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【アニメレビュー】「ミニオンズ&モンスターズ」

アニメ

1920年代ハリウッドへの愛とミニオンの自我を描く

  • 鑑賞日 2026/08/07
  • 公開年 2026
  • 監督 ピエール・コフィン
  • 脚本 ブライアン・リンチ、ピエール・コフィン
  • キャスト アリソン・ジャネイ、クリストフ・ヴァルツ、ジェフ・ブリッジス、ジェシー・アイゼンバーグ、ゾーイ・ドゥイッチ、ボビー・モイニハン、フィル・ラマール、トレイ・パーカー、ピエール・コフィン
  • あらすじ 最強最悪のボスを求めて旅を続けるミニオンズが、映画の都ハリウッドへ漂着します。撮影スタジオに入り込んだ彼らは、自分たちでモンスター映画の製作を思い立ち、本物のモンスターを呼び出そうと試みます。しかし召喚をきっかけに超危険なモンスターたちが街へ放たれ、史上最大級の大騒動が巻き起こります。
  • ジャンル アメリカアニメ,コメディ,アクション,ファンタジー
  • 鑑賞媒体 映画館(吹き替え版)
  • お気に入り △(×、△、〇、◎の四段階)

感想

見終わった時の感想としては、完璧な前半から後半のドタバタ劇への高低差ありすぎて、耳がキーンなるわ!でした…。

監督や脚本家が途中で変わったのかと思うほどに、中盤まで夢中に楽しんでいた物語が、どうしてこんな展開にと戸惑う着地点になってしまったのです。明らかに意図されたトーンブレイクで、無理やり好意的に解釈するとしたら、「ピクサーやディズニーみたいに、この作品に深いテーマとか求めてじゃねーよ!ミニオンズってのはこういう映画なんだよ、バーカ!!」という監督からのアンチテーゼだったのでしょうか。

残念ながらお気に入り度としては△ですが、駄作という印象はなく、単純に監督の意図した演出が読み取れなかった気がします。

絶賛の前半、名作を確信させた完璧なストーリーテリング

まず大絶賛の前半ですが、開幕一発目、ユニバーサルロゴが登場する場面で、いつものミニオン達の「パパパ〜♪」が無いのか、寂しいな、と思っていたらそのロゴが一気に過去に遡ります。初めてユニバーサルの初代ロゴが見れてこの時点で胸熱でした。

ハリウッド創設時からのモノクロ記録映像にミニオン達が混じっているシークエンスは、思わず前のめりになってしまいそうなほど、「これは今までのドタバタミニオンズとは違うぞ」と、制作陣の気合にワクワクが止まらなかったのです。

続くハリウッドミュージアムのツアーシーンで、ジョージ・ルーカスやキアヌ・リーブスが出てくるメタギャグもとても楽しい。そういう映画ファンの心をくすぐる場面のあとに、現れるジェームズとヘンリーの銅像。なんと彼らがハリウッドの歴史を変えた立役者だという事で、そこから始まる昔話。この時点で先が気になりまくる完璧な導入です。

ドラマと完璧に連結したギャグとアクション

ミニオンズの生い立ちから「最強最悪のビッグ・ボス」を探し続けるという彼らの本能の説明、これらが大変にテンポよく描かれ、なおかつ、その物語に付随するギャグのセンスもキレッキレで、思わず劇場内で何度も噴き出してしまいました。

ただ、同じギャグでも、後半部分はほとんど笑えなかったのですが、自分なりに何故かを分析してみた所、前半のサイクロプスや魔法使いとの絡みから生じるギャグは、「ミニオンズの無邪気な行動によって、意図せず悪者が破滅する」という「ドラマに連結している笑い」だから面白いのだと思いました。ワチャワチャしながら気づいたらかなり残酷にビッグ・ボス達を殺害してる(無意識に世界を救っている)その対比が滅茶苦茶笑えるのですね。

その後の暴走列車のシークエンスも最高です。ノンストップでアクションとギャグのオンパレードが続き、そこにプラス、数々の古典名画のオマージュがぶち込まれるのだからたまりません。劇伴も最高で、よくあるハリウッド的BGMではなく、女性の「フッフッフ〜♪」というハミングが入るちょっとシュールな音楽。それがミニオンズ達のハチャメチャな動きとベストマッチなのです。

