【トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦】
- 鑑賞日 2025/03/04
- 公開年 2025
- 監督 ソイ・チェン
- 脚本 歐健兒、陳大利
- キャスト ルイス・クー、サモ・ハン、リッチー・レン、レイモンド・ラム、テレンス・ラウ、フィリップ・ン、トニー・ウー、ジャーマン・チョン
- あらすじ 1980年代の香港、無法地帯として知られる「九龍城砦」に逃げ込んだ青年・チャンは、そこで出会った仲間たちと深い友情を育む。しかし、九龍城砦を巡る激しい抗争に巻き込まれ、仲間と共に命を懸けた戦いに挑むことになる。
- ジャンル 香港映画 アクション クライム
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り ◎(×、△、〇、◎の四段階)
感想
こんなタイトルで、これほど感動するとは思わないじゃないですか?
漫画『BLAM!』さながらの巨大な建造帯が実際に存在していたことが信じられませんし、軍艦島のような栄枯衰退の哀愁がたまりません。登場人物は全員が強く、全員が格好良く、そして、何よりご飯がめちゃくちゃ美味しそう!
とにかく熱く、熱すぎた映画だったので、レイトショー終わり、雪が降る帰り道にピッタリの映画でした。
圧倒的な九龍城砦の存在感
この映画には数えきれないほどの魅力がたくさんありますが、やはり一番の要素は九龍城砦の描写ではないでしょうか。このセットにかなりの労力をかけ、約10億円という多額の予算を投じて相当な再現度で作った結果、最強の哀愁が出来上がりました。アクションもドラマも大事ですが、最も力を入れるべきは九龍城砦だと制作陣は十二分にわかっていたようです。
観終わったあとも、心にぽっかりと穴が空いたような、名作を見た後にまれに感じる「作品から抜け出せないあの感覚」に陥ります。それはすべて、今はなき九龍城砦の存在を完全再現してくれた作用が大きく、その効果は抜群で、上映中ずっとスクリーンにくぎ付けになりました。
なぜそんなに九龍城砦の景色に夢中になるのかは、以前『九龍ジェネリックロマンス』の感想でも語っていますので、機会があればそちらも読んでみてください。
香港という存在と、九龍という今はなきかつての熱、それらの要素と低空を飛ぶジャンボジェット機。そのすべてが若者たちの悲哀や青春、そしてドラマにとても有機的に絡み合います。本当に最高です。ただ泣けるというわけではなく、観客の誰もが持つかつての郷愁にビッシビシと刺さったのでした。
胸を打つドラマと見事な構成
ドラマの部分で言えば、名作の共通項として『天空の城ラピュタ』などで顕著な、見終わったあとに冒頭を思い出した時、「こんなに遠くに来たんだな」と感じる要素があります。ただ舞台や時代をコロコロと変えればそうなるわけではありませんし、未熟な作り手が無理やりそれを狙うと、単に要素を詰め込みすぎただけの映画になってしまいます。
今作はその点も見事でした。映画自体が大きく二部構成になっていて、一度時間が飛ぶからこそ成立する、長大な叙事詩を読んだような満足感。上映時間内でドラマと絡めて違和感なくそれを表現することは本当に難しいと思います。僕は、「何年後…」というテロップが上手く機能している映画をこれまでほとんど見たことがありません。
終わった後に、映画の冒頭で笑い合っていた主人公たちの風景が胸の内に次々と飛来して、とても切なくなります。これこそが良い映画の証で、今はなき九龍城砦の景色とともに、若者たちの青春の黄昏がずっと忘れられません。
フィクションとリアルが融合する極上アクション
そして、それだけ完璧な土台を作った上でのアクションよ!その素晴らしさは言わずもがな、ジャッキー・チェンの心を受け継いだアクション監督の谷垣健治さんが担当しており、『るろうに剣心』も『幽☆遊☆白書』も、彼がいなければ今の素晴らしい完成度はなかったと言われております。
今作も、九龍城砦の上下空間を見事に生かしたアクションの数々に、痺れまくりました。何より一番思い切ったなー!と感動したのは、格好をつけて渋めのリアルアクションにしなかったことです。まさに漫画的な、派手でイケイケな動きで魅せてくれます。ともすれば荒唐無稽に見えそうな所も、谷垣さんのフィクションとリアルの絶妙なバランスによって、非常に映えるアクションに仕上がっています。上映中ずーっと気持ち良く、リアル寄りにしなかったことで、観客の層を大分と広げられたのではないかと思います。
魅力溢れる好男子たちと生命力の源
続いて配役ですが、これがとんでもないイケメンパラダイスです。イケメンという言葉で表現するのは軽々しくて申し訳ないくらい、漫画からそのまま出てきたような圧倒的なビジュアルを誇ります。おそらく静止画で観ると普通の格好いいお兄ちゃんに見えますが、ここに九龍の哀愁とキレキレのアクションが加わることで、この世のものとは思えない美男子に変わります。
同じ男である僕が見ても惚れ惚れする、好男子たちでした。彼ら全員に幸せになって欲しい、と思わせてれる没入感と、そして、あからさまな商業狙いのBL風味などにしていない点も素晴らしかったです。
さらに、何よりも忘れてはならないのが「飯(メシ)」!「ご飯」でも「食事」でもなく、まさに「メシ!」と呼ぶべき描写がとてつもない熱量を持っています。映画でも漫画でも小説でも、飯が美味しそうな作品は間違いなく名作。ギトギトで油ギッシュなメシが、そのまま九龍城砦のエネルギーの具現化になっています。ここを上手に描けなければ、九龍に生きる人々の飽くなき生命力は表現できません。
「生きることは食べるということ」その命題をしっかりと理解し、余すことなく表現できており、本当に美味しそうな「メシ」の数々でした。それをかっ食らう人々の演技も含め、素晴らしい描写です。
ドキュメンタリー的な余韻に浸る
クライマックスにおいて、あれだけ漫画的なバトルにしておきながら、スタッフロールでは九龍城砦の実際の写真を流し、ドキュメンタリー的な余韻に浸らせてくれて、本当に憎い演出です。憎すぎます。
九龍城砦という場所は、もうこの世界には存在しません。けれど、この映画を観た僕たちの心の中には、あの熱気やメシの匂い、そして不器用で真っ直ぐな男たちの生き様が、確かな手触りを持って残り続けます。
かつての香港が持っていた混沌としたエネルギーが、今の僕たちに「明日を生きろ」と背中を押してくれたような気がします。これこそが、映画という魔法が僕たちに見せてくれる最高の景色でした。
2025年、間違いなくベスト級の一作です!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆さんの感想も、ぜひお聞かせください!

コメント