【オズの魔法使い】
- 鑑賞日 2026/03/13
- 公開年 1939
- 監督 ビクター・フレミング
- 脚本 ノエル・ラングレー、フローレンス・ライアソン、エドガー・アレン・ウルフ
- キャスト ジュディ・ガーランド(ドロシー)、レイ・ボルジャー(案山子)、バート・ラー(ライオン)、ジャック・ヘイリー(ブリキ男)、フランク・モーガン(オズの魔法使い)
- あらすじ カンザスの農場で暮らす少女ドロシーと愛犬トトは、巨大な竜巻に巻き込まれ、不思議な「魔法の国オズ」へとたどり着く。故郷へ帰る方法を求めて、ドロシーはエメラルド・シティに住む魔法使いに会うための旅に出る。その道中で、知恵を欲しがる案山子、心を欲しがるブリキ男、勇気を欲しがるライオンと出会い、共に困難を乗り越えながら魔法使いのもとを目指す。
- ジャンル アメリカ映画、ファンタジー、ミュージカル、アドベンチャー
- 鑑賞媒体 Amazon Prime Video
- お気に入り ◎(×、△、〇、◎の四段階)
感想
原典にして古典。誰もがその名を知るこの名作を、僕は『ウィキッド』をより深く理解するための補完として、改めて鑑賞いたしました。
幼い頃の微かな記憶はありましたが、大人になって向き合った今、その素晴らしさに圧倒されました。。1930年代の作品というものが、2026年の今において「新しい」のか「古い」のか、その概念的な位置づけは僕にはわかりません。けれど、そんな小難しい理屈を抜きにして、とにかく面白かったんです。
よくある「昔の名作だから、とにかく教科書的に褒めておこう」という、ある意味見下したような賛辞ではありません。本当の意味で、心から面白かったんです。それは僕が予想していたものとは全く違って、お笑い的な面白さでめちゃくちゃ笑いました。腹の底から笑う場面も沢山あったのですよ。
現代の感性にも鮮やかに響く「計算された笑い」
この映画、とにかく爆笑させてくれます。当時の制作者がどこまで狙って入れ込んだのかはわかりませんが、2026年の今観ても、思いっきり笑えるんです。もちろんコメディテイストとして作られているのでおかしいのは当然なのですが、昔のテイストでドタバタ劇でおもしろおかしく、という意味ではありません。昔の感性に脳内スイッチをしなくても、令和の今の感性で、ちゃんと笑えるんです。
顔芸が主なのですが、台詞回しや間の取り方も絶妙でした。特にライオンの動きやボケは、本当に僕のツボにドンピシャでハマって大好きになりました。これが誤解ないように伝えるのが大変なのですが、昔の古い映像を見て、バカにして見下しておもしろおかしい、というのではないんです。
ちゃんと制作者が意図した演出で、その計算通りにちゃんと面白いんですよ。ライオンが何回も「courage(勇気)」とコールアンドレスポンスする所は本当に面白かったですし、ライオンのシーンは全部好きです。こんなに笑わせてくれる映画だとは思いませんでした。
寓話の皮を被った「ロジカルなエンタメ」
勝手なイメージですが、もっと寓話的な物語というか、全体がぼやっとしていて教訓や風刺があってなんとなく終わる、みたいな仕上がりかと思っていました。ところが実際は、めちゃくちゃロジカルで構成がしっかりしている、思いっきりエンタメだったんです。起承転結あふれるドロシーの壮大な「行きて帰りし物語」でした。
敵兵士の格好をして装備を整えて潜入する、といった展開もちゃんとロジックが組まれていたり、最後もですね、布団をめくるとルビーの靴を履いていました、という安易な終わり方じゃないんです。そこは曖昧なまま、本当の出来事だったのか、それとも夢だったのか、観客の想像にゆだねるのもお洒落ですよね。どちらにせよ、ドロシーは成長し、「大事なものはすぐ近くにある」という学びを得たのですから。あの強欲な地主とも、これからはきっと渡り合えるはずです。
オズのおじさんも、単純な勧善懲悪ではなく、人としてグレーゾーンなキャラクターなのが実に面白いと感じました。一方で、昔の映画なのでトトの扱いが結構雑なのは、今の感性で観てしまうとどうしてもハラハラしますね(汗)
白黒の世界を塗り替える「希望」と「国力」
少し真面目な観点で語るとしたら、第二次世界大戦が勃発した年に、これだけのセットとカラー映像を作れるアメリカの国力、その豊かさに戦慄します。
ドロシーの内面世界があれだけ色鮮やかなカラーで描かれるのに対し、現実世界は陰鬱とした白黒で描かれていますが、これから再び訪れる軍靴の足音に、ここではないどこかを願う少女が、最終的には再び白黒の世界に戻ってくる。けれど、彼女の目には、もうかつてのような白黒の世界には映っていないはず。彼女はオズでの冒険を胸に、これからの激動の時代をたくましくサバイブしていくのでしょう。
大事な人を戦地に送った人々や、戦争の不安に怯える人々に、ドロシーの抱いた希望はどれだけ勇気を与えたのでしょうか。それも直接的な戦意高揚のテーマではなく、これだけ美しくて笑える内容で届ける。映画の持つすさまじい力ですよね。
絆がもたらす「没入感」という魔法
僕の中での名作の基準の一つとして、見終わったあとに「思えば遠くにきたもんだ」と思わせてくれる映画があります。その最たるものが『ラピュタ』なのですが、あれだけ短い上映時間に対して、スタッフロールが流れている間、冒頭を思い返すと「あれからなんて遠い所に来たのだろう」としみじみ感じさせてくれるものです。
今作もドロシーがうちに帰って来たとき、改めて冒頭を思い返すと、もの凄く長い時間軸を過ごした感覚に陥りました。三人の仲間との別れも、大河ドラマを観た時のように、深い絆の構築を感じる。なぜそう思えるのかは様々な細かい要素があるのでしょうが、実時間に比べて没入時間が壮大に感じる作品は本当に素晴らしいですね。
マンチキン国の人々
そして最後に、やはりこの映画で一番圧巻だったのは、マンチキンを演じた小人症(現在は低身長症とも呼ばれます)の俳優の方々です。
誤解がないよう語るのは難しいですが、彼ら一人ひとりの持つ個性が、このファンタジーの世界に確かな実在感を与えていたのは間違いありません。彼らの存在が、この作品を唯一無二の仕上がりにしました。観ていて本当にマンチキン国に迷い込んだ錯覚に陥ります。
現代の価値観で見れば、当時の彼らの置かれた環境には複雑な思いを抱く部分もありますが、時代背景を理解した上で観ると、あの賑やかな歌声の裏にある映画史の重みがより深く迫ってくる気がします。
時代を超えて響く、本物の「courage」
いろいろと小難しいことも考えてしまいましたが、結局のところ、そんな理屈を抜きにしても、本当にストレートに笑える、素晴らしい映画でした。
ライオンの「courage」の叫びに笑い、ドロシーの勇気に胸を熱くする。何十年経とうが、良いものは良いし、面白いものは面白い。そんな当たり前のことを、この色鮮やかな古典が教えてくれました。ウィキッドがきっかけではありましたが、本当に見て良かった。心地よい旅の余韻に浸れる名作でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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