【宝島】
- 鑑賞日 2025/09/22
- 公開年 2025
- 監督 大友啓史
- 脚本 高田亮
- キャスト 妻夫木聡, 広瀬すず, 窪田正孝, 永山瑛太
- あらすじ 戦後のアメリカ統治下の沖縄を舞台に、米軍基地から物資を奪って貧しい住民に分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちの姿を描く。彼らのリーダーであるオンが突然消息を絶ち、残された幼馴染の3人は、それぞれ異なる道を歩みながら、オンの失踪の謎を追う。
- ジャンル 日本映画 戦争 歴史
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り ×(×、△、〇、◎の四段階)
感想
歴史の重層的な痛みを描こうとした大作。沖縄の歴史という、目を逸らしてはいけない重厚なテーマを、これほどの規模感で映画化したことへのリスペクトを込めつつ、一人の観客として、そして表現を愛する者として感じた葛藤を率直に綴ります。
まずは、このような決して「売れ筋」とは言えない、重く、しかし極めて重要な題材にこれほどの予算と情熱を投じ、世に送り出してくれた制作陣に深い敬意を表します。多くの学びがあり、観て良かったと心から思える一作でした。
ただ、この題材を扱ったからこそ、作風に関しては個人的にいくつかの葛藤を感じざるを得ません。全体批判的な内容になってしまいます。不快に感じられましたら、大変申し訳ありません。
「言葉が分からない」というリアリティの価値
劇中の沖縄の言葉に字幕がないことへの意見もあるようですが、僕は「このままで良い」と感じた一人です。
意味が分からない、聞き取れない。その距離感こそが、本土にいる僕たちの現在地であり、沖縄に対する解像度の低さを突きつける「ひとごとの証拠」のような気がしたからです。何を言っているか分からないという戸惑いそのものが、この作品における重要な示唆であり、意味のある演出だったと感じました。
「慟哭」の描き方。
一方で、作品全体を貫く演技指導や演出については、どうしても没入が難しい部分がありました。
人が極限の悲しみや怒りに直面したとき、確かに叫び、昂ぶることもあるでしょう。しかし、劇中ではその「叫び」に至るまでの心の機微が少し急ぎ足に感じられ、結果として3時間という長尺の間、常に全力の熱量がぶつかり合う「がなり合い」が続きます。
僕個人の好みではありますが、極限の状態にある時こそ、声にならない声、静かに深く突き刺さるような、心の底から訴えてくる慟哭を、脚本や演出で表現してほしかったと感じます。役者の皆さんが魂を削るような熱演をすればするほど、演出がその熱量に頼りすぎてしまっているように見えて、少し醒めてしまったのが正直なところです。
「巨大制作費」という言葉と、画の説得力
「制作費25億円」という宣伝文句に期待した分、映像表現に寂しさを感じた部分もありました。
飛行機の衝突シーンのカット、暴動部分、墜落現場・町のセットを使いまわす箱庭的なシーンなど、お金をかけた部分と、そうでない部分の差が画からしみじみと伝わってきてしまう。予算の制約ゆえか、肝心なスペクタクルが全て俳優のアップで補完されているように見えてしまう場面も多くあり、没入の糸が切れてしまう瞬間があったのは、非常に惜しかったです。
編集の取捨選択と、映画としての立ち位置
この物語は、題材があまりに重く複雑です。フィクションを交えて見やすくする必要性と、社会性の高いテーマを軽薄に扱えないという責任感。その間で監督がどれほど苦悩されたかが、スクリーンから痛いほど伝わってきました。
スペクタクルに寄せようとするあまり、沖縄の悲劇という本質が少しぼやけてしまったのではないか。観客のパイは減るかもしれませんが、あえて「退屈なほどの重さ」に全振りした方が、僕個人の評価としては高かったかもしれません。それをするならミニシアターレベルの公開数になるのでしょうが…
3時間を超える名作群が、なぜ最後まで飽きさせないのか。それは恐らく、計算され尽くした編集の力と、取捨選択の極みがあるからだと思うのです。今作は、どちらの方向性も選ぼうとした結果、編集による引き算が足りなかったように感じられました。なかなかに、この上映時間を没頭し続ける事が難しかったです…
困難な映像化への敬意
防空壕で白骨を見つける、あのとてつもなく重い場面。あのような、現代と戦争が地続きであることを突きつける決定的なシーンこそ、役者の叫びというプランに委ねるのではなく、僕たちにトラウマを与えるほどの、映像としての静かな衝撃が欲しかった。
実際の沖縄の方々の怒りや苦しみは、僕の勝手な想像や、安易な描写では追いつけないほど、過酷な位置にあるのだろうな、と今作を観て改めて考えさせられました。
この題材を映画化することの困難さは想像を絶しますし、その壁に挑んだこと自体が素晴らしい挑戦だと思います。沖縄の歴史に触れる機会をくれたことに感謝しつつ、しかし一人の映画ファンとしては、手放しで絶賛するには至らない、非常に苦しく、切ない鑑賞体験となりました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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