劇場という最高の環境で作品の最後を見届けられた安堵
- 鑑賞日 2024/11/12
- 公開年 2024
- 監督 林祐一郎
- 脚本 瀬古浩司
- キャスト 梶裕貴、石川由依、井上麻里奈、下野紘、三上枝織、谷山紀章、嶋村侑、細谷佳正、朴璐美、神谷浩史
- あらすじ 始祖の巨人の力を掌握し、「地鳴らし」を発動したエレン・イェーガー。無数の超大型巨人を率いて進撃を続けるエレンを止めるため、かつての仲間たちであるミカサやアルミン、そしてリヴァイたちが最後の戦いに挑む。人類と巨人の長きにわたる戦いが、ついに終結を迎える。
- ジャンル 日本アニメ,アクション,ドラマ,ファンタジー,泣ける,ゾクゾク
- 鑑賞媒体 映画館
- お気に入り ◎(×、△、〇、◎の四段階)
感想
※ブログを始めた2025年より前の鑑賞体験である為に、リアルタイムで観た映画に比べて感想が短めになっております。二回目を鑑賞する事があれば、詳細を追記できればと思います。
あれほど世界中を席巻した一大コンテンツが、テレビ放送という形でひっそりと幕を閉じてしまったことが、滅茶苦茶悔しいです。本来であれば、もっと膨大な予算を投入して大規模なプロモーションを展開し、それこそ「鬼滅の刃」クラスで、世界中を大きく巻き込むビッグイベントにできたはずなのに…
製作上の都合や放送枠という事情によって少しずつ削り出すように完結へ向かった展開は、これだけの深い作品性に対して、圧倒的に公開するステージが小さすぎでしょ!と感じます。二週間限定公開の「総集編」という扱いは、あまりにも悲しすぎました。
それでも今回、最後に映画館の大スクリーンで作品を観賞できたことは、ほんの少し心が救われましたし、追加エピローグも最高の仕上がりでした。アニメシリーズの感想はまた別の機会で語るとして、今回は映画館で鑑賞した事に特化した文章を書ければと思います。
劇場だからこそ味わえる圧倒的な身体的体験
まずは何より、テレビのスピーカーやヘッドホンで絶対に表現できないのが、ドルビーシネマ版として生まれ変わった重低音がもたらす、強烈な振動です。映画館のサブウーファーから響き渡る巨人達の「地鳴らし」は、音の枠組みを超えて物理的な圧力となって押し寄せてきました。
足音が響くたびに座席が揺れ、自分自身の内臓まで振動させられます。これはエレンが世界を力ずくで踏み潰しているという絶望を、観客が身体全体で共有するための映画館ならではの体験です。逃げ回る民衆の阿鼻叫喚が、五臓六腑まで染みわたる恐怖でした。
また、テレビ画面では一つのキャラクターとして捉えていた「終尾の巨人」ですが、劇場の大スクリーンで見上げるその巨大さは滅茶苦茶怖かったです。「こんな存在に勝てるわけがない」という、調査兵団が直面した絶望的なサイズ差を視覚的に叩きつけられます。
MAPPAの職人芸と145分ノンストップの没入感
テレビ版から精密にブラッシュアップされた、終尾の巨人の造形や飛び交う立体機動装置の疾走感は、現代アニメーションの到達点とも呼べる美しさです。巨人の骨が持つリアルな質感や舞い上がる土煙といったディテールが名工MAPPAの手によって描き直されており、大画面だからこそ修正点を発見できる楽しさがあって、圧巻の職人芸を存分に堪能できました。
テレビ放送ではCMが挟まれたり前後編の間で休憩できたりしますが、劇場版は145分間ノンストップで進行します。逃げ場のない暗闇の中で人類が淘汰され、キャラクターたちが追い詰められていく展開をぶっ続けで観せられることで、没入感が尋常ではありません。
前後編が一本の映画として繋がったことで物語のテンションが途切れず、怒涛の勢いでクライマックスの「天と地の戦い」まで一気に駆け抜ける疾走感は、劇場版ならではの至高の贅沢でした。だからこそ詮無いことですが、総集編ではなく映画用に作られていたらどんな素晴らしい感動が待っていたのだろうかと、悲しくて仕方ありません。
映画館という空間が生み出す連帯感と歴史の終わり
今回の劇場版では、テレビ版とは異なり一本の映画として再構成された特別なエンドロールが流れます。Linked Horizonの音楽を全身で浴びながら10年間の歴史をじっくりと噛み締める時間は、まさに作品の葬儀であり祝祭でもありました。
上映後に劇場が明るくなった瞬間の独特な静寂や、周囲の観客が涙を拭う音、エンドロールが終わるまで誰一人として席を立たない空気感は映画館でしか味わえません。見知らぬ他人同士でありながら「地獄の終わりを見届けた」という連帯感が生まれ、重苦しい余韻を分かち合う濃密なオフライン体験となりました。
そしてエンドロール中のポストクレジットシーンは、争いが決して終わらないという冷徹な現実を示しています。この果てしない循環の描写は大画面だからこそ冷酷に突き刺さり、虚無感を残しつつも作品が伝えようとした真理を象徴する完璧な幕引きとなっていました。
永遠に刻まれる物語への敬意
『進撃の巨人』はアニメを観ない層や海外のファンまで巻き込んでカルチャーの壁を打ち破った怪物的な作品であり、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』以上の規模で世界同時公開されるようなイベントになるポテンシャルを秘めていました。
それだけに、今回の劇場公開が2週間限定というファン向けのクローズドな儀式に留まったことには悔しさも残ります。新規ファンを獲得する攻めの展開というよりは、長年作品を追い続けたファンへの供養に近い側面がありました。
それでも、最高峰のコンテンツに対して最高の鑑賞環境で鑑賞するという、最低限の敬意を払うことができたことには、小さな安堵感を覚えています。長年夢中にさせてくれるコンテンツを制作頂いたことに、心から感謝いたします。ありがとうございます、本当にお疲れ様でした。
イラストのタイムラプスです↓
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上映後ロビー