【アニメレビュー】「デッドデッドデーモンズデデデデストラクション」

アニメ

【デッドデッドデーモンズデデデデストラクション】

  • 鑑賞日 2025/01/07
  • 公開年 2024
  • 監督 吉成曜
  • 脚本 吉田玲子
  • キャスト 幾田りら、あの、入野自由、内山昂輝、坂本真綾、諏訪部順一
  • あらすじ 3年前の8月31日、突如東京都に巨大な空飛ぶ円盤、通称「母艦」が襲来。そこから出撃した「侵略者」の攻撃によって多くの死者が出るが、アメリカ軍の攻撃によって母艦は渋谷区の上空で停止。母艦から出撃する侵略者の宇宙船も逐次迎撃された。上空には母艦が浮き、時折自衛隊と侵略者との戦闘が行われることが日常となった東京で、小山門出は中川凰蘭ら親友たちと共に青春を謳歌していた。人類が終了する日が間近に迫っているとは夢にも思わずに―
  • ジャンル 日本アニメ,SF,ファンタジー,考えさせられる
  • 鑑賞媒体 Amazonプライムビデオ
  • お気に入り 〇(×、△、〇、◎の四段階)

感想

「デデデデッドラークショォォン」という主題歌が格好良くて、一日中頭から離れません。実に複雑な要素を抱えながらも、よくゴチャつかずに整理してラストまで綺麗に走り切ったと感じます。

地続きの恐怖と麻痺していく日常

巨大宇宙船が現れた瞬間はてんやわんやするのですが、三年も経つと人々は慣れて日常生活を送っています。今の僕たちも世界で戦争が起きていても見て見ぬふりをして日常を暮らしてますので、この平和ボケした麻痺感がとてもリアルでした。気付かない間に異常は侵食し、日常生活が崩れる時は一瞬。良くも悪くも人類は恐怖に対して耐性がつくという事実が非常に興味深かったです。

これがもう少し前の時期に公開されていたらSFエンタメものとして楽しめましたが、今や世界情勢やコロナ禍を経て、これが地続きの恐怖だと肌感覚で分かっています。東日本大震災やコロナ禍、現代の国際情勢を経験した今、異常が日常に溶け込み感覚が麻痺していく不気味さは単なるSFの出来事ではありません。自分たちが生きる現実そのものとしてリアルに刺さりました。

再現された映像美と完成度の高い脚本

浅野いにお先生の異常な書き込み背景をどのように表現するのかと思っていましたが、キャラクターの若干浮いた感じまでしっかりと再現されていて、ちょうどよいバランスに仕上がっていました。

また、脚本に関しても、原作の膨大なサブエピソードや多次元平行世界という複雑なSF要素を上手く削ぎ落としてます。2時間の映画として門出とおんたんの選択と愛に焦点を絞って綺麗に着地させており、後味がよくて1本のエンタメ映画としてのまとまりが見事でした。

日常を守る友情と風刺が生む誠実さ

空に巨大な宇宙船が浮いている異常事態の中でも、受験や恋に悩む少女たちの普通の暮らしを描いていることで、現代の日本社会における無関心さや適応能力の不気味さを鋭く突いています。ですが一方で、世界が滅びかけていても受験や恋に執着する姿は一見滑稽ですが、その異常なまでの日常への執着が門出とおんたんの絆をより純粋で、かつ破壊的に美しく見せているのがすごいです。二人の「クソ日常を維持でも守り抜く」という狂気的な友情が対比として見事でした。

また劇中漫画『イソベやん』を通じたメタフィクションの深みも面白くて、単なるパロディを超えて物語の根幹に深く関わってくる構成になっており、虚構が現実を侵食していく感覚を覚えました。浅野作品の真骨頂である冷笑を突き抜けた先の誠実さ、SNSの喧騒や政治の欺瞞を痛烈に皮肉りながらも、最終的にはそれでも誰かを想うことの尊さをしっかりと描いております。

冷徹な視線と溢れ出す人間愛が共存している点が非常にエモーショナルでしたし、同時に劇中で人間の身勝手さやグロテスクさが描写されていて非常に辛かったり、だからこそ、震災後の空気感や他者への不寛容や排外主義が生々しく反映されていて、風刺として極めて秀逸でした。

大場君の存在を巡る評価とドラマの深まり

おんたんと門出の話から大場君が絡んでくる展開は、結構賛否が分かれそうです。肯定的な視点としてはドラマが深まったという見方があります。門出とおんたんという二人だけの閉じた世界や絶対的なルールの中に、大場君という異物や外部が入り込むことで物語に立体的な葛藤が生まれました。その結果、単なるノスタルジーではない選択の物語に昇華されたと思いました。

タイムパラドックスや世界の崩壊という大きなスケールの中で、最終的に地に足のついた個人と個人の愛に着地させるための重要なキーパーソンでしたね。

否定的な視点としては、おんたんと門出だけの密室性が希薄化したという面もあります。門出とおんたんのどこか歪で絶対的な関係性や狂気的な絆に強く惹かれていたのに、大場君が中心に絡んでくることで二人だけの純粋な閉塞感が薄れてしまったと感じられたり、一般的な恋愛やラブコメ要素に寄ってしまったように見えたりする、という物足りなさを感じてしまうかもしれませんね。

自分たちだけの絶対的な肯定

「私たちは、絶対だ」という言葉は究極の肯定です。どんなに世界が壊れても、倫理から外れても、二人だけのルールで生きていく。

そのわがままな愛を肯定し切る物語の強度が見ていてとても心地よく、秀逸なアニメでした。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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上映後ロビー