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【アニメレビュー】「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉

アニメ

↑僕が観たかったまどマギ(ベルセルクオマージュです)

【求めたのは愛憎劇の最終章、突きつけられたのは辻褄合わせの序章】

  • 鑑賞日 20260828
  • 公開年 2026
  • 監督 新房昭之(総監督)、宮本幸裕(監督)
  • 脚本 虚淵玄
  • キャスト 悠木碧、斎藤千和、水橋かおり、喜多村英梨、野中藍、阿澄佳奈、若山詩音、黒沢ともよ、加藤英美里
  • あらすじ 鹿目まどかへの想いから自ら「悪魔」となり、新たな世界を創り出した暁美ほむら。見滝原市の少女たちの間では、「トカゲさん電話」が願いを叶えてくれるという噂が囁かれ、ソウルジェムを持たない少女が魔獣狩りを行う異常事態が発生していた。悪魔として世界を統べていたほむらだったが、その歪んだ日常を終わらせる存在が突如現れる。魔女の始まりの地「名塚底根」、かつてほむらを苦しめた「ワルプルギスの夜」、そして「円環の理」を求める2人の魔法少女――円環の理を失った世界で、少女たちの運命が再び廻りはじめる。
  • ジャンル 日本アニメ,ファンタジー,SF,ドラマ
  • 鑑賞媒体 映画館
  • お気に入り △(×、△、〇、◎の四段階)

感想

ついに公開!13年ぶりの新作『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』を鑑賞です。


ただ、結論から言うと、お気に入り度としては「△」で、率直に言って肌に合いませんでした。総じて脚本の辻褄合わせにリソースが割かれていて、ドラマのカタルシスや感情移入などが置いてけぼりの印象です。加えて予算が途中で尽きたのか、途中から急に絵面がチープになったのが悲しかったです。

やはりあの完璧なテレビ版のラストから続きを作れというのは酷なのでしょう。脚本家様の心労を考えるとゾッとしますし、この様な無理やりな後付けをするしかないよなぁ、と心底思います。

【ネタバレ注意】 ここから先は映画の結末・重要なシーンに触れています。未鑑賞の方はご注意ください。また、作品に対する率直な批判・否定的な感想が含まれます。苦手な方や作品がお好きな方もご注意ください。

13年かけて作られた2作続けてのブリッジ作品

前作『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』も個人的にはお気に入り度△でしたが、あれは壮大な次回へのブリッジ作として考えたので割り切れました。複雑な設定や世界観の土台を116分かけて丁寧に提示してくれたからこそ、今作では凄まじいカタルシスを味わわせてくれるはずだとワクワクしていたのです。

それがまさかの今作もブリッジ作という…何部作構成なのか、あるいは完結編なのかすら明言されず、興行収入の結果次第で次回作を作るかどうかを決めるかのような曖昧な着地点になっており、ちょっとファンに対して不誠実に感じました。制作期間13年という月日が、いかに制作の混迷を極めたか痛感します。

前作の、「ほむらが悪魔となってまどかを繋ぎ止める」というラストには鳥肌が立ちましたし、なので、今作は『ベルセルク』のガッツとグリフィスばりの、壮大な愛憎劇を見せてくれるのかとワクワクしておりました。しかし蓋を開ければ、その高まりきった熱量に冷水を浴びせる形で新キャラクターたちが登場し、物語がゼロから再構築されていきます。13年もの歳月を費やして、またしても「序章」を鑑賞することになる訳です。もちろん時間軸としては前作からの続きとなっておりますが、前半の主要人物達の記憶がない下りは、叛逆の物語でも同じプロットをたっぷり観たのだが?という既視感で一杯です。

2作続けてブリッジ作を観せられるのは、さすがにお金を払って鑑賞するのは厳しいかな、と思いました。仮にこれを新章として次回があるとして、よほど評判が良くない限りは観に行かないと思います。

とっちらかった構成と分断された2つのプロット

仮に新章を始めるとして、今作を序破急の序として振り切ったならばまだ好感も持てます。しかし新キャラたちは深掘る事無く使い捨て、なのにラストは中途半端に最終章ばりの盛り上がりを作るという、どっちつかずの仕上がりになっています。

これが前述した「完結編ともブリッジ作とも、どちらとも取れる」路線に感じた理由です。序として作るなら新キャラのエピソードをもっと深掘る事に特化するでしょうし、完結編ならば新キャラなど出さずにほむらとまどかの物語に特化するはずです。13年分の制作費を考えると、絶対に失敗出来ないという恐れからあれもこれも詰め込んで、結果としてどこにも着地できなかった印象です。ハリウッド映画でもこの失敗パターンは本当に多いですよね。

何より「ワルプルギスの正体」と「まどかとほのかの邂逅」がひとつの物語として全く別軸として走っているのが、感情移入としてとても難しかったです。2つの縦軸が綺麗に最後で混じり合うなら大オチとして素晴らしいのですが、ワルプルギス編が終わり、はい次、まどかほむら編、と読み切りが2つ続く構成なので感情の高ぶりが途切れます。そのため、公式が「二週間はネタバレ投稿ご遠慮下さい」とアナウンスしていることに対して、「どの部分を言っているのだろう」と本気でわからないくらい要素が散らばっておりました。僕の読解力が低いだけかもしれませんが…

確かに恐らくコアなファン層には沢山の考察が詰まっている映画ではあります。それはそれで大事な要素ではあると思うのですが、僕の評価軸は「知らなくても面白い、知ってたら尚面白い」なので、豆知識や前提条件など知らなくても、一映画としてまず面白い!であって欲しいと思っております。

