【機動警察パトレイバー EZY File 1】
- 鑑賞日 2026/05/15
- 公開年 2026
- 監督 出渕裕
- 脚本 出渕裕(シリーズ構成)
- キャスト 上坂すみれ、戸谷菊之介、小林親弘、小清水亜美、佐藤せつじ、松村柚芽、林原めぐみ
- あらすじ 労働人口の減少が続く2030年代の日本。AI技術による自動化が進み、かつての最先端技術であった「レイバー」は、すでに社会基盤を支える一般的な存在として定着していました。人間が搭乗する旧来のスタンドアローン型レイバーは、自立型ロボットへの置き換えが進み、時代の趨勢から取り残されつつありましたが、それでも特車二課の果たすべき役割が変わることはありませんでした。
- ジャンル 日本アニメ SF アクション
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り △(×、△、〇、◎の四段階)
感想
大好きなパトレイバーが、なんと令和の今、計八話のシリーズとして完全新作で劇場公開!まずは一話から三話を先行上映との事。
大好きとは申しましたが、アニメシリーズと劇場版を通しで一回観ただけのライト勢と言えるでしょう。とは言え当時の興奮や感動はしっかり今も根付いています。
さて、そこから翻って今作はと言えば、正直、「え、こんなおちゃらけ読み切りで最後までいかないよね…」という感想です。巨大スクリーンでの公開ではあるけど、あくまで内容はTVサイズ。壮大な二時間映画のプロットではなく、昭和ノリの結構きちぃ茶化したテイストで70分が終わります。
画角の迫力とリッチな映像
映像は大分リッチです。質としてはCG感が強く重力は感じられませんが、チャーハン越しに見る人物や、ダイナミックに駆動する機体など、それらを画角のセンスと迫力でカバーしています。BGMの音ハメも気持ちよく、総じてアクション部分は楽しかったです。
ところどころハッとする構図が見受けられ痺れるのですが、スタッフロールに「樋口真嗣さん」の名前があって、なるほど!と納得です。
また、これは呪縛ともいえますが、林原めぐみさんの声を聴いた時の得も言われぬ安心感。僕の年代には母親の様な包容力を与えてくれますね。
求めたい「背骨」とリアリティラインの違和感
ただ、押井劇場版のシリアスポリティカルを求めるのはハードルが高すぎるのでそれは難しいとはいえ、アニメシリーズも茶化したテイストではありましたが、そこには芯を食った背骨はちゃんとありました。
キャリアとノンキャリの葛藤、犯罪者の抑えきれない世間への怨嗟、正義と組織との軋轢、明るいコメディ調の中にもしっかりとそういった重力があって、キャラクター達はそれに悩み苦しんだからこそ、当時の僕はとても感動した訳です。
今作の三話分を観た限りでは、それぞれのエピソードにそういった背景は見当たらず、また、1番期待している「始めは能天気、クライマックスに向けてシリアス」という流れも見当たりません。一本芯が通った動機や黒幕などの伏線が見つけられず、次回の四〜六話予告をみる限りでも、お茶らけ読み切りが続きそうです。
それが悪いとは言いませんが、特別料金1900円を払ってわざわざ映画館で観ようとは思えず、配信で十分です、とは言い過ぎでしょうか。七話から畳み掛けるとしても、ちょっとそこまで付いていくのは、相当熱心なファンじゃないと厳しいです。
おちゃらけ路線とリアリティラインの不整合
おちゃらけ路線で徹底するのは、別に方向性としてはいいんです。なにも過去パトレイバーと同じにしろ!と求めている訳ではありません。「らんま2/1」にしろ「めぞん一刻」にしろ、散々ふざけ倒して、最終話で怒涛の感動をさせる、という事も可能な訳ですから、最後の八話でそうする可能性もあるでしょう。
ただそれ以前の問題として、個人的に無理だ、と感じたのは、シンプルにイチ作品として観た時に、その「おちゃらけ」と「レイバー犯罪」のリアリティラインが相性悪すぎるんです。
例えば一話では、商店街に暴走レイバーが突入する時、あわや死人が出る危険性があるにも関わらず、特車二課の面々は「あー、多分突破されるから、出口で待機して」のようにヘラヘラしております。(事前に避難させましょうか、という伏線を張ってはいますが、商店街が完全に無人というのは無理がある)例えば三話では、櫓から落ちる女優が死にそうな時も「はいはい、窒素で消火してね」とどこ吹く風です。
特車二課に求めていたプロフェッショナリズム
わかります、ゆうきまさみ特有のシニカルな笑いというか、超人然とした佇まいというか、熱血とは違うクールさを表現したいというのも。でも僕の中で「冷笑」と「冷静」は違います。
原作の泉も篠原もチャランポラン風にはしていますが、人の命がかかっている時には、真っ当な必死さを見せていた筈です。ですが、今作は日常パートでおちゃらけ、人が死にそうなパートでもおちゃらけ、というテイストなので、どうしても特車二課の「ヘラヘラしてるけど、全員プロフェッショナルでやる時はやるんだぜ!」という格好良さが見えてきませんでした。全員ずーっと死のない世界でコントしてる印象です。
死というリアリティラインを取っ払った、コメディ特化で進めるのであれば、わざわざパトレイバーじゃなくていいんじゃないかなぁ。3話分で判断が早い、と言われるかもしれませんが、逆に3話分で少しはその破片を見せないと、これだけ娯楽が溢れている時代、コアなファン以外は次に繋がらず脱落してしまいます。ほんの少しだけ「組織編成の会議があった」という匂わせはあるのですが、うーん、シリアス展開の伏線としては、弱いー!
熱いファン層とイチ作品としての理想
僕の行きつけの劇場はレイトショーだといつもガラガラですが、今日は40〜50代位の男性でパンパンでした。それだけこのIPが愛されているという証左ですし、零式や原作キャラが出てきたり、エンドロール後の人狼などをオマージュしたサービスムービーには拍手が起きるほどだったので、ファンにとっては良い出来だったのだと思います。
なので、そこに向けた作りなのであれば、僕の感想は全て的外れなのでしょう。でも古参に向けたファンサービスだけでいいのかな、とも思います。パトレイバーを知ってる人であれ知らない人であれ、イチ作品として夢中に面白い、だったらいいのにな、と理想論を期待してしまう。ガンダムをほとんど知らない僕でも「ハサウェイ」は一つの作品として、すごく刺さったのだから。
予算の関係、時勢に合わせた作り、古参と新規のバランス、様々な葛藤があった結果の判断なのだろうな、と思います。僕には合わなかった、というだけの話で、劇場のリアクションを見るに好意的に観られていると思います。
はてさて、次作は来年とのことでかなり間は開いてしまいますが、どうしたものか。また映画館で見るか悩みどころです。次はグググーっと引き込まれる大きな縦軸を期待しております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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