【私がビーバーになる時】
- 鑑賞日 2026/03/18
- 公開年 2026
- 監督 ダニエル・チョン
- 脚本 ジェシー・アンドリューズ
- キャスト 芳根京子(メイベル)、小手伸也(キング・ジョージ)、宮田俊哉(ローフ)、渡部篤郎(ジェリー市長)、宮野真守(トム)、かなで(エレン)
- あらすじ 人間の意識を動物ロボットに転送し、本物の動物と会話ができる技術が開発された世界。動物好きの女子大生メイベルは、ビーバー型ロボットに意識を転送して憧れの動物界へ潜入する。しかし、そこで彼女が耳にしたのは、人間界を揺るがす動物たちのとんでもない計画だった。メイベルは人間と動物の衝突を防ぐため、個性豊かなビーバーたちと協力して極秘ミッションに挑むことになる。
- ジャンル アメリカアニメ、ディズニー、アドベンチャー、ファンタジー。
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り △(×、△、〇、◎の四段階)
感想
大絶賛派と大否定派、両極端になりそうな映画でしたね。なぜそうなってしまうのか言語化が難しいですが、自然保護も破壊も簡単に正誤を判断できない僕のようなおバカさんには、今作の主張には今ひとつ共感できずに終わってしまいました。
今回の作品、伝えたいテーマ自体はよく分かるんです。あらゆる種族が融和し、手を取り合うこと。今の不安定な国際情勢にはぴったりの題材だと思います。ただ、その巨大なテーマを扱うには、脚本があまりに行き当たりばったりすぎて、ちょっと付いていけませんでした。
物語に行き当たりばったりな部分があっても、それがドライブ感に繋がればいいのですが、今作は入れ込む要素が多すぎて、それらがとっちらかったままの印象。結局、軸となる骨子が見えないまま、物語が迷子になってしまったように見えました。
偽善と理想の間で揺れるプロット
動物の弱肉強食というテーマを扱うのは、どうしても偽善と理想がぶつかり合うので、相当プロットを練らないと説得力が出ません。今作は問題提起もキャラクターの哲学も、そして掘り下げや着地点も、すべてが浅く感じてしまいました。
以前の『エリオ』もそうでしたが、今作もプロローグが丁寧で名作の予感しかしなかっただけに、どうしてこうなってしまったのか。同じテーマを描いた『野生の島のロズ』の足元にも及ばないというのが、僕の正直な感想です。
笑いのツボも、残念ながらことごとく合いませんでした。これは吹き替えによる改変のせいかもしれないので、1日1回でもいいから字幕版の上映をしてほしいなと思います。エンドロールで唐突に流れるパフィーも、大人の事情が見えすぎてしまって、少し冷めてしまいましたね。
感情移入を拒む「食い合わせ」の悪さ
原語版が分からないので断定はできませんが、今回いろいろな場面で感情移入しづらかったのは、吹き替え版の表現も原因の一つかもしれません。特に大事なビーバーとの和解シーンも、セリフが少し無理矢理な感じで、心に刺さりにくかったです。
ミュージカル部分にしても、キャラクターの動きや音ハメがそれほど気持ちよく感じず、動物たちの動きも、ピクサーならもっと説得力を持って描けたはずなのに、ステレオタイプでコミカルな動きばかりが目立ち、既視感が強かったです。
後半、虫の王が人間側に転生する展開には、逆に行ききっていて笑ってしまいました。それならそれで、全編をあのくらい荒唐無稽なテイストで作ってくれれば割り切れるのに、中途半端にエコロジーやヒューマニズムを入れるものだから、非常に食い合わせが悪く感じてしまいます。
主人公が日系である設定についても、日本だけがこの国際情勢を仲介できる、という希望が含まれているのでしょうか(笑)。最後の山火事を消す展開も『ロズ』と全く一緒で、そのオチに向けて流れが無理やり組み込まれている様な、最終的にそれで人間と和解するというのも、無理やり結果オーライがすぎて安直に感じてしまった…
救われない王子と、残された矛盾
過激な動物愛護にも繋がる主人公への批判が入っている点はとても良かったのですが、その着地点もどうしてもヌルく思える。彼女の起こした罪に対する贖罪のレベルも軽く、結局「虫は殺してもそこまで気にしなくてよい」という結論に見えてしまいます。
母を殺されて狂ってしまった王子は、最後は主人公がなんとしても救って欲しかった。あなたが母親を殺したのに敵対していかんとするか。彼の「いつも食われるだけの存在から脱却する」という主張も真っ当なのに、最後はあっさりコメディ調に食われて死ぬという救いのなさ。それが自然界の厳しさ、という意味合いなのはわかりますが、結局の所主人公が「自分が仲良くしたいと思う種族とだけ仲良くする」のでは、亡くなった祖母が伝えたかったテーマからもブレてしまっているように見えたのです。
プロローグが丁寧で情緒たっぷりに魅せてくれたからこそ、祖母との約束という一点突破で主人公の暴走をギリギリ許容できましたが、あれがなかったら相当感情移入が厳しいキャラクターになっていたと思います。
素晴らしかった音響と質感
良かった点を挙げるなら、何といってもモフモフの質感です。ここは流石のクオリティでした。それと、音響も本当に素晴らしかったです。木々のざわめきなどの細やかな音は心に響きましたし、特に最初の祖母とのシークエンスは完璧で、音響の良さも相まって泣きそうになりました。
鮫の目が可愛いデフォルメから真っ黒な目に変わる演出も、めちゃくちゃ怖くて、そこも凄く良かったですね。
主人公が怒りっぽい性格で、それを祖母が自然に耳を傾けることで落ち着かせるというプロットも本来は素晴らしいものです。ただ、それが物語の中で上手く機能していなかったように感じました。その怒りっぽさが一種の障害だとするのなら、それを個性として昇華させたり、その特性でしか解決できない問題を描いたりしなければ、ただの舞台装置で終わってしまいます。
種族間の共生という超難しいテーマ
冒頭、亀を水槽から逃がそうとする主人公に、先生が「彼は安全な場所で幸せかもしれない」と諭す場面があります。結局、最後まで主人公はその問いに対する答えを得られないまま終わってしまったように見えます。それがこの物語全体に通じる僕の不信感です。
動物たちの本能や生き様は多種多様なのに、安易でファンタジーな一元化に着地してしまうのはいかがなものでしょうか。狂うなら狂う、真摯に描くなら真摯に描く、と特化してほしかったですが、残念ながら僕には合いませんでした。次の『トイ・ストーリー』最新作も期待外れだったら、いよいよピクサー作品を映画館で観るのが怖くなってしまいそうです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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