【6人ぼっち】
- 鑑賞日 2025/05/15
- 公開年 2025
- 監督 宗綱弟
- 脚本 政池洋佑
- キャスト 野村康太、吉田晴登、三原羽衣、松尾潤、鈴木美羽、中山ひなの
- あらすじ 修学旅行で同じ班になった、それぞれひとりぼっちな6人の高校生たちの交流を描く青春ドラマ。クラスに友人がいない加山糸は修学旅行前の班決めで、同じく誰とも組むことができずにいた5人と一緒に班を組まされ、班長まで任されてしまう。メンバーは、自己中心的な馬場すみれ、ガリ勉タイプの新川琴、自慢話ばかりの五十嵐大輔、気が弱すぎる山田ちえ、そして不登校の飯島祐太郎。修学旅行先の広島で、ギクシャクしながらも班行動が始まり、6人それぞれの行きたい場所を順番に周ることに。バッティングセンターやSNS映えするカフェを巡るうちに、彼らの間に少しずつ仲間意識が芽生えはじめる。しかし、あることをきっかけに思わぬ事態が起こり……。
- ジャンル 日本映画、ドラマ、ヒューマン
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り ◎(×、△、〇、◎の四段階)
感想
映画『六人ぼっち』を鑑賞しました。2025年のベスト10に食い込む、これぞ「隠れた名作」と呼ぶにふさわしい素晴らしい一本でした。
クラスの中で浮いている6人が、修学旅行の班決めで余り物として一つの班になってしまう。そんな、どこにでもありそうでいて、誰の心にも刺さる物語。
喜びも悲しみも、10代の剥き出しの感性で描かれていて、観ている間ずっと胸が締め付けられる。生き辛さを抱える子供たちが、どうかみんなキラキラした青春を送れますように。そう心から願わずにはいられない、大変に良い映画でした。
むき出しの感性と共感性羞恥
校庭のポール的な旗を揚げる奴(?)を真上の空撮からとっている画角があるのですが、その空からの目線が、主人公のぼっち加減を際立たせる絵面になっていて、のっけから、「あ、この映画いいぞ」と思わせてくれます。
主役の6人全員が、もう本当に愛おしいんです。みんなそれぞれに劣等感を抱えていて、未完成で純粋で、とにかく傷つきやすかったあの頃。まるで殻を剥いたばかりのゆで卵のような、知覚過敏な感性だった学生時代を思い出させてくれます。
彼らの空回りする感じは、もう共感性羞恥抜群で色々な黒歴史を思い出させてくれます。でも、だからこそ全員が愛おしくてたまらなく、あの頃の自分も微笑ましい。二度と戻ることのできないキラキラした世界。オジサンの郷愁ここに極めりです。
僕の学生時代は、もっと幼くて子供じみていて、女子とまともに話すことすらできないくらいの精神年齢だった気がします。それに比べると、この子供たちはSNSで叩き上げられたせいか、ある意味ですごく大人だなと感じました。相手を慮って傷つけないよう、ほど良い距離感で接することができるんですよね。
お好み焼き屋のシーンで、照れ隠しに「べ、別にこいつらとは友達じゃねーよ」と言ってしまった彼の姿に、過去の自分を重ねてしまいました。僕もあんな風に、意図せず同級生を傷つけたことがたくさんあったと思います。あの頃、もっと大人で思いやりがあったらな、なんて反省してしまいますが、そういう苦い経験が今の自分を作っているのも事実。
現代特有の病巣と、テックによる救済
今の時代は、常に「良い子」でいなければならないという圧力が、彼らに深い影を落としています。空気が読めないこと、趣味を共有できないこと、情報を発信し続けなければならないこと。そして、誰からも必要とされない、という恐怖。それは普遍的な悩みのようでありながら、やはり今の時代特有の病巣でもあるのだと思います。一人の生徒が自殺を考えてしまうほどに、その悩みは深い。
けれど、この映画が素晴らしいのは、その時代性を「悲しい時代だね」と突き放すのではなく、現代ならではのテックを利用して6人の絆を強固にし、青春をブーストさせている点です。これはマジで!見事でした!「俺たちの時代の方がマシだった」「昔はよかった」なんて大人の勝手な言葉は、今の子供たちにとっては空虚なだけですから。しっかり現代を生きる子供たちに真摯に向き合った、愛のある脚本だと感動しました。
個々の悩みをギャグや大人の都合で舞台装置にせず、本当に優しい目線で描き続けているのも見事です。子供は大人が思う以上に本気で悩んでいるのに、往々にして「大袈裟だ」と流されてしまいがちです。この映画はそんなことをせず、真っ向から彼らに寄り添い、その繊細な心を丁寧にスクリーンに映し出してくれました。だからこそ、それを乗り越えて絆を深める6人の姿に、深く深く心を打たれるのです。
恋愛に逃げない、人間関係の構築
また、この6人を安易な恋愛展開に持ち込まなかったことにも拍手を送りたいです。漫画などでは、いわゆる「陰キャ」がいきなり恋愛まで一足飛びにいく展開が多いですが、現実はそうではありません。恋愛という「陽キャのステージ」に上り詰めるには、越えなければならない壁が山ほどあるんです。そこを飛び級しようとしても、玉砕するだけですから。
この映画はその前の段階、つまり「相手を知り、自分を開示し、悩みを共有する」という流れを丁寧に描いています。人間関係というのは、そこを経て初めて恋愛関係へと発展できるものですよね。そもそも彼らが抱える背景は、恋愛ごときで解消できるほど軽いものではないですし、彼らが求めているのはそんな次元の答えではないのです。
特に、ぼっちの中でもカースト上位にいるであろうインフルエンサーの彼女が、橋の上で想いを吐露する場面は、めちゃくちゃ良かったです。本当に、心に刺さりました。
忘れていた、かつての「寄せ集め班」の記憶
今作を観ていて、すっかり忘れていた自分の高校時代の修学旅行を思い出しました。実は僕も班決めの時に病欠してしまい、気づいたら寄せ集めの班に入れられていたんですよね(笑)。
幸い仲の良い一人が一緒だったので問題はなかったのですが、普段話すことのない同級生と数日間を共に過ごした経験は、今思えばかけがえのないものでした。そんな自分自身の過去もあって、今作への没入度は段違いに高かったです。
死ななくてよかった。この子たちが楽しい修学旅行を過ごせて、本当に良かった。そう心から思える作品でした。
願わくば、映画が終わった後の彼らの人生も、幸せであってほしいと願わずにはいられません。ここまで登場人物に感情移入させてくれる人物造形と、素晴らしい脚本、そして演出に、心からの拍手を送りたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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