先ほどの法則と同様にここのギャグも、全員で列車を体重移動して市民を避けたりと、「そこは助けるんかい(笑)」という、ミニオンズの憎めない性(さが)の説明も兼ねてるので、とても笑えるしすごく微笑ましい。この列車暴走のシークエンスは近年稀に見る、笑えて夢中になれて爽快感抜群の、怒涛のアクションシーンでした。

「記号的な群体」から「自我」への脱却

そこからシームレスにジェームズが映画監督を目指すまでの流れも完璧で、そこに至るテンポも動機も全く文句のつけようがありません。ライバル企業であるワーナー・ブラザースを模した兄弟もシニカルで笑えるし、マックス監督のカメラを譲るシーンも実に感動的です。所々にチャップリンやバスター・キートンなどの古典名画を混ぜたオマージュも、あざとくなく超自然で、なんてお洒落なんだと舌を巻きました。まさかミニオンズでこんなセンチメンタルな気分にさせてくれるなんて、僥倖も僥倖です。

かように、冒頭からここに至るまで、脚本も演出も滅茶苦茶丁寧に作られており、だからこそ、ジェームズのクリエイターになりたい、という夢の発露に物凄い共感を覚える事ができました。「最強最悪のビッグ・ボスに仕える」という、群体の共通本能というべき習性に、真っ向から抗い夢に向かう。その夢を支える両脇二人のキャラクターの友情も美しく、台詞がないからこそ、より熱く彼らの気持ちが伝わってきます。

過去二作で「ハチャメチャな生き物」という記号でしかなかったミニオンズに、「自我を与える」という思い切りに、大変感動いたしました。だって、今後のシリーズを考えた時に、彼らには自我や個性が無い方が、キャラクター商法として息長く儲けられるハズですもの。

これらの大変丁寧な起承を経て、物語は転へ。この段階でもはや名作は確信しておりました。呼び出したグーミーも単純な悪役ではなかったし、よりドラマに深みを与えてくれそうです。ラストまでの展開も全く読めなくて、もうワクワクが止まりません!

…なのですが、ここから前半の丁寧さが嘘のように、物語の終わりまで、既視感タップリのハチャメチャドタバタ劇にトーンブレイクいたします。

後半のトーンブレイク、プロットの破綻と消えたドラマツルギー

後半の展開を大まかにプロットに書き起こしてみます。夢を応援してくれてると思っていた召喚モンスターのグーミーが実は黒幕で、騙されたジェームズ達は水木しげる先生の妖怪百目よろしく、最強最悪のモンスター「アイリーン」を誤って召喚してしまいます。だけども、ミニオンズが偶然出会った新たなボス「ドート」が超兵器でアイリーンを撃破。彼の正体は実は宇宙人だったのです。偶然エドがその一部始終を撮っていたフィルムで、ジェームズは見事オスカーを勝ち取る、という流れですね。

これでわかるように、前半であれだけ丁寧に動機として描かれたジェームズの映画監督の夢は、彼自身の力ではなく、全てがハチャメチャドタバタの「たまたま」で叶ってしまうのですね。同じ脚本家が作ったとは思えないほど、前半後半でトーンが違いすぎるのです。

「クトゥルフ神話」か「ご都合主義」か

新たなボス「ドート」の設定が謎だらけで、宇宙人のマネをしているちょっとイタい青年なのかと思っていたら、実は本当に宇宙人でした、という脈絡のないオチ。恐らくはクトゥルフ神話のコズミックホラーをなぞっているのだと思いますが、あちらは「身近で奇妙な物体や伝承を追っていたら、その正体は人類誕生より遥か昔に宇宙から飛来した邪神や異星生物だった」というのがメインプロットで、今作を同様のものとしてみるのはかなり無理があります。

ドートが実は宇宙人でミニオンズ達を超技術で助けてくれる、というのは、クトゥルフ神話が持つ「不条理で理不尽な真実の暴露」ではなく、ただの「ご都合主義」に見えてしまいました。ジェームス達の努力や葛藤を飛び越え、物語の外から突如現れた絶対的な存在(デウス・エクス・マキナ)が、超常的な力で事態を一方的に解決してしまう構図は、では、前半あのドラマは一体なんだったのかと疑問に思わざるを得ません。

映画監督としての夢を追うジェームズの軸と、ビッグ・ボスを探し続けて謎の男ドートと出会うディックの軸と、全く異なるベクトルが両軸同時進行するなんて、なんという高等テクニック!2つの物語がどんな形で邂逅するのか全く予想できないから、心の底からワクワクしていたのに、結果としては予定調和で既視感溢れる行き当たりばったりなテンプレートで、実に拍子抜けだったのです。

