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【映画レビュー】「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」

映画

設定の「整合性」追求が物語の熱量を奪う

  • 鑑賞日 2024/11/19
  • 公開年 2024
  • 監督 リドリー・スコット
  • 脚本 デヴィッド・スカルパ
  • キャスト ポール・メスカル、デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカル、ジョセフ・クイン、コニー・ニールセン
  • あらすじ 前作から数十年後、成長したルキウス・ウェルスを主人公とする物語。彼は、かつてマキシマスが奴隷の身分から剣闘士となり、英雄として名を馳せたように、新たな闘いの舞台に身を投じることになる。前作のテーマを受け継ぎつつ、新たな時代と登場人物たちの運命が描かれる。
  • ジャンル イギリス映画,アメリカ映画,アクション,ドラマ,歴史
  • 鑑賞媒体 映画館
  • お気に入り △(×、△、〇、◎の四段階)

感想

※ブログを始めた2025年より前の鑑賞体験である為に、リアルタイムで観た映画に比べて感想が短めになっております。二回目を鑑賞する事があれば、詳細を追記できればと思います。

大スケールで描かれる合戦シーンの迫力は圧巻で、多種多様な甲冑を視覚的に堪能できる映像には大満足でした。前作で善王と描かれていた人物が、実のところ植民地化を強力に推し進めていたという事実に、冷静な批判を入れる視点が組み込まれていた点も非常に良かったです。

しかし全体としては、作品の整合性を取るためのピースを当てはめる作業が最優先されており、前作のマキシマスにあった物語の芯となる熱量や動機が見えにくく、物足りなさを感じる仕上がりでした。

圧倒的な存在感を放つ悪役たちの輝き

本作で主役以上に際立っていたのは、間違いなく悪役たちの存在感です。奴隷商人から権力の座を狙うマクリヌスを演じたデンゼル・ワシントンさんの怪演は圧巻で、本作の真の主役は彼だと言っても過言ではありません。彼の知略と邪悪さ、そしてチャーミングな立ち振る舞いは、画面に登場するだけで場の空気を完全に支配していました。

さらに、ゲタとカラカラの双子皇帝が放つ退廃的で残酷な空気感も最高でした。彼らの幼稚さと絶対的な権力が生み出す狂気や恐怖は、まさに滅びゆくローマを象徴する素晴らしい悪役像として機能しており、ビジュアル面でも大きなインパクトを残していました。

主人公の動機と前作との比較で見えた物足りなさ

一方で、主役のルシアスを演じたポール・メスカルさんは実力派俳優であることは間違いありませんが、ラッセル・クロウが持っていた「画面を圧倒する重厚感」と比較すると、まだ若く少し物足りなさを覚えてしまいました。前作の『グラディエーター』でマキシマスが抱いていた動機は、シンプルで強烈です。「妻子を殺された復讐」と「愛する家族が待つ家への帰還」という明確な目標があり、そのわかりやすさ故に、彼が剣を振るうたびに土の匂いや麦の穂を撫でる手の感触がストレートに伝わってきたものです。

それに比べてルシアスの動機は、かつて捨てられた母への複雑な感情や、なんとなく嫌いなローマという意識の間で揺れ動いています。マキシマスにあった「これを果たさなければ死んでも死にきれない」という血の通った渇望が、物語を整えるための義務感に上書きされていたように感じられました。前作が持っていた死にゆく者の悲哀や家族への強い想いに比べると、今作のルシアスの感情の揺れはやや希薄で、涙するほどではなかったのです。

また、主人公の血統設定は続編としてこうせざるを得なかったのだとは思いますが、結果として前作のマキシマスの不義につながってしまう点も残念です。

そして、歴史もので毎回思うことですが、マイクがない時代に戦場で生声演説をして果たして周囲に聞こえるのかな、と甚だ疑問です。長演説によって物事が解決していく展開も大雑把に感じられますし、後半の政治的クーデターや軍の動きも非常に駆け足で、ルシアスが権力を掌握するプロセスなども少々ご都合展開に見えてしまいました。

整合性の追求が引き起こした熱量の低下

僕が『グラディエーター』という作品に求めているものは、歴史のパズルを解く楽しさではなく、理屈を焼き尽くすほどの男の情念でした。しかし今作は「マキシマスの息子だった」「実は正当な後継者だった」という設定の整合性を繋ぎ合わせる作業に時間を割きすぎていた印象です。

「ここでマキシマスの鎧を出せばファンは喜ぶだろう」「ここで母との葛藤を入れれば物語が繋がるだろう」という、制作者側の計算が透けて見える演出が、キャラクター自らが発するはずの熱量を奪ってしまったと感じます。ルシアスという人間を描くことよりも、正統な続編という形を整えることが優先された結果、作品の熱が逃げてしまいました。

皮肉なことに、悪役のマクリヌスには権力を掴みたいという剥き出しの熱量と動機がみなぎっていました。彼のキャラクターが強烈すぎたため、整合性を守るために優等生的に振る舞わなければならなかった主役のルシアスが、より一層芯の細い存在に見えてしまいました。悪役の熱量が主人公の動機を食ってしまったと言えます。まさに「帰る場所」がある男と、ない男の差が色濃く出た結果でした。

男たちの執念と映画の魅力を振り返って

大金をかけた合戦シーンの迫力や洗練された甲冑の数々、そして狂気を孕んだ双子皇帝や力強いマクリヌスなど、視覚的・キャラクター的な見どころは実に盛りだくさんでした。前作の善王に対する客観的な批判視点を組み込んでいた点も含めて、完成度の高い要素は数多く存在しますので、間違いなく映画館で観て良かった作品です。

それでも、物語全体の整合性を保つ作業が先行したことによって、主人公の芯となる熱量がかすんでしまった点は本当に残念。「グラディエーター」という名を冠する作品である以上、圧巻の映像美を存分に堪能しつつも、前作が放っていた圧倒的な情念の深さを改めて評価する鑑賞体験となりました。


イラストのタイムラプスです↓

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