【木挽町のあだ討ち】
- 鑑賞日 2026/03/05
- 公開年 2026
- 監督 源孝志
- 脚本 源孝志
- キャスト 柄本佑(加瀬総一郎)、長尾謙杜(伊納菊之助)、渡辺謙(篠田金治)、北村一輝(作兵衛)、瀬戸康史(一八)、滝藤賢一(相良与三郎)、沢口靖子(伊納たえ)
- あらすじ 江戸の芝居小屋「森田座」の近くで、美しい若衆・菊之助が父の仇討ちを成し遂げた。その1年半後、菊之助の縁者を名乗る侍・加瀬総一郎が事件の顛末を聞くために森田座を訪れる。小屋の関係者たちの証言から、華やかな仇討ちの裏に隠された驚くべき真実が浮かび上がっていく。永井紗耶子による直木賞・山本周五郎賞受賞作を映画化した、極上のミステリー時代劇。
- ジャンル 日本映画 時代劇 ドラマ ミステリー
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り 〇(×、△、〇、◎の四段階)
感想
江戸の情緒とミステリーが絶妙に混ざり合った、直木賞受賞作の映画化。
いやー、面白かった!まさに勧善懲悪の爽やか時代劇。最近はこういう、観終わったあとにスカッとできる作品がじわじわと増えてくれている気がします。
こういうのがもっと一般に馴染み深くなると嬉しいですよね。かつて『武士の一分』あたりの時期に藤沢周平さん原作の時代劇映画がぐっと増えた印象がありますが、最近は落ち着いていて、やはりお金がかかるから制作も大変なのでしょうね。
正直なところ、予告編を観た時はそこまで惹かれなかったのですが、いざ本編を観終わってみると「なるほど、この内容を伝えるにはあの予告くらいしかやりようがないよなぁ」と納得しました。
日本の歴史コンテンツに世界が注目している時代ですので、このタイミングでもっと時代劇に脚光が浴びればいいなと思います。
役者陣の「顔」が語る、圧倒的な説得力
今作はとにかく、役者さんたちの演技がとても楽しかったです。
特に、北村一輝さん。スクリーンに出てきた瞬間「わぁ!猫侍だ!」とキャッキャしてましたが、全体の演技力が凄すぎる。特に泣きの演技は素晴らしかったです。Netflixの『地面師たち』の時もそうでしたが、北村さんは「顔芸」一つで観客に凄まじい説得力を持たせられる、本当に貴重な役者さんですよね。
そこに加えて、『侍タイムスリッパー』で馬之助役を演じていた山口馬木也さんをまたスクリーンで観られたのが最高に嬉しい!下っ端侍から大名に出世なされて良かった良かった。この方もまた「顔」の説得力が凄まじいので、北村さんと二人が同じ画面に収まるシークエンスは、どれも見応えたっぷりでした。
また、飄々としていた柄本佑さんが「久々に腹が立った、そいつは、どこのどいつだい」と口にした瞬間、一瞬で真顔になり黒目から光が消えるシーン……あそこは痺れましたねぇ。
小道具屋さんの奥方様が「どこかで観たことあるよなぁ」とずっと気になっていたのですが、スタッフロールでイモトアヤコさんだと判明してスッキリ!眉毛が普通だったので、僕の脳が認知しきれませんでした(笑)。
そして、大御所渡辺謙さん。かつての婚約者と再会した時の、あの所在なくて気まずい感じ。それでいて頼りにされてどこか嬉しいという複雑な感情を、あの短い時間で表現し、二人が過ごした長い年月を一気に遡らせるのは流石の一言です。映画『国宝』に続き、やはりこの人が出ているというだけで得も言われぬ安心感があります。
太秦映画村が映し出す、江戸のリアリティ
今回、ロケ地として僕が幼い頃によく遊びに行っていた太秦映画村のセットが使われていたのも胸熱でした。久々にここのセットを使った時代劇を観ましたが、やっぱり凄いですね。子供の頃はその凄さが全くわかっていなかったけれど、いざスクリーンで見ると、まあ画面が映えること映えること!
今の時代、特に予算が限られる時代劇において、ゼロから作る必要のない歴史あるセットが存在するのは本当に貴重なこと。これからも大事にしていかなければならない場所だと改めて感じました。
ミステリーを超えた、人間の肉付けの妙
物語としては、ミステリー部分にもう一捻り欲しかったという思いも正直あります。ただ、これはあくまでサスペンスではなく、武士の生き方や舞台役者の人情を描く話。そう考えると、このくらいの塩梅がベストなのかもしれません。トリックやどんでん返しで魅せる類の作品ではありませんしね。
特筆すべきは、派手なアクションや凄惨な死の描写がないにもかかわらず、最後まで飽きさせずに見せてしまう力です。もちろん先が気になるミステリー要素もありますが、それ以上に登場人物一人ひとりの肉付けが丁寧で、観ている僕らが彼らを好きになれるよう設計されている。嫌味なキャラは一人だけで、あとは皆、気持ちの良い江戸っ子たち。そのシリアス度のバランスも絶妙です。
その分、映画館じゃなくて「家でこたつに入りながら観ても十分楽しめる内容かも」と言われれば確かにそうかもしれませんが、それも含めて本作の良さでしょう。
年を経てわかる時代劇の楽しさ
時代劇はそこまで詳しく観てきたわけではありませんが、若い頃には感じなかった面白さが、年を取るにつれて何となくわかってきた気がします。他国の歴史物と違い、やはり自分のルーツである時代の物語は親近感が湧くし、感情移入もしやすい。「粋」や「人情」といった日本特有の価値観にも、素直に同調できますから。
江戸っ子らしくさらっと気軽に見れて、最後はスカッと気持ちよく終われる。これはぜひ、落語でも聴いてみたい!大変素敵な時代劇でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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