グーミーもせっかくグラデーションがあって深みのあるキャラクターとして描かれていたのに、後半は舞台装置的な悪役として扱われ、雑にアッサリと物語から退場してしまいます。彼の葛藤やドラマツルギーなども全て「し~らない!」とぶん投げられてしまった幕引きでした。

ギャグの質の変化、文脈のある笑いから単発コントへ

ではせめてこの作品の肝である、前半あれだけキレッキレだったギャグで、後半も笑わせてくれたかというと、ドラマの文脈と関係のない「絵面だけで笑わせる形態模写」ばかりの笑いになってしまっておりました。さすがにこの年で、表面上のコミカルな動きだけで笑うのは厳しいです。

例としてわかりやすいのが、スタッフロールにて「ふざけたミニオンズが魔法でグルーを全裸にする」といった、そのレベルのギャグが後半全体に散りばめられている感じです。ドラマと連動された、前半の計算高い笑いではなく、脈絡のない顔芸ばかりのギャグシーンは、なかなかに辛かったです。子供さんはちゃんとあれで笑ってくれるのかな。彼らが楽しんでくれるなら、大正解だと思いますけど。

結果として、映画の出来というよりも不可解な感触だけ残った印象です。本当にわからないのです。前半あれだけ丁寧に描かれていたジェームズのアイデンティティも回収されず、ではせめて、ミニオンズという共同体の絆で事態を解決するかと思いきや、宇宙人という物語の外枠の神的存在が都合の良い超兵器でアッサリ解決するという…僕の固定観念で凝り固まった古い脳みそでは全く持って理解不能でした。いや、元々ミニオンズってずっとそういう映画だったじゃん、て言われればそれまでなのですが。

ピクサー/ディズニーへの反骨精神?

あれだけ計算され尽くした前半を作れる制作陣が迷走したとはどうしても思えず、やはり何回考えても、「ミニオンズになに求めてんだよ、この頭でっかちが!なんでも整合性とか伏線があると思うなよ!これがミニオンズなんだよー!」という監督の、ディズニーなどに対するアンチテーゼなのかな、としか思えませんでした。

では、仮にそれが意図だったとして、だったら今作を楽しめたのかと言われるともちろんそんな事はなく、どうであれつまらない後半プロットだった事に変わりはありません。後半のトーンで映画を作るのであれば、前半も同様のトーンで作ってくれれば鑑賞スタイルが定まるのに、なまじ前半が素晴らしすぎたが為に、『トイ・ストーリー』ばりのハイドラマを期待してしまいました。

僕が気付かない深度で、様々な示唆があったのかもしれません。監督の意図を読み切れなかった自分の力量不足が残念です。ただ、ミニオンズが相変わらず可愛かったのは確かです。彼らのワチャワチャが最高品質のクオリティで観れたのは大満足です。英語とスペイン語が主体のミニオン語は、なんやかんやで大まかに言っている事が理解できるニュアンスも良かったですね。ジェームズがモンスター映画を思いついた瞬間の「ユリイカ!」と叫ぶセンスは笑っちゃいました。

新キャラ達もとても愛らしかったですが、やはり、またケビンやボブ達に会いたいなぁ〜。


イラストのタイムラプスです↓

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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上映後ロビー

  1. 前半最高でしたよね。
    ドート辺りから??蛇足感がありましたが、マックス監督からカメラを贈られる時にミニオンが映画のアイディアを話していて、監督が「そこで恋に落ちるんだね。」と言っており。
    ドートはミニオンが生み出したキャラクターだから、謎設定なのかな?と納得してました笑 最後のオチはミニオン作の映画を見せられていた?!ことに驚きました!解釈違いだったらすみません🙏

    • わー!コメントありがとうございます、すごく嬉しいです!

      解釈違いなんてとんでもありません!100人観たら100通りの解釈があります。それが映画の素晴らしい所だと思ってます。

      なるほど!監督からカメラを渡された辺りからメタフィクションに切り替わり、ジェームズの作品世界に移行して行ったって事ですかね。それ滅茶苦茶深くて夢のある考察ですね!であればドートの奇天烈感もミニオンズが生み出した理想のビッグ・ボスとして納得行きますし、脚本の説得力もバク上がりです。

      新たな側面を教えて頂きありがとうございます、すごく勉強になりました。もう一回鑑賞する時は是非その視点で観てみます!

      よろしければ今後も同じ映画鑑賞されましたら、また考察聞かせて頂けますと感涙です!