【片思い世界】
- 鑑賞日 2025/04/10
- 公開年 2025
- 監督 土井裕泰
- 脚本 坂元 裕二
- キャスト 広瀬すず、杉咲花、清原果耶
- あらすじ 相楽美咲、片石優花、阿澄さくらの3人は、東京の片隅に建つ古い一軒家で一緒に暮らしている。それぞれ仕事、学校、アルバイトへ毎日出かけていき、帰ってきたら3人で一緒に晩ごはんを食べる。リビングでおしゃべりをして、同じ寝室で眠り、朝になったら一緒に歯磨きをする。家族でも同級生でもない彼女たちだったが、お互いのことを思いあいながら、楽しく気ままな3人だけの日々を過ごしている。もう12年、ある理由によって強い絆で結ばれてきた3人には、それぞれが抱える“片思い”があった……。
- ジャンル 日本映画 ドラマ ファンタジー
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り △(×、△、〇、◎の四段階)
感想
坂元裕二さんの脚本は、僕の中で当たり外れが激しすぎて、毎度観るのが怖い(泣)1stキスや今作のような、ワンアイディアに理屈や伏線をこねくり回したお話よりも、花束みたいな~や怪物の様な、地に足ついた地続きの日常の中の皮肉を描いた物語の方が、僕にはぶっ刺さるみたいです。圧倒的に脚本に乗っかってる体重が違う気がしました。
豪華なキャスティングと設定への違和感
どうも、僕は死をテーマにしたものをエモく描く事に拒否感を抱きがちのようです。通り魔に子供が殺される、という相当な重い題材に対して、幽霊として綺麗な女優さん三人配置して、切なくも美しいエモエモな絵面を見せよう、という設定にだいぶ違和感を覚えてしまいました。
この三人をキャスティングできた時点で勝ち!みたいな商業的な感覚が透けて見えすぎたというか、それが逆にパワーバランスを取るのが大変で物語の足を引っ張っていた印象です。こういうテーマを伝えたい!といった熱量よりも、この三人が決まった!脚本つくるか!のように感じてしまいました。
ただ、死後も成仏せずに幽霊として成長し続ける、という設定は、実際自分の周りで亡くなった方もこうだったらいいな、という希望を与える同時に、こんなのは地獄だろう、そうあって欲しくない、とも思える余白を与えてくれるし、それくらい幽霊達が生きる、俗世と断絶された箱庭は、彼女たちの切なさと残された人々の悲しみなどを描くのに物凄く魅力的な設定だったと思います。あんな悲劇的な死を迎えてしまったから尚更に。
演出のバランスとSF的リアリティ
彼女たちが明るく楽しく毎日を過ごせば過ごすほど、観客は相対して切なく悲しくなる……という効果を狙ったのだと思うのですが、その絵作りが可愛らしくファッション的で懲り固められすぎてて、「オジサンが考えた仲良し女子三人組」みたいな描写が随所から感じられて痛々しく思ってしまいました。演技指導が全体的にオーバーというか、寒い!となってしまったのです。
通り魔事件という残虐性と、作品全体の空気の軽さが個人的に最後まで相容れなかった。どうしてもその死因にしないと駄目だったのか。火事とか事故とか、もうちょっと他人の悪意ではない亡くなり方だったら、彼女たちの過ごす日々のテイストにもっと感情移入ができたかもしれません。横浜流星さんだけは、まとう空気が死の重さと見合ってた気がしました。
一方で、幽霊の世界が、素粒子によって各々レイヤーが違う、とか、成長だけは続く、とかの映画内リアリティに関して僕はそこまで拘りは無くて、「そういうものなのだな」と抵抗なく入り込めました。
SFとしては、あまり今まで観た事のない設定で興味深かったし、四次元五次元の概念が言語化されてきた昨今だから、こういうレイヤーの違う世界があってもおかしくないよな、という説得力がありました。二つの隔絶された世界で、一方通行な想いを「片思い世界」というタイトルにしたのも秀逸でしたね。
問題はそういった細々とした設定よりも、どれだけ大きく感情を揺さぶってくれるか、を僕は重視するものですから、そこがかなり物足りなかったです。
坂元脚本における「死」の重さと形式
僕は「大豆田とわ子と三人の元夫」「カルテット」「怪物」「花束みたいな恋をした」がとても好きなので坂元脚本のファンといっても差し支えないと思います。ハッピーエンドのその先、を描き続けるその視点が大好きなのです。
翻って本年の片思い世界とファーストキス、その二つにハマれなかった理由を分析すると、前途作品と圧倒的に違うのは、作品に「死」を入れてるかどうかだと気付きました。彼が描くシニカルな会話劇や突き刺さる世界観は大好きなのだけど、そこに死という概念が入ると一気にリアリティの天秤が崩れて、物語が軽くなってしまう。
ドラマでは長い補完時間があるからまだ染みるのだけど、映画ではそこを説明するのに圧倒的に尺が足りない。人物への感情移入より世界観や設定の表現に力を割いている印象でした。
今回それがわかって勉強になって良かった。今作は劇場でガツっと超集中して観るよりは、お家で甘いものとコーヒを飲みながらまったり鑑賞する方があっているかな、と感じました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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