【映画レビュー】ザ・マミー 棺の中の少女/ガチのエジプトホラーを通して描く、凶悪犯罪の恐怖!

映画

【ザ・マミー 棺の中の少女】

  • 鑑賞日 2026/05/20
  • 公開年 2026
  • 監督 リー・クローニン
  • 脚本 リー・クローニン
  • キャスト ジャック・レイナー、ライア・コスタ、メイ・キャラマウィ、ナタリー・グレイス、ベロニカ・ファルコン
  • あらすじ エジプトの代表的な歴史的都市伝説ともいえるミイラの呪いを題材に描くミステリーホラー。 エジプトに駐在中のジャーナリスト一家の8歳の少女ケイティが、ある日突然姿を消してしまう。家族は懸命に少女の行方を捜すが、非協力的な警察組織や言葉・文化の壁に阻まれ、異国の地での捜索は困難を極める。 失意の中で帰国してから8年の時が過ぎ、少女が発見されたとの知らせが入る。娘との再会を喜ぶはずだった家族が目にしたのは、あまりにも変わり果ててしまったケイティの姿だった。彼女の8年ぶりの帰宅をきっかけに、家族の周辺で不穏な出来事が次々と起こり始める。
  • ジャンル アメリカ・アイルランド合作(R-15) ミステリー ホラー
  • 鑑賞媒体 映画館
  • お気に入り ◎(×、△、〇、◎の四段階)

感想

レイトショー、観客四人、ゆえに音を吸収しない爆音ジャンプスケア、からの閉店したショッピングモールの帰り道。


完璧なるホラー鑑賞用の環境で観れた今作は、しっかり怖い!しっかりグロい!そしてしっかり面白い!でした。

古代エジプトの怨霊がもたらす新鮮な恐怖

思えば、ジャパニーズホラーは言わずもがな、「エクソシスト」や「死霊館シリーズ」などのキリスト教系ホラーは数あれど、ガチンコエジプトホラーは初めて観たかもしれません。

どうしてもエジプトと言えば、ハムナプトラやインディージョーンズ系のアクションファンタジーなどが主流で、これだけ真っ向からあの文化圏を主題としたホラーは珍しい。昔トム・クルーズが出てるミイラものもありましたが、モンスターユニバースものとしてあれ以降みかけてませんね…

日本で言うと陰陽道なにがしの心霊系、西洋で言えばドラキュラなどのモンスター系、それぞれ突きつけめれば相当な恐怖を与えられる題材だけども、考えてみればそれらが生まれるよりはるか太古に基づいた「恐れ」は、そりゃ絶対怖いハズだよな、と思いました。我々の人知が及ばない太古の出来事ではありますが、けれど人間が生きていた地続きの時代。この絶妙なバランスが、得も言われぬ怖さを生み出す事に成功しています。

うまく言語化できないのですが、宇宙人ほど突拍子がない訳でもなく、お化けほど荒唐無稽さもなく、花子さんのような近代が生み出した怪奇でもない。遠い遠い昔のお話なのだけど、実際に存在した時代、そこから「代を生きる僕らにまで影響させる怨霊」という腹の落ち方、といいましょうか。なんか、とても納得の行く怖さだったのです。ここまでガチンコで古代エジプトをホラーにした作品はとても新鮮で、その設定を観れただけでもすごく良かったです。

圧倒的な緊迫感と映画館だからこそ味わえる臨場感

プロットを見るだけでも「行方不明になった娘が古代の棺桶でミイラ化していた」という、滅茶苦茶気になる設定。つかみはバッチシだし、そこに至るまでのテンポも素晴らしく全く飽きません。

特に娘が行方不明になる際のシークエンス!エジプトの町並みを父親が必死に走り回るのだけど、砂嵐が吹き荒れ、その様が父親の焦る内面と見事にマッチしてものすごい緊迫感を与えます。僕が嫌いな「物語が停滞するカーチェイス」ではなく、しっかりドラマと内面描写と迫力が一体化した、素晴らしいシークエンスでした。お金もかなりかけており、冒頭からこれは期待できる映画だ!と思わせてくれました。

極めつけは、鼓膜が破れんばかりの大音量の劇伴と叫び声。映画館のシートが震えるレベルの音量で思わずのけぞってしまいます。耳弱い人はマジで要注意です。ただ、それのおかげで、絶対にお家では味わえない重力を持った音圧での恐怖を体験できました。

長尺で描かれるロジカルな解明と、ハリウッドの不文律の打破

なぜ娘がそうなったのか、「リング」のように、怪奇をロジカルに解明していく流れは大好きです。太古から脈々と息づく怨霊と、それに対峙するにはどうすればよいのか。通常の90分ホラーでは物足りなくなるであろう道筋が、たっぷり135分かけて描かれるので大満足です。

