【映画レビュー】「国宝」地獄を経た者だけが辿り着く美と、黄金のプロット。

映画

【国宝】

  • 鑑賞日 2025/06/11
  • 公開年 2025
  • 監督 李相日
  • 脚本 李相日
  • キャスト 吉沢亮、横浜流星、高畑充希
  • あらすじ 戦後の歌舞伎界を舞台に、人間国宝にまで上り詰めた歌舞伎役者・立花半四郎の波乱に満ちた人生を描いた物語です。
  • ジャンル 日本映画 ドラマ 歴史
  • 鑑賞媒体 映画館
  • お気に入り ◎

感想

映画「国宝」一言で鑑賞後の感想を表すならば「圧巻」。

脚本の密度、役者陣の凄まじい演技も素晴らしかったですが、僕が何よりも感動し鳥肌が立ち、圧巻と評するまでのものは、それは監督の神々しいカメラアングルでした。

李監督の計算され尽くした構図と編集があまりにも美しく、その圧倒的な映像の力が、歌舞伎を全く知らない僕にさえ「なんだかものすごいことをしているんだ」という説得力を持って迫ってきました。まさにそれは「地獄を経た者だけが辿り着く世界」。

絶妙な脚本の温度感とバランス

正直なところ、歌舞伎を知らないからこそ純粋に楽しめたのか、逆に歌舞伎通から見ればファンタジー過ぎるのか、その境界線は僕には分かりません。しかし、この大ヒットの要因の一つは、物語のバランス感覚にある気がします。

もっと二人の関係をドロドロの愛憎劇に描くこともできたはずですが(僕個人はそちらのテイストが大好物ですが)、「軋轢も描くけれど、基本は仲の良い二人」という絶妙な温度感が、多くの観客に受け入れられた様に思います。長時間の上映時間に対して、爽やかでありつつ愛憎も含む主役二人の関係性の塩梅が絶妙でございました。

人生を重ねる「黄金プロット」の強さ

物語に関して本作のストーリーラインは、僕の大好きな映画『ボヘミアン・ラプソディ』や漫画『ベルセルク』にも通じる、ある種の黄金プロットをなぞっておりまして、何者でもない若者がのし上がる⇒この世の春を謳歌する⇒事件が起き転落する⇒そして…、というやつですね。

このパターンはやはり強い。 誰もが自分の人生のどこかに当てはまる要素を見出し、我が事のように共鳴してしまう。天才がのし上がり、キラキラ光る世界で存分に謳歌し、そして転落していく悲哀を描く物語。僕はこの構造がもう大好きなんです!その諸行無常な盛者必衰に、見た後しばらく心にぽっかり穴が開きます。

横浜流星が見せた「女形」の本質

そして、恐らく世間で最も評価されているであろう主役陣のビジュアルと演技力。仰る通り半端なく強い!それはイケメンだー、美女だー、という外形的なものだけではなくて(もちろん大部分は占めるでしょうが)それを越える演技と演出にありました。

例えば横浜流星さんは、骨格自体が非常に男らしい俳優さんです。 正直、単に「綺麗な女性の見た目」を作れる男性なら他にもいたかもしれません。女形にしたときに、柔らかい女性特有の美しさ、の外見になっていたとは思えませんでした。しかし、だからこそ、見た目ではなく、踊りや演技で女性の内面描写を出力する景色に圧倒されたのです。

女形とは、外見で女性の美しさを模倣するものではなく、その所作、踊り、そして表情で女性を表現するものなのだと、彼を見て初めて気付かされました。

高畑充希という「マグマ」

そして何気に凄かったのが、高畑充希さん。

感情を表に出さない静けさの中に、底に潜むえげつないほどの熱情、無表情の裏で燃えたぎるマグマのような情念、を見事に表現されてました。特に印象的だったのが、彼氏が入れ墨の痛みに必死で耐えている横で優しく励ましているシーン。 カメラがスッとパンすると、彼女はとっくに涼しい顔で自分の背中に彫り終わっているという(笑)。 こんな女性の前ではどんな男もベベちゃんのまま、一生頭が上がりませんよ。彼女の慈愛と執念と覚悟を見事に魅せた大好きなシーンです。

主演の吉沢亮さんは言わずもがな、田中泯さんなど、とんでもない演技を上映中たっぷりと堪能できます。そういう、日本が誇る俳優陣の深さをまざまざと見せつけられたのも嬉しかったです。

総評

正直ここまで大ヒットするほどの感動を覚えたかといえば、物語面では個人的にそこまでの評価は得られなかったけども、ダントツで監督のカメラアングルや演出の美しさに圧倒されました。構図フェチにはたまらない作品です。

これを映画館のスクリーンで観れて本当に良かった!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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