【キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド】
- 鑑賞日 2025/02/27
- 公開年 2025
- 監督 ジュリアス・オナー
- 脚本 マルコム・スペルマン、ダラン・ムッソン
- キャスト アンソニー・マッキー、ハリソン・フォード、ダニー・ラミレス、ティム・ブレイク・ネルソン
- あらすじ 「アベンジャーズ」シリーズをはじめとしたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)で中心的役割を担ってきたヒーローのキャプテン・アメリカを主役に描く、「キャプテン・アメリカ」のシリーズ第4作。初代キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースから最も信頼され、ヒーロー引退を決めたスティーブから“正義の象徴”でもある盾を託されたファルコンことサム・ウィルソンが、新たなキャプテン・アメリカとなった。そんなある時、アメリカ大統領ロスが開く国際会議の場でテロ事件が発生する。それをきっかけに各国の対立が深刻化し、世界大戦の危機にまで発展してしまう。混乱を収束させようと奮闘するサムだったが、そんな彼の前にレッドハルク(赤いハルク)と化したロスが立ちふさがる。しかし、そのすべてはある人物によって仕組まれていた。
- ジャンル アメリカ映画 アクション SF
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り △(×、△、〇、◎の四段階)
感想
かつて『アベンジャーズ/エンドゲーム』の貯金があった頃は、僕も頑張ってほとんどの枝葉にあたるシリーズまで熱心に追いかけていたものです。しかし、さすがにそれ以降に展開されている配信サービス独自の独占ドラマシリーズまで全て網羅するのは、時間的にも体力的にも厳しいのが本音ですね。
今回の映画は、某有料チャンネルで配信されていたマーベルのドラマシリーズを全く履修していなかった僕の予習不足が原因なのですが、スクリーンを眺めながら終始「誰?」「誰や?」が「何?」「何をしてるにゃ?」という疑問が頭を駆け巡る2時間となりました。物語の前提がサッパリ分からない状態でございました。
配信ドラマ必見という高いハードル
それにしても、現在のMCUは一般の観客にとって、かなり参入ハードルが上がりすぎているように感じられます。せめて他の作品と繋がる要素は劇場公開される2時間の映画内だけにしてくれれば、ギリギリ追いかけられると思うのですが、何時間もある長いドラマシリーズまで観ることが必須条件になってしまうと、さすがにスタンス的にも付いていくのが難しくなってしまいます。
この作品の後には世界観を一度リセットして再スタートするという話もあるようですから、もしその時が来たら、ぜひとも追いかけるのは映画版だけで完結するシステムに戻してほしいなと切に願っています。
物語の繋がりを無視して絵作りを楽しむ
物語の背景を完全に把握するのが難しかったため、今回は視点を変えて、純粋にアクションや映像美などの絵作りを堪能しようと思って劇場に足を運びました。
その甲斐あって、劇中で描かれる日米の緊迫した開戦一歩手前のようなシーンは、演出も含めてすごく熱い展開になっていましたね。ただ、ヒーローたちの特殊な活躍を観るよりも、現実に存在する近代兵器が稼働するシーンに一番心が燃えてしまったというのは、映画の性質を考えると少し複雑で切ない心境でもあります。
もちろん、配信ドラマも含めてすべての作品を完璧に追いかけている熱心なファンにとっては、これ以上ない最高のご褒美映画になっているのだと思いますし、その没入感はとても羨ましくもあります。また、世間的にはあまり評判が芳しくなかった『エターナルズ』ですが、僕は結構好きな作品だったので、今作でその要素がしっかりと繋がってくれたのは個人的にとても嬉しいポイントでした。
今後、彼らメンバーが再び劇場版に出てくれるのかどうかは気になるところですが、現在のパワーインフレがかなり凄まじいことになっているので、世界観のバランス的にも登場は難しいのかもしれないなと想像しています。
『ザ・ボーイズ』が突きつけるリアリティの壁
これは冗談抜きで感じることなのですが、最近のエンタメ界におけるドラマ『ザ・ボーイズ』の影響力は本当に凄まじいものがありますね。MCUが物語をシリアスな方向へ振れば振るほど、皮肉なコメディであるはずの『ザ・ボーイズ』の方が、むしろ現実的なリアリティラインにおいて勝ってしまっているという、奇妙なねじれ現象が起きているように思えます。
