオ」/普通に面白い、けれど配信で十分だったかもしれない

アニメ

【星つなぎのエリオ】

  • 鑑賞日 2025/08/06
  • 公開年 2025
  • 監督 エイドリアン・モリーナ、ドミー・シー、マデリン・シャラフィアン
  • 脚本 ジュリア・チョウ、マイク・ジョーンズ
  • キャスト 濱野大輝、新崎瑞季
  • あらすじ 両親を亡くし孤独を抱える少年エリオが、地球の代表と誤解されて星々の代表が集う宇宙「コミュニバース」へ招かれる物語。エイリアンの少年グロードンとの友情を育み、孤独な二人がお互いの居場所を見つけ、星の危機に立ち向かう感動のファンタジー・アドベンチャーです。
  • ジャンル アメリカアニメ ディズニー ファンタジー SF
  • 鑑賞媒体 映画館
  • お気に入り △(×、△、〇、◎の四段階)

感想

ジョン・ラセターの幻影を追い求めて、またピクサーを観てきました。 観終わったあとの率直な感想は、「あぁ、今回もか……」という少し寂しい溜息。

もちろん悪くないんです。綺麗にまとまっているし、テーマもしっかり伝わってくる。 だけど、初期の、あの魂が震えた頃のピクサーを知っていると、どうしても強欲になってしまうんですよね。

冒頭は完璧!

物語の冒頭、エリオの境遇とボイジャーの下りは完璧でした。地球で感じている「誰にも理解されない疎外感」や「両親との通信だけが唯一の繋がり」という描写は、すごく丁寧で湿り気があって、個人の内面に深く潜るトーン。これから始まる壮大な物語に物凄くワクワクして、「これは超名作の予感……!」と期待が最高潮に達したのですが……。

ぶつ切りのチャプターと散漫なテーマ

いざ宇宙(コミュニバース)に舞台が移った途端、「これ本当に冒頭と同じ監督が作ったの?」と疑いたくなるくらい、全体の連結が悪くなってしまった印象です。まるでチャプターごとに作る人が変わったかのようにぶつ切りで、なんとも収まりが悪い。

前半の丁寧な内面描写が、急に「ドタバタ劇」や「きらびやかなスペースオペラ」に切り替わる。エリオの抱えていた静かな痛みが、派手なビジュアルとアクションにかき消されてしまった印象です。

構成も「起承転結」というよりは「起起承承結」といった感じで、「転」がないまま盛り上がりに欠けて終わってしまった気がします。テーマは「親子の愛」でそこは良かったのですが、中途半端に異種族間の友愛も入れているせいで重点が散漫になり、相互に機能し合っていませんでした。どうしても、あの黄金期のピクサーの完璧なプロットを求めてしまう身としては、非常にもどかしかったですね。

物語の核心は「両親に会いたい、認められたい」という極めて個人的な動機のはず。でも、中盤からは「地球を代表して異星人と交渉する」という、あまりにスケールの大きすぎる公的な任務がメインになってしまう。「一人の少年の成長譚」に集中したいのに、世界観の説明や宇宙のパワーバランスの話が割り込んでくるから、観ている側としては「今、エリオの心はどうなってるの?」と置き去りにされた気分になったのです。

設定の面白さと、描き込みの物足りなさ

「強固な鎧の中がふにゃふにゃな宇宙人」という設定は面白かったし、それが息子との相互理解に上手に機能しているシーンや、父子が分かり合う場面には感動しました。ああいった座布団一枚!って感じのドラマをもっと全体に欲しかったかな。

「逃げた先にも待ってるのは同じく戦場だ」というのは、僕の大好きな『ベルセルク』の名言なのですが、その要素をもっとエリオの成長と絡められた気がして勿体ない。結局、ただ行き当たりばったりで物語が進んで終わってしまった……という感想が拭えませんでした。

また、『モンスターズ・インク』に見られるような多種多様で魅力的な異種族の描写も、今作の宇宙人たちには薄かった。デザインだけ作って、彼らの育った環境・風俗・価値観といったバックボーンまでは設定していない感じで、造形にあまり愛を感じなかったんです。ただの「モブ群」としか見えなかったのが残念ですね。

エリオというキャラクターへの挑戦

一方で、アンチが生まれそうなエリオの性格は僕は好きでした。

聖人君子のような「良い子ちゃん」にした方が共感は得やすいのでしょうが、あえてイラつくようなお子さんにしたチャレンジは素晴らしい。結局それも親のいない寂しさからの歪みだし、この子の個性なんですよね。

眼帯の秘密や自己肯定感の欠如といった重いテーマを抱えた「人間」と、「人外の宇宙人」が交錯する最高に深いドラマが生まれそうな題材だっただけに……ラストが外的なイベント(事件解決)によって強制的に解決させられ、駆け足で大団円に終わってしまったのが、本当に勿体ない!

通常のアニメとして観たら十分な仕上がり

…なのですが、ピクサーだとどうしてもハードルが跳ね上がってしまいますね。最近は打率がものすごく下がっていっているから、わざわざ映画館で観るのを躊躇しちゃうなぁ、というのが正直なところです。

家で観る配信なら「いいね!」となったかもしれませんが、スクリーンで魂を揺さぶられたかった僕としては、物足りない夜になりました。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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