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【映画レビュー】「シビル・ウォー アメリカ最後の日」

映画

国家の崩壊と内戦の狂気を容赦のないリアリズムで描き切った衝撃作

  • 鑑賞日 2024/10/9
  • 公開年 2024
  • 監督 アレックス・ガーランド
  • 脚本 アレックス・ガーランド
  • キャスト キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ソノヤ・ミズノ、ジェシー・プレモンス、ニック・オファーマン
  • あらすじ 連邦政府から19の州が離脱し、国内で大規模な内戦が勃発した近未来のアメリカ。大統領が独裁政治を行い、カリフォルニア州とテキサス州が同盟を結んだ「西部勢力」と政府軍による武力衝突が激化していました。報道写真家のリーをはじめとする4人のジャーナリストは、陥落寸前の首都ワシントンD.C.へ向かい、大統領への単独インタビューを行うために危険な旅へと出発します。内戦の最前線で命がけの取材を続ける中で、彼らは狂気と暴力に満ちた現実を目の当たりにしていきます。
  • ジャンル アメリカ映画,イギリス映画,ドラマ,サスペンス,戦争,考えさせられる
  • 鑑賞媒体 映画館
  • お気に入り ◎(×、△、〇、◎の四段階)

感想

※ブログを始めた2025年より前の鑑賞体験である為に、リアルタイムで観た映画に比べて感想が短めになっております。二回目を鑑賞する事があれば、詳細を追記できればと思います。

映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を鑑賞。ジャーナリズムを主題に据えて描きながら、堂々と大統領選の年に公開された点に底知れない恐ろしさを覚えます。さらに内戦の原因や勢力図を詳しく説明しない潔さがあるため、逆に今まさに目の前で起きている地獄へ集中できる。

理屈ではなく、感覚で戦争の不条理を叩きつけられる純度の高い映画体験でした。

徐々に崩壊していく風景と本物の凶器として響く銃声

本作は主人公が最初から戦地に身を置くのではなく、遠く離れた場所から徐々に戦地へと近づいていく構成を取っているので、それにより、僕らの没入感とリアリティが爆増していきます。目的地であるワシントンD.C.へ近づくにつれて、風景が少しずつ崩壊していく過程が見事でした。

最初は穏やかな田舎道が広がっていましたが、次第に死体や残骸が増えていき、ゆっくりと悪夢の深淵へ降りていく感覚。この変化を丁寧に積み重ねていくことで、映画であることを忘れてドキュメンタリーを見ている臨場感を生み出しています。「地獄の黙示録」さながらの旅路でしたね。

また、劇中で鳴り響く銃声が単なる効果音ではなく、内臓に響く本物の凶器の音として演出されている点も凄まじいです。耳に届く音だけで「これに当たったら命を落とす」と本能で理解させる説得力があり、劇場全体が戦場に取り残された異様な没入感に包まれていました。

日常と地獄の混濁と目に見えない分断の恐怖

道中で描かれる日常と地獄の混濁は、空想ではなく現代社会の延長線上にある恐怖としてリアルに突き刺さります。すぐ隣の街で処刑が行われているにもかかわらず、自分の店だけを守ろうと無関心を装う人々が登場するのですが、その中で劇中人物が口にした「知っているけれど、関わらないようにしている」という言葉は、深く胸に刺さりました。世界中で流れるニュースを知りながら、感覚を麻痺させ自分の生活だけフォーカスさせる自分の日常にキツく突き刺さります。

さらに本作で描かれる分断は、地政や人種という外見でわかりやすく判断できるものではなく、内面にあるイデオロギーによる分断です。だからこそ、隣にいる人が敵なのか味方なのか判断できない緊張感と恐怖が終始漂っています。自分の身に置き換えて考えてみても、夫婦や親子であっても考え方の違いで対立することは珍しくありません。彼らと殺し合う事態になる可能性を想像すると、本当にぞっとします。

その恐ろしさは、途中で出会う私刑を行っている兵士に色濃く表れていました。「お前らは何のアメリカ人だ?」と問いかけながら虐殺を重ねる彼らの差別基準は極めて曖昧であり、自分の中にあるあやふやな感情でしかありません。何の理由で命を奪われるのかわからない恐怖と、自分自身のアイデンティティが生殺与奪に影響してしまうとてつもない悔しさを痛感しました。あの話し合いが一切通じない圧倒的な分断を描き切ったシーンは圧巻であり、心底恐ろしく、現代を風刺するとんでもない描写でしたね。

記録者としての執着とジャーナリズムの境界線

主人公たちが兵士ではなく、あくまで記録者であるカメラマンとして描かれている点も秀逸です。政治的な正義を追求するのではなく、目の前にある凄惨な光景をいかにフレームへ収めるかという一点に執着しています。その姿が、戦争の空虚さを一層際立たせていました。

戦場カメラマンは、目の前の人間を救うことよりも記録を残す行為を優先しなければならない職業です。それは人間性を捨てて初めて行使できる行為でもあります。ジャーナリズムとは一体どういうものなのかを、ジェシーの歩みとともに僕らも学べる作りになっていました。そして、カメラレンズの中に広がる凄惨な光景に対して、実際の自然の景色は異常なほど美しく描かれている皮肉な対比にも圧倒されました。

現代のすぐ隣にある狂気を見つめて

遠い世界の出来事ではなく、自分たちの足元から地続きにある現実の危機を生々しく突きつけられました。カメラマンたちの冷徹な視線を通して切り取られる凄惨な現実と狂気は、観客の心へ強烈な衝撃を残します。

感覚を揺さぶる音響と圧倒的な映像演出によって、戦争がもたらす不条理の深さを真正面から体感させられる作品でした。


イラストのタイムラプス動画です↓

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