【未来】
- 鑑賞日 2026/06/13
- 公開年 2026
- 監督 瀬々敬久
- 脚本 加藤良太
- キャスト 黒島結菜、山﨑七海、坂東龍汰、細田佳央太、近藤華、玉置玲央、野澤しおり、吹越満、カトウシンスケ、利重剛、中村優子、黒沢あすか、三浦誠己、木竜麻生、宮川一朗太、松坂桃李、北川景子、(声の出演)西野七瀬
- あらすじ ベストセラー作家・湊かなえの小説を映画化したミステリードラマ。 教師になる夢を叶えた篠宮真唯子の教え子・佐伯章子のもとに、「20年後のわたし」を名乗る人物から手紙が届きます。父を亡くし、心を閉ざした母との生活の中で孤独に耐える章子でしたが、母の恋人からの暴力やいじめによって次第に追い詰められていきます。絶望の淵に立たされた章子は、友人の亜里沙と共に「親を殺す」という衝撃的な計画を企てます。真唯子は社会の理不尽に抗いながら彼女を救おうと手を差し伸べますが、事態は思わぬ方向へと動き出します。
- ジャンル 日本映画 ドラマ ミステリー
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り ◎(×、△、〇、◎の四段階)
感想
胸糞が…悪い…あぁ…反吐が出るほどに、胸糞が悪い。
でもそういう映画だからこそ、伝えられる現実がある。
物語の最後、スクリーンの中で真正面から僕を見据える四つの瞳は、「見て見ぬフリしてる、お前も、その胸糞悪い大人の一人だぞ」と突き付けています。息継ぎができない、しんどい映画でした…
登場人物全員が、こんな虚ろな目をしている映画がありますか。皆が皆、瞳孔が開き、うろんな瞼をしている。大きく真っ黒な黒目は、闇の闇、深淵を覗いていました。
画面外を想像させる「キツイ」演出
自分でもツボがわからないのですが、例えばとことん悲劇の物語や、とことんグロい描写でも平気だったりする反面、そこまで悲劇じゃないのに、グロい場面もほとんどないのに、ズンと凹みまくる映画があります。
描写そのものに関しては今作はその中間位の、絶望と希望と、絶妙なバランスの映画でした。恐らく監督があえてその塩梅で抑えたのだと思いますが、画面外に起きている事を想像したとき、どこまでも胸糞悪く辛く悲しい現実を見ることになる作りです。
直接的な性描写などは、子役にはトラウマになりかねないし、大人の演者だとしてもそれ自体がポルノ消費されてしまう。なので、そういったシーンなしで、だけども、想像力のある観客にはその間どんな事が起きていたのか克明に想像させる様に制作されていて、もうね、余白を想像するタイプの観客にはキツイキツイ…
湊かなえ作品を彩る役者の凄み
湊かなえさん原作は「告白」も名作でしたが、扱う監督によってまるで色が変わるのが面白いです。どちらも重い題材ではあるけども、中島監督はスタイリッシュに残酷に、瀬々監督は真っ向から王道に、それぞれ見応えがありまして、ですが、両作共通しているのが「母親役」の凄さです。
「告白」の松たか子さんの演技は、僕の中で歴代1番の凄さを魅せられた演技でしたが、今作の北川景子さんもすさまじい!ナイトフラワーに続き、薄幸の母親役が鬼気迫ります。毎度演じるのが本当にしんどそうで、本当すごい役者さんですよね。旦那さん風に言うと、SUHHOYSG(幸薄母親すげー!)でしょうか。
現代社会の歪みとドリームランドの皮肉
デジタル化する世の中でSNSが広がり、以前より他人とのアクセスは容易になったハズなのに、反して子どものSOSはその情報過多にどんどん埋もれてゆく。そんな子どもを救ったのがアナログの手紙であり、母子の「文章」という皮肉。実に小説家らしい発想で感服です。
予算の関係上、どうしても某巨大テーマパークをモデルにしたドリームランドの規模が、僕の地元の「鷲羽山ハイランド」クラスなのが悲しい所(苦笑)彼女達が心から夢見た場所であり、今の辛い現実から逃れる場所の象徴であり、その内実は資本主義の権化である事も含め、もっと巨大感は欲しかったかな。エントランスの再現度は良かった!今はあんなレベルの人の数じゃないですけどね↓アプリを把握してないと、ご飯も食べれない、ショーも見れない、アトラクションも長蛇の列…どうなってんの、ドリームランド!、っと話が全く別の方向にズレてしまいましたm(__)m
負のループと繋がってゆくバトン
