【俺は死んじまったぜ】
- 鑑賞日 2025/02/26
- 公開年 2024
- 監督 長久允
- 脚本 長久允 串田壮史
- キャスト 柳楽優弥、川栄李奈
- あらすじ 無為に人生をやり過ごしている売れないホスト・桜田和彦がある日突然死んでしまい、同じく成仏できずにいる幽霊たちと一つ屋根の下で人生を見つめ直し、人知れず抱えていた後悔と向き合っていき、失われていた人間性を取り戻していく姿を描く
- ジャンル 日本ドラマ,コメディ,ミステリー
- 鑑賞媒体 アマゾンプライムビデオ
- お気に入り △(×、△、〇、◎の四段階)
感想
WOWOWのオリジナルドラマ『オレは死んじまったゼ!』を視聴しましたが、総じてつかみどころのない、なんとも言えない不思議なドラマでした。
全体的にとても軽快なテンポで進んでいくため、サクサク見れてサクサク終わり、そしてサクサク忘れてしまうという、ある意味でなんとも贅沢な作りの作品です。
柳楽優弥の脱力感と前衛的な演出のバランス
主演を務める柳楽優弥さんは相変わらず素晴らしく、僕自身も大好きな役者さんです。独特のすごみのある演技力は、今作でもその魅力が存分に発揮されていました。
彼が演じる主人公は、場末の底辺ホストという、生前は決して褒められた生き方をしていなかったキャラクターです。しかし、柳楽さんが演じることで、どこか憎めない愛嬌と絶妙な脱力感が生まれていました。
「死」という人生の強制終了を突きつけられたにもかかわらず、悲壮感を漂わせずにどこかポジティブな佇まいを崩さないため、観ているこちらまで元気をもらえるような不思議な主人公像を作り上げています。ただ、その一方で彼自身のバックボーンがイマイチ伝わらないまま終わってしまったのは、とてももったいなかったです。
また、今作は長久允監督独自の尖った演出スタイルが非常に際立っています。そのサブカル的で前衛的な表現は、僕には少し「内輪受け」や「おしゃれの押し売り」のように感じられてしまい、作品の世界観に冷めてしまいました。独特なカメラワークや画面の色彩、舞台のような照明、さらには不協和音的な不穏な効果音などが過剰に主張しているように見える瞬間もあり、ストーリーそのものに純粋に没頭することが難しかったです。
テーマの重さとシュールな世界観のギャップ
さらに、ゆるいコメディタッチの割に、扱っているテーマ(いじめや孤独)がかなり重すぎるところがあります。作中では女子高生のいじめ問題や、登場人物たちがそれぞれ抱える生前の未練、そして孤独死のリアルな切なさなど、生々しく重苦しいエピソードが随所に挟まれていました。
そのため、コメディとしての軽さとシリアスなテーマとのトーンのギャップに戸惑う部分が少なからずあります。その結果として、実力派キャストの演技がシュールな世界観の犠牲になってしまっているように感じました。
柳楽優弥さんのような、確かな実力を持つ演技派の役者を揃えているにもかかわらず、監督の描くコント風の間や、過度に設定されたキャラクター像に役者たちが縛られているように見えてしまう。そのため、このシュールな笑いのツボが上手く合わなかった僕みたいな観客にとっては、オーバーアクションや独特な台詞回しが、観ていて少し寒く感じられてしまうという側面もありました。
その時間を確かに楽しむための贅沢な作品
物語がなんとなく伝えたいテーマも分かりますし、それぞれの幽霊たちが未練を昇華していくプロセスも、やりたいことはしっかりと伝わってきます。しかし、いかんせん全ての要素が少し薄味すぎるというか、物足りなさが残ってしまうのも事実です。
色々と気になるところはありましたが、それでも観ている間の時間は心地よく流れていきました。ですので、今作は僕の中で「記憶には残らないが、その時間は確かに楽しかったシリーズ」の一本とさせていただきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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上映後ロビー