【ドールハウス】
- 鑑賞日 2025/06/18
- 公開年 2025
- 監督 矢口史靖
- 脚本 矢口史靖
- キャスト 長澤まさみ、瀬戸康史、田中哲司、池村碧彩、本田都々花、今野浩喜、西田尚美、品川徹、安田顕、風吹ジュン
- あらすじ 5歳で亡くなった娘にそっくりな人形を骨董市で見つけた夫婦。人形に癒やしを求める妻と、奇妙な出来事に見舞われる夫。一家に次々と起こる恐怖の謎を解き明かす、ミステリーホラーです。
- ジャンル 日本映画 ミステリー ホラー
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り 〇(×、△、〇、◎の四段階)
感想
『ウォーターボーイズ』の矢口史靖監督が手掛ける初の本格ホラー(?)ポップな予告編に隠された、あまりに罪深い「予告詐欺」と、ジャパニーズホラーの新境地!
矢口監督だから大丈夫、なんて大嘘‼
「レイトショーだけど、だーいじょうぶだって! あの『ウォーターボーイズ』や『ハッピーフライト』の矢口監督だぜ?」なんて、自分に言い聞かせながら劇場に入った当時の僕を、全力で止めたい。
主題歌はえらくポップだし、予告編のテイストも軽いし、どうせ二重人格オチとかの「ホラーに見せかけたミステリー」だろうと高を括っていたんです。ところがどっこい、スクリーンから溢れ出してきたのは、ゴッリゴリの心霊ホラーでした。
ああぁぁぁ! 帰り道が怖すぎるよぉぉぉ! 完全に予告に騙されたぁぁァ‼
「科学」を嘲笑う、逃げ場なしの心霊ホラー
今回の予告詐欺は、本当に罪深いですよ。だって「ドールミステリー」なんて銘打たれて、予告では日本人形をMRIスキャナにかけたりしていたじゃないですか。あんなの見せられたら、誰だって科学的に呪いを解明していくミステリーだと思うじゃないですか。
ところが蓋を開けてみれば、コメディ要素なんて微塵もない、おふざけ無しの超シリアスな作風。子供が亡くなるシーンの描写もかなり重苦しく、母親役を演じた長澤まさみさんのメンタルが心配になってしまうほど、観ているこちらの心まで同調して削られていきました。
夫役の瀬戸康史さんの役作りも、これ以上ないほど最適でしたね。優しさはあるけれど、どこか頼りない雰囲気。そんな普通の夫婦が、全力で襲いかかってくる怪奇に立ち向かわざるを得なくなるという図式が、余計に恐怖を煽るんです。
「タイトルバックが完璧シリーズ」への追加決定
演出面で特筆すべきは、やはりあの「タイトルバック」でしょう。
洗濯機の中からの視点で、長澤まさみさんが絶叫する姿を捉え、そこからタイトルがドォォーン! と出る。はい、「タイトルバックが完璧シリーズ」への追加が即決しました。あの叫びの表情一つで、彼女が「此岸(しがん)」から「彼岸(ひがん)」へ行ってしまったことが伝わってくるのが凄まじい。コチラガワから現世を覗き込むあの暗い丸が本当に恐ろしい。
ただグロいものを見せれば怖いというわけではなく、少女の遺体そのものは映さずに、長澤さんの絶叫だけで観客の想像力をマックスまで引き出し、最高レベルの恐怖を体験させる。レーティングもクリアしつつ、これほど効果的な演出ができるなんて、やはり矢口監督の手腕は恐ろしいです。今後は監督の名前だけで油断するのは絶対にやめようと心に誓いました。
M3GAN×アナベル×Jホラーの融合
今作の恐怖は、非常にハイブリッドな印象を受けました。
『M3GAN/ミーガン』を彷彿とさせる素早い動き、そして『アナベル』のような強力な呪いの力。そこに日本映画特有の、湿り気があってベタっした「ジャパニーズホラー」の質感が上手にミックスされています。個人的には『リング』のような耽美さがもう少しあれば完璧でしたが、『ほの暗い水の底から』に通じるような、切なさが溢れる物語の着地点はとても好みでした。
また、ホラー映画では珍しく、祖母まで登場して呪いのフィールドが広がっていくのも興味深かったです。閉鎖的な空間も怖いですが、『来る』のように人間関係が広がるほど呪いの規模も大きくなっていく絶望感もたまらないですよね。
そして何より、僕がトラウマ級にビビったのが「定点カメラ」の映像です。定点カメラホラー、本当に苦手なんですよ…
見守りカメラや監視カメラの画角って、普通の映画の画角と違って、背景にスタッフがいる気配が一切排除されているから本当に怖いんです。あの無機質な映像の中で何かが動く恐怖……『パラノーマル・アクティビティ』以来トラウマになっています。
「ドールハウス」というタイトルの本当の意味
ずっと「日本人形の呪い」にばかりフォーカスして観ていたけれど、最後にタイトルの「ドールハウス」という言葉が持つ、本当の意味が突きつけられた時のあの寒気。余韻の持続が素晴らしく、劇場を出た後も脳裏に残り続けます。
切ない恐怖と、逃げ場のない絶望。矢口監督の新たな一面に、完膚なきまでに叩きのめされた一晩でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆さんの感想も、ぜひお聞かせください!


コメント