足りない尺を無理やり広げた感

まどかとほむらの決着だけで物語を作るのは尺が足りなかったのか、とってつけたような新キャラ3人の物語に感情移入が難しかったです。その1番の理由としては、彼女たちのトラウマの深掘りがとても浅かったからではないかと思いました。なぜ3人も出したのか、せめて名無しの女の子だけであれば彼女のパーソナリティに時間を使えたのに、バックボーンの無い新キャラ3人分を作り込むにはどうしても時間が足りません。新しい女の子を出せばグッズ展開などで商機が増えるのでしょうか。

新キャラたちのトラウマには具体的なイベントがなく、すべてダイジェストとして描かれておりました。「父親から愛されなかった」「誰からも可愛がられなかった」「全ての人を助けたかった」のように、それぞれの絶望はフワッと伝わりましたが、骨子自体は描かれず台詞だけで説明されます。最も重要なワルプルギスの核となる名無しの少女の絶望も、沢山の人を助けたくて⇒でも力不足でできなかったという抽象的な表現で終わっております。なぜシスターになったのか、それだけ献身的になるのはどういう背景があったのか、属性も背骨も描かれません。せめてさやかの様に、「片手が動かなくなった好きな男の子の為に魔法少女になる」といった具体例があればまだ良かったのですが…

人物属性の説明を省けるジャンヌ・ダルク等の歴史上の人物なら成立すると思うので、もしかしたら彼女も古典文学などに出てくる人物がモデルで、その教養がある前提で作られたキャラなのかもしれません。その辺りは無教養ですみません。

主要人物の舞台装置化

登場人物が増え、説明要素が爆増したせいで、ほむら以外の主要キャラも舞台装置としてしか配置されておらず、物語の主軸に絡むことが出来ません。ただただ脚本の都合上、役割を果たすだけのキャラクターになってしまっていたのが残念です。台詞だけは大事な事を話している「風」なので、脚本上の重要人物に見えますが、実質は尺稼ぎのための説明要員として終わってしまっている印象です。

ただ、テレビシリーズからこの最新作にいたるまで、タイトル名を冠する「まどか」が、徹底してギミックで終わっているのは新鮮で面白かったです。キャラ人気投票などをしたら彼女は何位になるのでしょうか。これだけパーソナリティを用意されない主役もレアですが、それこそが誰からも忘れられている概念としてのまどかというメタファーなのかもしれません。

抽象表現の好み別れとリソース配分の歪み

この様に、物語に関しては総じて「2時間かけて描く内容じゃないのでは」という感想でした。それでは絵の方はどうだったのか。物語が好みに合わなくても、物凄い絵力があれば話は変わります。「叛逆の物語」では物語こそハマれなかったものの、ハッとなる構図や、動きの工夫されたアクション、クライマックスの大怪獣バトルなど、夢中になれる場面が沢山ありました。

ただ今作においては、とにかくお金が足りてない感が満載でした。前半の作り込みは「叛逆の物語」レベルで相当気合の入っている作画に見えましたが、杏子がバトルする辺りから目に見えて作画が単調になり、動きの枚数が激減。棒立ちで口パクだったり、画角が固定されて背景のCGだけ動いたりと、予算の無いアニメあるあるが散見されたのです。平成の深夜アニメにこういうのが沢山あったなと懐かしくなる程に。マミさんだったかな、背景で小さく写った彼女の首と胴体のデッサンが狂っていたのは本当に悲しかったです。

もちろん予算が潤沢であれば名作が出来上がるという訳ではありません。限られたお金をここぞというリソースで割けば、違和感無く感動できるアニメは沢山あります。ですが今作において、そのリソースが、おそらく「公開前に予告で沢山流れるであろう冒頭」「まどマギ恒例のコラージュの敵キャラ」「抽象世界の背景」に割かれていたように感じました。

特にまどマギの一番の個性といっても良い、切り張りコラージュ表現ですが、正直アート的な映像はもう前作でお腹一杯です。テレビシリーズの時から個人的には、あれらの映像表現が物語と有機的に絡んでいるとはあまり思えませんでした。どうしても通常のアニメ表現と比べたら、動きに制限が出て見劣りするし、コラージュに関してはどちらかと言うと緻密な絵コンテを省略するための省エネ技法に感じます。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のような、虚構が現実を侵食するといったテーマがあるなら実写コラージュを用いる理由もわかりますが、まどかとほむらのドラマを描く上で、あの切り貼りが深みを与えているようには感じませんでした。どちらかと言うと、抽象世界を描くのであればあるほどに、現実世界をリアルにしてくれた方が僕たちの現実と地続きで感情移入できます。やはり今作も前作に続き、綺麗なミュージックビデオ、あるいはアートを終始見せつけられている印象でした。

予算が限られていて、一枚絵の解像度や動きに制限がかかるのであれば、せめて天才的な才能でスタイリッシュな画角やハッとする編集、素晴らしい劇伴に音ハメするなどの爽快感があればよかったです。しかしそれが可能な環境ではなかったのか、とにかく構図が平凡でした。パースの効いた遠近感を感じる構図は少なく、3D素材人形を配置してそれをトレースしたような画一的なアクションが多かった印象です。

映画館で過ごした2時間の総括

物語に感情移入できず、絵力でも爽快感を得られずだったので、2時間の作品ですが4時間位に感じてしまいました。ただ、これはまどマギライト層の感想であって、僕より深くこの作品を愛している方々は、まどかの最後の選択にとんでもない感動を覚えたかもしれません。

これだけの年数真摯に待ち続けたファンの方々には、せめて面白く感じる仕上がりになっていて欲しいと切に願います。そして可能であれば次回作で、シリーズを延命する目的ではなく、少女たちが深く昇華される完結編を作って欲しいです。


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