というよりも、ガチホラーをこんな長尺で作ったら駄目ですって(汗)観終わった後、もう性も根も尽き果てました。ほんと、疲れた。怖さもグロさもこれでもか!とサービス満点です。

ホラー映画って、それこそ失神レベルの恐怖を描く事はいくらでもできるのだけど、レーティングや倫理の観点からワザとマイルドにしてる、という話を聞いた事ありますが、今作に関しては「子供はひどい目に合わない」というルールをぶち破ってる点から、大分攻めた作品です。

今作はケイティだけでなく、その兄弟も相当可哀想な目にあいます。ハリウッドでは概ね、子どもと動物は酷い目に合わない、という不文律がありますが、それをぶっ千切っています。なので、見る人によっては相当に要注意です。

子供が酷い目に合うのは本当に辛く、目を背けたくなりますが、翻ってその描写をいれた事によって、今作がただ怖がらせるホラー、から一歩深いレイヤーを描く事に成功しているように思いました。

ホラーの枠を超えた現実の凶悪犯罪というメタファー

つまり、ガワはホラーファンタジーなのだけど、描いている事は「幼児誘拐」であり「拉致監禁」であり、身の回りで実際に起きている、えげつない小児性凶悪犯罪です。

怨霊やミイラ、などのコーティングはしていますが、両親が味わっている絶望や怒りや悲しみは、こちらの現実で実際の人間が行っていることです。ケイティが被害に合う場面をビデオで両親が見るシークエンスなどは、ホラー映画ではなく、ドキュメンタリーに近い残酷さでした。ただのホラーだと思って観に来た人は、大分に注意喚起が必要かもしれません。

それに気づいた時、エジプトの怨霊なんかより、実在の人間の方が何倍も怖い、という、結局普遍的なその答えに至ります。荒唐無稽なファンタジーに見える、娘が突然ミイラにされるという設定も、現実の誘拐事件は被害者にとって、それくらい理不尽で信じられない恐怖なのだと、フィクションとノンフィクション、ダブルの怖さで観てました。スクリーンを超えて、その様なホラー体験が出来るように制作しているスタッフ陣に脱帽です。

物理が通じるボス敵感と独自のシステム構築

そういった、凶悪事件をメタファーとしての精神的な怖さや嫌悪感を除けば、本編は至極まっとうなホラーレベルです。心霊系の様なジワジワした恐怖ではなく、完全フィジカルに特化したスカッとした怖さ。「来る」のような、物理が効かない絶望的な怪奇ではなく、西洋の憑依系なので、動きを物理的に封じれるし、こちらの拳も通じます。「なんか燃やしたりしたら勝てそう」な、ほどよいボス敵感です。

僕はもうね、前途した「来る」の他にも「パラノーマルアクティビティ」や「プレアウィッチプロジェクト」の様な、触れない系の敵が1番怖いのです。壁すり抜けてくるし、お経とかも効かないし、どうやっても勝てそうにない。でも、憑依系は、椅子に縛ったりできるし、壁もすり抜けれないので、工夫次第では勝てそう。怨霊を次の生贄に引き継がないといけない制度も、さっさと国に協力要請して、懸賞金付きの志願制や、犯罪者の減刑目的などで、数年ごとにコロコロ入れ替えるのどうかな、とか解決する為のシステム面を考えておりました。

構図においては、ケイティのドアップを見下ろし型で写したり、音ハメで細かくカット割りしたりと、スタイリッシュで全編見飽きません。いよいよ全ての封印を解いて、100%怨霊が顕現した絵面なんて、フリーザ様よろしく、怖さよりも格好良さに痺れました。両手を広げて浮遊している真正面からの見栄は、滅茶苦茶格好良かったなぁー!

冒頭はエジプトでの大掛かりなシークエンスから、後半は家の中の箱庭舞台にスケール制限したのも素晴らしかったですね。こういったホラー映画で、世界の危機とか、風呂敷を広げすぎると、えてして冷めがちなので、良き舞台設定でした。

本物の恐怖を駆け抜けた先にある願い

おばあちゃんにはずっと死んでほしくないと応援してたけど、キリスト教が全く歯が立たないのも面白かったです。彼の宗教が出来る何千年も前から存在する怪異なので、そりゃ格が違いますよね。ただ、こういう憑依系は毎度「エクソシスト」のような、ボワーっとした低音二重音声で話すの、ちょっと既視感で一杯ですねぇ。せっかくエジプト怨霊として、他と差別化できてるなら、話し方も独自の発明を観たかったです。

子供が被害者なのは、観ていて目を逸らしたくなるけど、それ以外の部分は真っ当な正統派ホラー映画でした。もっともっとエジプトの文化や歴史をしっかり根付かせた、新鮮な「ナイル川ほとり系ガチホラー」を作って欲しいです。いやー、マジで怖かった!!


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