基本的に被害者は全て毒親の所為で人生が狂わされます。その毒親も親からまた呪いを受け継いだのか、負のループから抜け出せない。改めて今作を見ると、人に対して自己責任論なんて振りかざせません。生まれ持ったスタートがこれだけ違う中で、どうしてそんな無責任な事が言えるでしょうか。
でもそんな負のループから、篠宮は、文乃は、なんとかそれを自分の代で終わらせようと、次の代には引き継がせまいと、必死で抗う。それがこの救いようのない映画に灯った小さな希望です。「あなたの未来は輝いている」と子供に伝えるのはどうしても無責任で欺瞞に満ちているけど、大人達はそれでもそう伝えるしかない。死んでゆく父親だからこそ尚更に、娘にはその未来がある事をわかってほしかった。
その想いから繋がってゆく奇跡のバトン。しかし、その至極真っ当なメッセージを発する事が出来たのは、登場人物中唯一毒親で育ってない良太だけ、という悲しさ。(彼の過去にもトラウマがあったならすみません、見逃しております。)光の中でまっすぐ育ったものは、闇に気付かない事がほとんどだけども、時折その光で闇から人を救い出せる。逆に、同じ闇を生きたからこそ、手を取り合えた章子とアリサでもあり、その人間関係のグラデーションがとても深かったです。
突きつけられる「凶暴な男性性」
今作の男性の登場人物は、皆、その凶暴な男性性に抗えず、とてつもない暴力で子供や女性を虐待します。己のちっぽけな虚栄心を守る為に義娘を殴る義夫、上司に逆らえず息子を権力者に売春させる父親、自分が当選する為に娘を売る政治家、どれもが醜悪で救いようのない悪なのだけど、同じ男性として、じゃあお前は一切その気持がないのか?と問われたら胸を張って「無い」とは言い切れません。
どす黒い大人たちが蠢く世界で、そうじゃない大人も少なからずいる。助けを求めたら誰かが必ず助けてくれる、そんなメッセージを以て、少女たちがラストに放つ「叫ぼう!」という言葉。遊園地を前にして、「誰か助けて」と大きく叫びます。
でも周りは誰一人彼女達を見ずに夢の国へ意気揚々と走っていく。叫び終わった彼女達がまっすぐ見据えるのは、スクリーン外の僕でした。いや、きちぃって…「市子」もそうでしたが、登場人物がまっすぐこちらを見て問いかけてくるやつ、ほんとにきちぃです。
例えば自分に有り余るお金や、誰も逆らえない権力があったとしても、性欲を抑える事が出来るのか?例えば災害や戦争になったとき、自分の命より子供を優先できるのか?スクリーン内からこちらを見据える目にはそういった問いが含まれています。
その安全な立場からこの映画の悪者たちに嫌悪してるけど、「じゃあお前はどうなんだよ?」と。その悪者達と同じ立場に立った時、絶対に自分はそうはならない!と断言は出来ない。だから、目をそらしてしまう。自分がさらけ出されてしまったようで居心地が悪くなってしまう。
瞳をそらさずに受け止めるべき教訓
正々堂々と人生を生きて、何一つ恥じる事のない人は、動じずに彼女達の視線を受け止められるのでしょう。でも、僕は前途したように思わず目を逸らしてしまう。でもだからこそ、こういう胸糞映画を見る価値はそこにあると思っています。翻って自分はどうなんだ、と自己を見つめる機会になる。しんどくて辛くて面倒臭いけど、ちゃんと見てよかったのです。
劇中の少ないながらも、子どもたちを救おうとした大人達は、湊かなえさんを始め、今作を制作したスタッフさん達の身写しです。
大好きな漫画「うしおととら」に「立ってるか、まっすぐに…お天道様にカオ向けて、おまえはそこに…立っているか」という僕の人生の教訓になっている台詞があるのですが、今作の「叫ぼう!」もまた、忘れられない教訓の一つになりました。
この映画を観た人たちが、作品の力をもって、声無き声に耳を傾けようと一人でも思うようになれば。これから日本中が不景気になり少子化も加速し、郊外も過疎化して、分断や格差が広がる未来を前に、そう願って作られたように思います。
目を逸らさない為に自分にできる事はなにか、とりあえず少額でも寄付を続けますかね…しんどかったけど、観てよかったです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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