ドラマレビュー】「おいしい給食」コメディの裏側にある、食育のテーマ。

ドラマ

【おいしい給食】

  • 鑑賞日 2023/04/07
  • 公開年 2019
  • 監督 綾部真弥、田口桂
  • 脚本 永森裕二
  • キャスト 市原隼人、武田玲奈、佐藤大志、豊嶋花、辻本達規
  • あらすじ 1980年代。給食マニアの中学校教師・甘利田幸男は、給食を愛し、給食を食べることに生きがいを感じていた。彼は、給食をより美味しく食べるために、様々な工夫を凝らす。
  • ジャンル 日本ドラマ コメディ グルメ
  • 鑑賞媒体 アマゾンプライムビデオ
  • お気に入り ◎

感想

僕の学生時代より前の話ですが、80年代を舞台に給食を題材にしたドラマかぁ。
ALWAYSさながら、さぞノスタルジックに郷愁を誘う物語なんだろうなあ…

と、勝手に決めつけていた自分を殴りたい!
主人公の甘利田先生は、給食の前に流れる校歌に合わせて、狂った様に踊ります。
そんな奇行を、生徒たちは視界に入っていないかのように無視して校歌を歌い続けます。
ヤダー!なにこのドラマ、めっちゃ好きーーー‼
と1話から速攻虜になりました(笑)

これは、脚本力や演出といった構成を度外視した、市原隼人さんの俳優力一点突破の物語。
(いや、もちろんそれは極論で、緻密に計算された監督様の力量があると思いますが)

あの振り付けはアドリブなのかしら、ダンスインストラクターがついているのかしら?
どちらにせよ、全10話、10回分のダンス全て飽きることなく見れたのはすごい事です。
常に踊り、叫び、食べ、整う、なんと過酷な現場でしょうか。

変なテレやすべり笑いを入れようモノなら、サムくて見てられないのですが(僕の苦手な福〇監督の笑い的な)甘利田先生は全力でやりきる!変な冷めたツッコミも入れさせない!その辺の味付けが僕のツボにドンピシャでした。

もちろん外連味溢れるキャラ描写だけが、このドラマの見どころではありません。
発育途中の中学生と食育、という題材である以上、とても深い教育性も内包しております。(最新作の劇場版も、90年代の岩手を舞台に地産地消の大切さを訴えており、その20年後に起きる大災害を思い浮かべると、そのテーマの深さに驚嘆します。)

甘利田先生は基本的に厳しい人です。挨拶や校則など甘えは許しません。
ですが食に関しては「目の前の食事を心から楽しむ」「生徒に食べ方を強要しない」「作ってくれた人への感謝を忘れない」といった哲学を持っております。
その極限まで高まった気持ちの発露が、あの激しいダンスなのでしょう(笑)

人と食事をする時に感じるのですが、「ただ胃袋に栄養を詰める人」と「食材の一つ一つに好奇心を持って食事をする人」とに別れます。僕はなるべく後者でありたいと思っているので、食事の折にはよく妻と「この大根美味しいね!」「このスープの出汁は何が入ってるんだろう!」といった会話をいたします。そうやって食材に興味を持ち、メニューを楽しむことが、作ってくれた人への礼儀になると思っているのです。

甘利田先生も給食を食べる際に一つ一つ具材を確認し、分析し、味を楽しみます。
楽しみすぎてボルテージが上がりきるとその食材にチューします!
それは子供たちの健康を祈って、限られた予算で最大限の栄養価と、できるだけ美味しさも担保しようという調理員の皆様への敬意の現れなのです!
戦後日本が味わった貧困からの脱却!すべての子供に平等に最低限の栄養を与えたいという想い!それら全てを甘利田先生は「うまそげなぁぁ‼」に込めているのです!

…いかん、いかん、甘利田先生の様にアツくなってしまいました。

他にも語り出したらキリがない、沢山の魅力があります。
ライバルである神野ゴウは10話全部、予想のナナメ上の給食のアレンジをしてきやがります。
これは推理小説顔負けレベルで、観てる僕も「そうきたかー!」と甘利田先生と同じく毎度敗北感に打ちのめされるのです。

最後に、個人的な話になりますが、僕は小学一年生から五年生まで南米に住んでおりまして日本の給食とは無縁の生活でした。そして、ときたま日本の親戚から送られてくる漫画やアニメに出てくる給食というものにおいて、絶大な憧れがありました。

転機が訪れ、五年生の冬、日本に越してきて初めて給食を食べる事ができました。
牛乳と白米を初めて食い合わせたあの衝撃は一生忘れません。
そしてそこから中学三年生までの4年間、毎日の給食のおかげで健やかに成長期を過ごせました。
家庭の貧困においては、給食はとてもとても大切な子供達のセーフティーネットにもなっている事かと思います。

その様な給食に対するワクワク、ドキドキ、驚き、時にガッカリ、といった、全ての感情が詰まっているドラマです。日本が誇るべき給食文化にフューチャーした珍しいコメディドラマ、オススメ!


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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