あちらの作品の完成度が非常に高いがゆえに、お行儀のよい全年齢用の物語縛りのあるMCUの脚本家たちにとって、かなり頭の痛い問題になっていそうです。それくらい『ザ・ボーイズ』は痛烈で面白い作品ですし、正直なところ、あちらのクオリティをこそ劇場の大きなスクリーンで体験したいとすら考えてしまいました。
スケール感の心地よさとサムの戦闘力
今回のような個人レベルで戦うヒーローの物語は、観ていてちょうど良い楽しさがありますね。パワーバランスが僕たちの認知できる現実的なレベルに収まっているため、世界観に入り込みやすいのです。
これが宇宙の彼方や神々の領域が舞台になってくると、スケールがインフレしすぎてしまい、どうしても遠い世界の出来事を俯瞰で眺めているような、傍観者状態になってしまいます。まるで歴史の伝記を淡々と読んでいるかのような感覚になってしまうのです。
ですから、今後もこれくらいの親しみやすい舞台の広さで物語を進行してくれたら嬉しいですし、いっそのこと「宇宙規模の能力を持つヒーローは全員地球を出禁になりました」というような設定をどこかで加えてもらいたいほどです。
一方で、今作の主人公であるサムの描写については、少し気になる部分もありました。彼は「超人血清を打っていない、あくまで普通の人間である」という事実が作中で終始アピールされるのですが、ウイングを広げて空を飛び、音速で移動し、数々のハイテク武器を満載して戦う姿を見ていると、前任のキャプテンであるスティーブよりもよっぽど戦闘能力が高いのではないかと思ってしまいます。
それなのに、場面によっては急に明確な理由もなく生身の格闘戦を始めて一般の兵士を相手に苦戦したりと、脚本の一貫性に少し欠けるような、ご都合主義的な展開に見えてしまう部分がありました。かつては弓矢だけで戦っていた先輩ヒーローもいましたが、常人としての限界とハイテク装備のバランスは、描写がなかなか難しいところなのかもしれません。
さらに、作品全体がシリアスなテイストで進行していく割には、ポリティカルサスペンスとして描かれる世界のリアリティラインがどこか低いため、設定と描写が噛み合わず、少しちぐはぐな仕上がりになってしまっている印象を受けました。
劇中の奇妙な日本描写と大人の事情
そんな中で、アメリカの大統領がハルクに変身するというアイデアは、コミカルさも含めて純粋にとても面白い要素でした。この映画がいつ頃企画され、制作されたのかは分かりませんが、現実の政界の誰の姿を示唆しているのだろうかと、色々と邪推してしまいますね。
また、劇中で日本がやたらと意志の強い強権的な国家として描かれていたり、クライマックスの最後のバトルシーンがこれでもかと桜が咲き乱れる場所だったりと、今作における日本への配慮にはどのような力が作用しているのか、不思議に思いました。
おそらく、国家間のシビアな緊張状態を描く上で、国際的に一番当たり障りがなくて文句の出にくい国が日本だったのだろうなと推測できます。実在する別の特定の大国をストーリーに絡めてしまうと、世界的な興行収入に多大な影響が出てしまうでしょうから、そこは大人の事情が働いたのかもしれません。
この世界規模での公開の中で、日本人だけがスクリーンを観ながらちょっと奇妙な興奮の仕方をしているのではないかと思うと面白いです。これほどまでに剛健で強い島国として描かれていると、少し照れくさくて気恥ずかしい気持ちにもなりました。
劇中の日本の総理大臣が、あろうことかアメリカの大統領を脅迫するような挙動に出るシーンなどは、ほとんどギャグレベルの展開だと感じつつも、自嘲気味に笑いながら、どこか少し嬉しくもあるという、だけどもそんな事はありえないとわかる悲しさも入り混じり、なんとも奇妙な映像体験を味わうことができました。
新たな熱狂の種を信じて
全体を振り返ってみると、確かに映画として面白い部分は多々あったものの、かつての『アベンジャーズ』シリーズのような、スタジオがガチで総力を結集して力を入れている作品と比べると、相変わらずどこか「及第点の出来栄え」という枠に収まってしまっているような、少し残念な印象が残りました。
しかし、それでも新しい物語の種はしっかりとまかれたと感じています。ここから再び、あの『アベンジャーズ/エンドゲーム』の時に世界中が体験したような、凄まじい熱狂を僕たちにまた見せてほしいなと期待しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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